ジョギング、サイクリング、ウォーキングなど屋外の長距離移動を伴うエクササイズに何とも言えない味わいが含まれています。これは、誰しも感じているところではないかと思います。風を切る顔面や首筋の感覚と、後方へ流れ過ぎる視野が、独特に含まれている中身です。通り過ぎる街並みと庭先、目の前に開けた瞬間にその真只中にいる感じの田園風景、低いけれども勾配のある山々と両脇に大きな土手をもつ河川等々、私が現在住んでいる町(京都府亀岡市)はこれらとすぐに出会える地区です。住めば都と言いますが、私は幼少の頃に育ち、また子育ても行った現住の地をいい所だと再認識しています。かつての先輩・同僚(既に退職された)のK先生からは、「君は郷土愛に満ち溢れている」とよく冷やかされたものでした。当時も今も、そう言われてむしろ「すがすがしい気分」になったのをなぜか覚えています。
後期セメスター開始後初めての週末、4つばかりあるウォーキング・コースの内90分コースを選択しました。田園と河川、それに織りなす山々と急流が創り出す保津峡渓谷が望めるコースです。山手の方に進んでいくと、畑や田んぼの畦道に赤い花々が目につきました。写真の中程から右下にみられる「火事花」です。正式には彼岸花(学名:Lycoris radiata)で、曼珠沙華(マンジュシャゲ)とも呼ばれます。広くはユリ科の多年草ですが、3番目の名前が仏教の経典に由来したり、余りに怪しいほど赤いのでよく不吉なことと結び付けられたりしたために、「カジバナ」と呼ばれたのかもしれません。子ども時代、大抵の親は「こんなもの、摘んできてはいけません」と言ったものでした。
さて4つのコースはそれぞれ、四季の移ろいによって様々な「色」を強調してくれます。3月中下旬位からは田園の一面、「蓮華草」の白とピンクが緑の上に散らばっています。少し経てば黄色の「菜の花」が加わってきます。同じ頃、河原の土手や周囲の山に点在する「桜」の白と薄ピンクが目立ちます。4月から5月上旬には、街並みの庭先、ビルの前庭それに山々にみられる「ツツジ」の白、薄ピンク、薄紫、黄色など、花の大きさもちょっと豪華です。
田植え後の幾筋もの「稲苗」の緑色ラインと水田表面の反射光が創り出す画面も見事です。「紫陽花」の白・薄青・薄紫、「向日葵」の黄色はそれぞれ、雨と強い日差しとのセットです。9月になると田んぼの稲穂は緑々と成長し、農家や旧市街の所々には鉢植えや地下植えの「菊」が白や黄色に大輪を咲かせています。
稲刈りが終わると田園の色は一変します。また、晩秋11月には周囲山々の紅葉で、赤・黄・橙色と地の緑が見事に調和しています。積雪で純白の田園や氷でシルバーに輝く溜め池や河川の表面もまた、四季の移ろいで自然が創り出す色彩風景です。
「ウォーキングやサイクリングなんて、なぜ楽しいのだろうか」と、20歳代や30歳代にはとても不思議な気がしていました。気がつくのが遅かったのかもしれません。四季の移ろいの中での色の変化は、昔からそこに存在したものです。こちらが感じ取り、自分の振るまいとの関わりを深める能力の磨きに私がだいぶ劣っていた結果だ、と今ではおおいに感じています。こうなると、これからまた「歩き、乗り、走る」のが、より一層好きで楽しみになりそうです。
【善】