2015.08.31
[ 2015年08月 ] の記事一覧
2015.08.30
アメリカ便り (45): Ineligibility
皆様いかがお過ごしですか。
メリーランド州立大学カレッジパーク校では、
明日8/31から新学期が始まります。
新学期と言うことは、新入生が入学してくるので、
新入生に関するニュースを紹介したいと思います。
(http://www.diamondbackonline.com/news/article_ba6be7a4-bc50-11e4-b4ec-277ed207db3b.html)
アメリカでは、カレッジスポーツが非常に盛んで、莫大な金額が動いていることを
この項でも紹介しましたが、盛んすぎるが故の、弊害も生まれています。
その一つが、カレッジスポーツの学生が、活躍してプロになるために、
学業をおろそかにしてしまう場合があるという事です。
日本の大学でも、「文武両道」が謳われていますが、
なかなか実践するのは大変な事も多いと思います。
立命館大学は、取得単位の基準を下回ると、
試合に出られないというシステムを取っていますが、
このようなシステムが無く、学生がクラブ活動ばかりしている
大学もあるのではないでしょうか?
アメリカでも、この問題は非常に深刻になっており、
色々な対策が取られてきました。
メリーランド州立大学でも様々な対策が取られ、
Academic Support が一つのキーワードとなっています。
http://www.umterps.com/SportSelect.dbml?DB_OEM_ID=29700&SPID=120731&SPSID=716403&KEY=
アメリカの大学で、どのようなアカデミックサポートが
実践されているかを知るためには、以下の本がとても参考になります。
岩波ジュニア新書ですので、お近くの図書館に所蔵されていると思います。
「ライフスキル・フィットネス――自立のためのスポーツ教育」
吉田 良治 (著) 2013年 (岩波ジュニア新書) で書かれています。
ぜひスポーツ健康科学部で学びたいという学生やその保護者に読んでもらいたい一冊です。
(画像は、amazon.co.jp より引用)
今回提案された対策は、一番人気の高いアメフトとバスケットで、
新入生に学業を優先 (education first) させて、
一年生の間、試合の出場資格を停止 (ineligibility) 出来ないかという
アイデアが、Big Ten リーグで出ているというものです。
もしもこれが実現すると、新入生にとっては、学業優先にはなって
よりスムーズに学業に向かえると思いますが、
試合には出られませんので、モチベーションの低下が起こるかもしれません。
試合に出られないなら、Big Ten の大学には進学しないという学生も出てくるでしょうから、
その場合、他のリーグよりも、レベルが低くなるという可能性もあります。
それでもなおこのような対策が話し合われるという所に、アメリカの
カレッジスポーツの現状が垣間見える気がします。
現在、まだこの件は検討段階ですが、もしも実現した場合には、
当然上位団体の NCAA でも、実施されると思います。
この話がどうなるか注目したいと思います。
それでは、また。失礼いたします。
良い休日を
敦
<<街でよく見かける英語表現#45>>
英語では、学業優先は、"education first" と言います。
GPA (grade-point average) で、3.7以上を達成した「文武両道」の学生は、
"Distinguished Scholar Award" を受賞することが出来ます。
今年度は、23名の学生が受賞しました。
(http://www.umterps.com/ViewArticle.dbml?SPSID=716403&SPID=120731&DB_LANG=C&DB_OEM_ID=29700&ATCLID=210187351)
日本の大学でも、競技成績を表彰するだけでなく、
「文武両道」に努めた学生を表彰していく必要があるのではと思います。
2015.08.29
今週の活動と日常
2015.08.28
体育学会@国士舘
日本体育学会は「体育」に関する分野を広く包括する学会です。体育哲学、体育史、体育社会学、体育心理学、運動生理学、バイオメカニクス、体育経営管理、発育発達、測定評価、体育方法、保健、体育科教育学、スポーツ人類学、アダプテッド・スポーツ科学、介護福祉・健康づくり、の14の専門領域のセッションと、学会本部企画・大会組織委員会企画・共催企画がプログラムを構成する大きな学会です。今回は3日間にわたって開催さました。スポ健の先生方や学生さんも多数参加されていました。とはいえ14の専門領域がほぼ同時進行するためアチコチ見て回るのは中々大変でした。幸いにも隣の部屋(運動生理学)で行われた moto 先生のシンポジウムは聴講することができました。
前述の通り体育学会は大きな規模で行われますので、これを機会に同窓会を開催される先生方が多い模様です。スポ健の4つのコースも全て専門領域の範疇に含まれると思いますので、現在院生の皆さんも将来そういった機会があるかも知れません。私はと言うと、今回体育学会のタイミングに合わせて企画された恩師のF先生の還暦祝いに参加させて頂きました。懐かしい面々に会うこともでき、非常に楽しいひとときを過ごさせて頂きました。
学会は勿論自らの研究を発表したり、情報収集をしたり、ディスカッションをしたりする場なのですが、ネットワーキングをする場としても非常に重要なので院生の皆さんは良く覚えておいてください。共同研究にしても全く知らない人と組むことはリスクを伴いますので、お互いの人柄の理解は矢張り大切です。研究員や教員のポストを探す際は尚更です。研究発表の場面のみならず、懇親会等の場でも気の利いた振舞いや発言が出来る様日頃から研鑽してください。
来年は日本バイオメカニクス学会大会を立命館大学で開催します。昨年9月から実行委員会を組織し、着々と準備を進めて来ています。良い大会と出来る様万全の用意をしようと思います。実行委員をお引き受けくださった皆様、何かとお手数をお掛けするかと存じますが、引き続きよろしくお願い致します!(学生さんのアルバイトも近々お願いさせて頂くと思います。よろしくご協力ください!)
2015.08.27
日本スポーツ栄養学会第二回大会
先週末、7月に開催された日本スポーツ栄養学会第2回大会の運営を行ったスタッフによる“お疲れ様会”がありました。その学会で、It's meは特別講演をさせていただきました。講演名は“タバタトレーニング-その理論と発展-”でした。 そこでは、実際のタバタトレーニングをスポーツ栄養士の方々に知ってもらうために、このような講演では珍しいことですが実技を行っていただきました。その①として、実際にスピードスケート選手として本当のタバタトレーニングをやっていたオリンピック出場経験のある高崎健康福祉大学出身のSmall fieldさんに自転車エルゴメータ(フィットネスクラブにある動かない自転車)を用いて、スピードスケート選手が行う方法で行っていただきました。最初は、それほどではありませんが、見る見るうちに彼女の表情がきつくなり、所定の回転数に追いつけなくなり、疲労しながらも必死に自転車をこぎ続け,最終的にはもう一歩もこげなくなり、疲労困憊に至るという、見ていてもかなり息苦しくなるような本当のタバタトレーニングをやっていただきました。競技力向上には、より高い強度でトレーニングすることが必要です。したがって、スポーツ栄養士の方々の役目は、スポーツ選手がより質の高いトレーニングができるよう食事面からサポートすることです。そのためには、オリンピックを目指すようなスポーツ選手が、実施しているトレーニングの厳しさをスポーツ栄養士の方々に知ってもらう必要があります。ぎりぎりの状態でトレーニングをがんばっている選手の姿を見て欲しかったのです。
一方、一般のヒトが健康増進のために自宅でも手軽にやれる自体重を用いたタバタトレーニングを同じ大学のWood village先生とRound mountain先生にやっていただきました。ビデオを見ながら行うのですが、これも、かなりきついトレーニングであり、いつも活発なWood villege先生も足が上がらなく、声もでなくなっってしまいました。久しぶりに行ったと言うことでしたが、ほんとにがんばっていただきました。スポーツを知るために、自ら実践するスポーツ栄養士の鏡です、お二人は!。 休息を入れて3分50秒の短い運動ですが、かなりきついトレーニングです。終了時は、フロアーの方々から思わず拍手がありました。
スポーツとスポーツ栄養、競技者とスポーツ栄養士が、お互いに理解して、今後、両者の関係が発展し、さらに児童・生徒の身体活動量の増加、成人の体力増進に関連した食事サポートと身体活動・運動・スポーツに関連して守備範囲の広いスポーツ栄養士の方々の活動が発展していくことを祈念しています。
写真を撮っていただきました吉ab村様ありがとうございました。
2015.08.26
季節のたからもの。
残暑お見舞い申し上げます。
台風の影響で少し収まった暑さですが、どうやら月末からはまた戻ってきそう、とのこと。
今年の猛暑、食欲を落としてしまった人もいるかもしれません。
アスリートの大切な夏対策の一つでもある「食欲増進」。
その基本は「おいしそう、食べたい!」であり、その大きな力となってくれるのは、その土地の季節の食材、食文化です。
関西に来て、夏の定番となったが、鱧(はも)。
関東にいた時には、名前は知っていても、高級そう、というイメージばかりで、なかなか口にする機会がありませんでしたが、こちらでは夏場、湯引きしたものが、パックに詰められ、日常的にスーパーで売っているのを見て、感動しました(決して安価ではないですが・・・)。
京都の祇園祭り、大阪の天神祭りには欠かせない、ということも、こちらに来てから知りました。
関西では、歴史、風土に根付いた、夏には欠かせない味わい、です。
豊な魚という字の通り、味わい豊かな鱧ですが、その「お顔」はなかなか鋭く、ちょっと驚きます。
また、おいしくいただくためには、あの独特な「骨切り」が必要。
古くから「三寸を二十四に包丁する」と言われ、専門の技術を要します。
鋭い表情に屈せず(笑)、「骨切り」の技術があってこそ、いただける、あの味わい、ということです。
たんぱく質が豊富で、うなぎに比べると低脂肪、脂溶性ビタミン類も含みます。
湯引き(落とし)、白焼き、蒲焼き、天ぷら・・・どれもそれぞれに、捨て難いおいしさ。
暑さのストレスから、そうめんにすいか、かき氷・・・と、食欲の減退と共に、たんぱく質源が不足しがちな夏には、とってもありがたい季節のたからものです。
ab
2015.08.25
学部生の論文が海外雑誌に掲載!
先日、Motoのゼミ生4年生のH居くんが2年生から始めた研究内容を英語の論文を書き、海外の雑誌:Hormone and Metabolic Researchに掲載が決定しました!
H居くんは2年生の時にスポ健の先生の研究の活躍や先輩が実験や研究している背中を見て、自分も研究者になりたい!という思いでMotoと研究を始めました。研究は簡単ではありませんが、自分や世間の疑問や課題点を解決するきっかけになるという意味では非常にやりがいはあると思います。H居くんは、生活習慣病に対して、運動やサプリメント摂取によって効果的に予防・改善させたい!という気持ちで研究を行っています。今回の研究内容は、運動は筋でエネルギーを多く消費し、脂肪をよく燃焼します。その機序に性ホルモン(特に男性ホルモン)が関係していることや運動だけでなく、あるアプリメント摂取によってだけでも脂肪の燃焼を増加させることを明らかにしました。つまり、太った人に急に運動させるのでなく、まずはこのサプリメントを摂取して、体重を少し軽くしてから運動をしましょう!という結果です。これを英語で論文を書き、海外で認められたことは素晴らしいと思います。
将来、研究者の卵から大きく世界に羽ばたく人材がスポ健から出てくることを期待しています!!
Moto
2015.08.24
JISSインターンシップ
今回は、インターシップで1週間、JISSで過ごす、ゼミ生の絵pearさんの激励とハイパフォーマンス・ジムの見学です。
絵pearさんは、初日から、選手サポートのための計測実験での手伝いでした。大型トレッドミルの上を、クロスカントリースキーのジュニア代表選手がローラースケートを履いて、自ら疲労困憊まで追い込んでいきます。運動強度と血中乳酸値、最大酸素摂取量(It’s me先生が紹介していたもの)を計測します。その記録補助を絵pearさんが行っていました。トップ選手の実験現場に立ち会えたことは、大きな経験になったことでしょう。選手にとっては大きな負担がかかる計測です。多くの人手もかかります。その分、精度の高いデータを取得して選手にフィードバックする必要があります。そのような、はかる側もはかられる側も“真剣勝負”の雰囲気は、なかなか言葉では伝えづらく、空気感も含めて皮膚感覚で体感するのが一番です。インターンシップならではの経験になったでしょう。
ハイパフォーマンス・ジムは、この設置を企画した石毛先生に紹介してもらいました。一見したところ多くの機械がならんだ、大きなトレーニング体育館です。でも個別の設備、機器をのぞくと、独自開発された装置がゴロゴロと配置されています。石毛先生が紹介してくれているのは、「投げ」動作のマシンです。投げのときに、一旦、腕を引いてそれから前へ振り出します。筋肉を一旦引き伸ばして縮めるstretch-shortening cycleによって動作を行うのですが、そのときにstretchの負荷を大きくしたり、いろんな刺激が与えられるように工夫されています。持ち手のところも交換できるので、野球、槍、ラケットなどに対応できます。
また、正面にモニタのあるウエイトトレーニングのプラットフォームには、映像、床反力などのデータがトレーニング中に計測され、モニタにリアルタイムでフィードバックされます。フォーム、運動強度などのチェックが即時に行えるようになっています。もちろん、これらのデータはサーバーに蓄えられて、あとでじっくり見直すこともできます。この施設のコンセプトは、トレーニング現場とスポーツ科学の融合と聞きました。選手がここでトレーニング、リハビリを行い、そのサポートを研究者が行うことで、選手、コーチ、研究者が自然と交流する、そのことでイノベーションがおこる。そして、ここである程度システムができた装置は、通常のトレーニング施設へ移行され、空いたところで新しいイノベーションの種を育てる、という説明を石毛先生から伺いました。まさに、イノベーションを起こすために、ニーズ、シーズ、そしてコラボがなくてはならないことを、このハイパフォーマンス・ジムの見学から学べました。2020東京大会では、このような日本の新しいスポーツ科学のサポート・貢献、イノベーションも世界に発信されて行くでしょう。
<<今週のちょっと、もっと、ほっとな話>>
そろそろ教員採用試験の2次試験(実技、面接など)があります。その実技試験対策に、【shine】先生が暑い体育館で、熱い指導。ご苦労さまです。全教職員の熱い期待を受けて、受験生は頑張って!
【忠】
2015.08.23
アメリカ便り (44): Running Safe
皆様いかがお過ごしですか。
今回は、メリーランド州立大学カレッジパーク校の
Department of Kinesiology (運動生理学科)を紹介したいと思います。
http://sph.umd.edu/department/knes
本学科は非常に高い評価を受けており、
大学院プログラムは、全米で3位にランキングされています。
この学科には、非常に精力的に研究をされている
スポ健のMitsuo 先生 も、2011年度に在外研究に来られていました。
https://www.ritsumei.ac.jp/shs/news/article.html/?id=162
https://www.ritsumei.ac.jp/shs/news/article.html/?id=151
https://www.ritsumei.ac.jp/shs/news/article.html/?id=95
先日、この学科の大学院生と教授が中心となって、
大学構内でランニングする際に、どこが危険かというマップを作りました。
(http://sph.umd.edu/news-item/kinesiology-student-projects-help-runners-stay-safe-encourage-people-broaden-view-exercise)
こちらの構内は、緑も多くてとても気持ちよく、
ランニングする人が非常に多いのですが、
キャンパスが広大で、オープンなため、
時間帯によっては、安全性の低い場所があります。
そこで運動をする人が、心配なく運動できるように
マップが作られたというわけです。
ちなみに地図の赤い部分は、危険地域です。
私も立ち寄らないようにしています。
アメリカの大学は良いところも多いのですが、
治安という意味では、日本の大学の方が良いですね。
それでは、また。失礼いたします。
良い休日を
敦
<<街でよく見かける英語表現#44>>
学科の HP に、本学科のミッションが書かれています。
スポ健と同じく、幅広い学際性が謳われています。
"At a time when the nation is witnessing an obesity epidemic,
enjoys watching sport more than playing sport,
and has an aging population at risk for falls,
Kinesiology brings together individuals with backgrounds
in physiology, psychology, sociology, communications,
history, engineering, education, and neuroscience
to work on these and many other important public health problems. "
「アメリカ国民が、肥満症候群に見舞われ、スポーツをするよりも
テレビ鑑賞を楽しみ、転倒の危険性のある高齢化の進む時代において、
これらの問題ならびに他の多くの重要な公衆衛生の問題に立ち向かうため、
運動生理学科は、生理学、心理学、社会学、コミュニケーション学、
歴史学、工学、教育学、神経科学のバックグラウンドを持つ人間を統合する。」
http://sph.umd.edu/department/knes/about-us
2015.08.22