本日、スポーツ健康科学部及び大学院同研究科開設記念の国際シンポジウムが開催されました。
"身体活動が未来を拓く"というテーマで開催された今回のシンポジウムは、立命館創始140年、さらには立命館学園創立110周年も記念して開催されたものです。
シンポジウムには、国内外から200名を超える大学関係者、研究者、民間事業者、そして将来のスポーツ健康科学を担おうとする志ある大学院生や学部生が集いました。
まず、ワシントン大学のジョン・ホロッツィ教授が「身体活動と高齢者の健康」というテーマで、基調講演をなされました。
中心的なトピックは、"肥満"...。
特に腹部肥満症候群に焦点が置かれ、肥満や糖尿病における運動の必要性について、長年の研究によって積み重ねられた様々なデータやエビデンスを提示されながら、お話が進みました。
ジョン・ホロッツィ教授は、一般的に腹部肥満は、過食によってもたらされると考えられがちですが、重度肥満者以外の腹部肥満に陥る中高年層の大半は、過食よりもむしろ、運動不足が肥満をもたらし、約25年という年月を重ねて、おおよそ14~28kgもの脂肪を身体に蓄積していくということが述べられました。
その証拠に、原始的狩猟採集社会や自給自足農業社会のもので、腹部肥満者は発見されていないし、デスクワークに従事する座業労働者が腹部肥満症候群に陥るのは、エネルギー摂取以上にエネルギー消費に問題があるためだという説明がされました。
我が国で急激に増加する糖尿病に関して、いまや"定説"となっている「運動することによって、インスリン抵抗性を高めることが糖尿病の予防や改善に役立つ」ということを先駆的に証明し、多大な功績を挙げられたのが、このジョン・ホロッツィ教授です!
次いで、「スポーツ健康科学から社会への貢献」というテーマで、宇宙飛行士で、ペンシルベニア州立大学のジム・パウェルツィク准教授、テキサス女子大学運動学部のヤン・フー・クワン教授、(WHO)世界保健機関技官で、エディ・L・エンゲルスマン氏、立命館大学スポーツ健康科学部長の田畑泉教授という錚々たる顔ぶれによって、シンポジウムが行われました。また本学部副学部長の浜岡隆文教授がコーディネーターを務められました。
ジム・パウェルツィク氏は、人類が火星などへの惑星探査をするためには、克服しなければならない技術的、科学的、さらには環境的な障害があることを示されました。そして、そのような障害を克服するためには、宇宙飛行のような重力低下時におけ人間の生理的変化を理解するとともに、改善する必要があり、 長期間の宇宙飛行によってもたらされる心臓血管系疾患や癌といった慢性疾患に対する有害を軽減するために、運動の果たす役割が重要であるということを説明されました。
ヤン・フー・クワン氏は、ゴルフスイングのバイオメカニクスの視点から分析し、「機能的スイング平面」という新3次元3重振り子アプローチという新しい概念を提示されました。
エディ・L・エンゲルスマン氏は、健康づくりのための身体活動に関する国家的なガイドラインがない中で、WHOは、疾病予防のために必要な身体活動の頻度、期間、高度、タイプ、総量に関するガイドラインを示し、世界的な健康づくり戦略としてWHOが果たす役割がより一層大きくなってきたことを述べられました。
そして我がスポーツ健康科学部長の田畑先生は、健康増進や生活習慣病の予防と改善に関する実践的かつ理論的研究の成果と、スポーツにおける競技力向上のために積み重ねられてきたトレーニングに関する研究成果の両者がうまく融合し、総合的かつ統合的でより高いレベルでの科学的根拠が提示されるべきだと主張され、それをこの立命館大学スポーツ健康科学部で実現したいと述べられました。
"身体活動が未来を拓く..."
立命館大学スポーツ健康科学部は、近い将来、我が国のみならず、世界レベルでこの役割を大きく担うことでしょう。