[ 2014年05月 ] の記事一覧

2014.05.31

学校には“なぜ”体育があるの?

小さい頃、テレビをつけたら、「巨人の星」に「侍ジャイアンツ」、夜になったら毎晩、プロ野球の巨人戦が中継されており、見事に“メディア”というチェンジエージェントによって、私は野球に、いやジャイアンツに社会化されました。中学生になって、野球部へ…とはいかず、教師をしていた父の影響もあって、ブラスバンド部に入部した私は、気がつけば、スタンドで応援歌やコンバットマーチを演奏し、応援する側にいました。

その私が高校生になったとき、友達の強引な勧誘のおかげで?念願の野球部に入部し、甲子園をめざし始めました。ところが、基礎体力がなかった私は、しばらくしてから肩・肘・腰…と故障を抱え、ひいき目に見ても高校野球での思い出は、輝かしいものとはいえませんでした。

振り返ってみたら、練習中に水など一滴も飲んではいけない時代でしたし、肩を冷やすから…と先輩に言われて、半ば強制的に高校時代の体育の授業では、一度も水泳の授業に出席したことはありませんでした(時効と思って許して下さい…)。

野球で花が咲かなかったこと以上に、ケガや故障に悩まされた後悔もあってか、「選手がケガや故障で悩まされず、練習で野球が嫌いにならないような指導ができる野球部の監督になりたい…」という想いを抱き、私は体育大学に進学し、体育の教師をめざしました。

大学に入学後、記憶が定かではないのですが、2回生の時に履修した保健体育科教育法のような授業で、「部活指導を一義的に考え、教師を志すのは、もっての外…。まず、子どもたちの心と身体の健やかなる成長に寄与する知識と技術を身につけること、そして保健体育科という教科教育のスペシャリストとしての自覚を持ち、“体育が大好き!”という子どもたちを育てることが保健体育教員の使命」ということを最初に教わり、体育教師に抱いていた偶像が虚像であったことに気づき、頭をハンマーで殴られたかのような衝撃を受けたことをいまでも思い出します。


前置きが長くなったのですが…(笑)
キャリア形成科目の授業で、“教師”という仕事と職業について学生たちに考えてもらうため、【A】先生に「学校には“なぜ”体育があるの?」というタイトルで特別講義をしてもらいました。
【A】先生は、体育は何をする教科なの?体育は何を教える教科なの?体育を教えるとは何をすることなの?といったことを学生に問いかけながら、「保健体育教員に求められる資質」を学生自身に考えさせるような授業を展開されました。

中でもユニークな内容だったのが、小学校と中学校・高等学校とにおける「体育」に対する学校や教員の考え方の違い…。長くなるので、詳しくは述べませんが、小学校は、体育の授業と学級経営が密接に関係しているということでした。例えば、子どもたちは、運動を通して学習することの意味や学習内容を学ぶということ、また体育は子どもたちの人間関係構築のバロメーターとなっており、体育を授業時間割のどこに配置するかが、学級経営の鍵を握っているということでした。



また2006年7月の中央教育審議会の答申の内容を事例に取り上げ、「教師として最低限必要な資質能力という“最低限”というのはどういう意味?」「職務に著しい支障が生じることなく、実践できる資質能力とは?」「優れた教師の条件って何?」ということを【A】先生は、学生に問いかけていました。
「優れた教師の条件」という部分では、中央教育審議会が掲げる①教職に対する強い情熱、②総合的な人間力、③教育の専門家としての確かな力量、といった3つの条件を掲げ、「①と②は、優れた教師だけに必要なことなのか?さらには、それは、教師にだけ必要なことなのか?」ということを学生に問いかけていました。

最後は、【A】先生ご自身の経験やこれまで数多くの観察された授業での体験をもとに、「先生、見て見て!できたよ!」ということが授業で子どもたちからいくつ引き出せたのかを教師は常に問いかける、つまり、「教師は授業で勝負する」ということが教師の資質を考える重要な要因であることを主張されました。


我々大学教員も、教育、研究、組織運営、社会連携など…“マルチタスク”とはいいながらも、「授業で勝負する」ということを改めて見つめ直す必要があるのかな…という気持ちになりました。もちろん、どの教員もおろそかにしていることはないのですが、仕事の効率化や仕組みづくりを進めるうちに、「物事を丁寧に進めることへの無頓着」という大企業がよく陥る効率化の罠に填まっていないかと…

「教師は授業で勝負する」
情熱と豊かな人間力、そして専門性を意識し、“わかる!できる!楽しい!”が引き出せるように、私自身も研鑽を積みたいと思います。

Jin



2014.05.30

スポーツ方法実習

前回は、スポーツ指導実習のことについて書きました。

今日は、スポーツ方法実習のことをお話ししようと思います。どの授業もそうですが、この授業はスポーツ健康科学部の受講生だけが履修する授業とはまた違った意味で私自身学ぶことが多い授業です。


受講生は様々な学部から集まっています。経済、経営、理工、薬学、生命、スポーツ健康科学部などなど。スポーツを得意とする人、得意ではないけど好きな人、好きではないけど資格に必要な人、多様な人の集まりが好きな理由の一つです。色とりどりの人が集まっているのですが、初回には単色で放っている色が授業の回を増すごとに混じり合い様々な美しい色に変わっていく、そういう感じがする授業です。全く知らなかった人たちが学部を越えて交わるからこそ生まれる色彩のような気がします。これが座学であればこうも色は調和していかないと思っています。


 もうひとつ好きな理由として、この授業で取り扱う種目に関しては、一般的にスポーツのできる人がうまいというわけではない、が挙げられます。私の担当クラスではアダプテッド・スポーツというほとんどの人が経験したことのない種目を行います。運動に際し身体のどこかに制限が加わりますので体力差や性差が一般的なスポーツより少なくなります。体力や運動能力では優っている人がうまいわけではない。そこがとても魅力的で、何度授業をしても私自身が見ていてわくわくしています。

 

先週までは5回にわたり「ゴールボール」を実施していました。アイマスクで視覚を完全に遮り、重さ1.25kg、バスケットボールと大体同じくらいの大きさで中に鈴の入ったボールを使います。それを転がしてキャッチする→投げ返すということを繰り返し、ゴールに入った得点で勝敗を競います。本来はスキーのゴーグル型のマスクやプロテクターを使用するのですが、授業では簡易なものを使用しているため、プレーには最新の注意が必要になります。1.25kgのボールを全身(手の指先から爪先まで)でキャッチするのですが、キャッチする場所が悪かったら・・・想像してみてください、その痛み!最初は怖々プレーしているのですが、若い皆さんの上達は目を見張るものがあります。90分の授業内だけでもめきめき上達していきます。そして、ここが私の好きなところなのですが、あまり運動を得意でないという受講生が素晴らしいボールを投げ完璧なキャッチをするのです。視覚が制限されるため、この種目のスキルを向上させるにはこれまでの運動能力だけでは足りないのです。音に集中する力、研ぎ澄まされた感覚のようなものが必要になります。視覚が大きな手掛かりになるスポーツをしてきた受講生には未知の感覚で、「見える」ことが当然としてつけてきたスキルを持つ人より、運動はあまり得意ではないけれど(がゆえに)「見える」ことに大きなウェイトを置いていない、けれど音に集中できる人が上手かったりするわけです。そういう姿は、「全身で音を聴いている」ように見えます。


 ぜひ、素晴らしいプレーの映像をお見せしたかったのですが、動画はアップできないみたいです、残念。。。動画ばかりで、たった1枚撮った写真は雰囲気がほとんど伝わらないものですがないよりはいいかと思い載せることにしました。















アイマスク体験から始まり、7週間近くお世話になったアイマスク、あちこち破れていたのですが、まだ使えそうなのでもったいなくて捨てられず・・・ミシンをカタカタ3時間。60枚の修復終了。ソフト洗いで洗濯をして、天日干しで完了!後期まで休憩。【A】


 

 

 

2014.05.29

アメリカスポーツ医学会報告

今週からアメリカスポーツ医学会(ACSM)が始まり、アメリカのフロリダに来ています。
日本との時差は13時間、昼夜が完全に逆転しますので身体が慣れるまでは昼間眠い日が続きます。
ACSMは、スポーツ医学やスポーツ科学関連の学会として大変有名で、全米、ヨーロッパ、日本、韓国、台湾など多くの国々から多数の研究者・学生が参加しています。今回は、4日間の学会期間を通して3584の発表(シンポジウム、口頭発表、ポスター発表)が行われる予定です。スポーツ健康科学関連の国内学会でこれだけ大規模の学会はなく、まさに「世界規模の学会」と言うことができます。
私自身、この学会に初めて参加をしたのは約15年ほど前になります。統計結果を確認したわけではありませんが、当時と比較して日本からの参加者(特に大学院生)は大きく増えているように感じます。この要因としては、自然科学系の多くの研究成果が英語で発表される中で、実用英語の必要性が強調され、学位取得後の海外留学者も増えていることが影響しているでしょう。また、学会参加に伴う海外渡航費を補助する制度(本学ではこの制度が大変充実しています。素晴らしいことです。)が充実してきたことも一つの要因として挙げられるでしょう。
国際学会に参加する利点としては、一流の研究者の講演や発表を直接聞くことができる、最新の研究の動向(トレンド)を把握することができるなど様々です。論文上で名前しか知らなかった、いわば「憧れ」の研究者の姿を実際に見ることができ、「名前と外見がリンクする瞬間」に感動することもあるでしょう。また、海外の研究者と交流できる点も魅力です。ここ数年、台湾の研究グループと交流の機会をもっていますが、今日は発表会場で再会することができました。何と、教員・大学院生を含め総勢40名以上で台湾から参加しているとのこと、その後、遠目に彼ら・彼女らの姿を見ていましたが、物怖じせずに積極的に質問をする姿が印象的でした。
明日は私の研究室の大学院生4名が発表を行います。そのうち、2名は国際学会での発表のデビュー戦となります。積極的な実りあるディスカッションが展開できるよう、サポートに徹したいと思います。

2014.05.28

基礎演習サブゼミのドッチボール大会

こんにちは。Ma34です。

今日は基礎演習、サブゼミの日です。今日は研究テーマについてのお話はお休みして、基礎演習のサブゼミで行われたクラス対抗のドッチビー大会の様子を紹介します。


見学していると、教室では見られない一面を新たに見せてくれる人(友だち同士でもあんなに活躍する姿を初めてみた!と言っていました)、想像どおりの活躍を見せてくれる人、「避ける専門!」と言いながら華麗によける女子たち、とみんなの素敵な一面をまた見せてもらいました。


 なかでも印象深かったのは、一回戦で惨敗を喫した後にリーダーがみんなの士気を高めるために指示した「シャツをインにしよう!」という少々頓珍漢に思えた指示。そしてそれを、Aクラスの参加メンバーが(わたしもですが)一人残らずきちんと聞き、それに従ったことです。笑いを持ちながら、かつ、クラスの一体感を作り出し士気を高めたこのアイディアは、天晴!でした。実際、その後の一試合はかなり優勢での勝利でした。

人と関わりあう術に長けている学生に、わたしも「なるほど、こういう声かけをしたらよいのか」と学ばせてもらいました。また、学生同士でもこういう場面を通して、「そういう風に関わりをすると良いのか」と学びあっているのでしょう。

 また、今日の企画は2回生のオリターさんを中心として、学生が学生のために考えているものです。参加した一回生が充実した時間を持てたのも、彼らの努力と企画力の高さと、一回生のためを思う思いやりの成果です。

わたしも彼らに学ぶことが多い毎日。次はどんな企画かな・・・とわたしも楽しみにしています。


2014.05.27

グローバル

Hassyです。

Goto先生のブログにもありましたが、私も本日からアメリカスポーツ医学会に研究発表に行ってまいります。
今は機内からアップ・・・しているわけではなく、事前入力しています。
次週には、学会での様子をご紹介できるものと思います。

さて、国際学会ですので当然英語での発表、ディスカッションとなります。
最近では特に「グローバル化」という言葉を目にします。
文科省でも「若い世代の「内向き志向」を克服し、国際的な産業競争力の向上や国と国の絆の強化の基盤として、グローバルな舞台に積極的に挑戦し活躍できる人材の育成を図るため、大学教育のグローバル化のための体制整備を推進する。」
として、事業推進を展開しています。
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/sekaitenkai/1319596.htm

その基盤としての英語力が重要なのは言うまでもありません。
スポ健でも、通常の英語科目に加え、3回生を対象とした「専門英語」があり、私と敦先生で担当しております。
この科目では当該分野に則した学術論文を中心に読みこなし(2人で計8本の国際誌)、発表して論文紹介するようにしています。
学術論文は、敦先生はしっかりとテーマを確立し、それに関する論文を幾つかまとめて各グループに提供されていますが、私は自分の興味で、比較的新しい、まだ読んでいない論文を提供し、読んでもらっています。

スポーツ健康科学といっても、扱う対象は広範囲ですので、学生にとっては背景もよくわからず、しかも今まであまり触れてこなかった学術論文を読むわけですから、相当きついだろうと思います。
しかし、スポ健生1,2期生は、かなりの努力をし、これまで見事な発表をしてくれました。
今年も、この授業の厳しさを知った上で受講してくれた強者たちですので(笑)、発表が楽しみです。

一方で、グローバルといっても、英語が巧みであればいいわけでなく、重要なのは異なる価値観、文化をもった者同士がどのように協働していくか、その重要性を再認識しなければならないことを、mozawa先生もとある会議で発言されています。
同様のことを、法政大学の田中優子総長も述べておられました。

私も僅かですが、アメリカに留学経験があり、そこで色々な国からの学生や研究者と話す機会に恵まれました。
時には価値観の違いから、数時間も論議することがありました。
そうして、いい意味での対話力が養われたように思います。

私が思うグローバルは、またまた登場ですが、Jin先生の4月19日のブログ、社会人基礎力で言えば、「多様な人々とともに、目標に向けて協力する力」でしょうか。

そういう意味でも、学生には多様な人と対話し、喜怒哀楽していって欲しいと思っています。

2014.05.26

佐々木先生の講演

521日 生涯スポーツ論(長積教授担当)のゲストスピーカーとして、佐々木秀幸先生に、

「スポーツ強化・振興 ―次世代を担うあなたたちへのメッセージ―」

で講演していただきました。

佐々木先生は、早稲田大学教育学部卒業、学生時代は跳躍の選手として活躍。東洋大学並びに早稲田大学教授。その間には日本陸上競技連盟 のコーチ、役員としてオリンピックに参加したほか、専務理事として組織の強化に奔走。現在も地元の中学校陸上部指導員として指導。陸上競技の教本・テキストの著書多数。と陸上界では神様のような存在です。


お話しの中で、「スポーツの神髄とは何か」について、その起源たるアテネに出かけられてローマの古代遺跡の調査から、「スポーツ」探求され始められたというのを聴き、佐々木先生の迫力ある実践のされ方にはただただ脱帽いたしました。

そのような本質への迫り方が、指導の現場においても、本物の一流アスリートを輩出され、これまでの選手育成、指導者育成で成功を収めてこられたと確信いたしました。さらには、その先生の信用、信頼によって、今も社会の多くのところから仕事がひっきりなしに寄せられておられます。

年齢は80歳を過ぎていらっしゃいますが、今でも中学生を指導する時は一緒に走りながら教えておられ、100m12秒台で快走されます。マスターズの世界記録にも挑戦されています。

バイタリティと生活習慣、活動習慣はまさに、「スポーツ健康科学」のお手本です。少しでも近づきたいものです。


<<今週のちょっと、もっと、ほっとな話>>

先週金曜日は、R-GIROシンポジウムでした。【Jin】先生のブログにあったように、「健康」に関わる講演とCOI-T(運動を生活カルチャー化する健康イノベーション)のプロジェクトの取り組み状況を報告し意見交換しました。“今の夢を10年後の常識に”をテーマに掲げた国のプロジェクトです。また進捗についても報告します。

 写真は、学部の1回生(基礎演習のクラスから)とオリター団による「スポキャン」の出発前の写真です。学生同士で、正課では学べない内容を合宿形式で実践しながら学びます。今回のテーマは、「積極性」・「協調性」・「社交性」でした。【GOTO】先生のブログにあったように、頑張ってる学生同士がより刺激し合いながら力をつけていってくれるでしょう。


「頑張ってる」卒業生の【Kしま】さんが来てくれました。嬉しいですね。彼女が勤めているスポーツ新聞社の記事を持って。ちょうど阪神の活躍が一面でさらに嬉しくなりました。

【忠】

 

 

 

 

2014.05.25

スポ健な人 (5)

五月も後半になりましたが、
皆様、いかがお過ごしですか。

今回も、スポ健で頑張っている学生さんを
紹介したいと思います。

今回、紹介したい学生は、Shunnnosuke 君です。
Shunnnosuke 君は、学生トレーナー団体 (RAM) に
所属し、その活躍が認められて
+R 奨学金という奨学金を獲得しています。



そんなShunnnosuke 君にインタビューです。
Q: 「どうして立命スポ健を選んだのですか?」
A: 「スポ健に入れば人間の体を科学的に
       考えられるようになり選手として
       野球の練習に活かせると思ったからです。」

Q: 「今、力を入れていることを教えて下さい」
A: 「現在はRAMに所属しラグビー部のトレーナーとして
   活動する機会を与えていただいています。
       トレーナーとして選手をサポートするために
       必要な知識を身に付けるべく勉強する日々です。
       また将来ATCを取りたいので自主ゼミ(GAP)に
       参加するなど英語学習にも意欲的に取り組んでいます。」



Q: 「ATC 目指して英語の勉強にも力をいれていますが、
   将来の夢を教えて下さい」
A: 「2020年の東京オリンピックで通訳兼トレーナーとして活躍した後、
   モータースポーツドライバーやライダーを支えるトレーナーとして活躍したいです。
       40歳までにドライバーやライダーを支えるために
       ドクター、PT、鍼灸師、トレーナー等を集ったチームを作り
       会社を立ち上げます。その後トレーナー育成にも携わりたいと考えています。」

Q: 「最後に後輩へのメッセージをお願いします」
A: 「スポ健では他の大学には無い最高に恵まれた施設だけでなく、
     とても優秀な研究者の方たちもいらっしゃいます。
       正課で学んだバイメカや栄養学などの知識を
       課外でのトレーナー活動で活かせる環境はなかなかありません。
       ぜひ皆さんもスポ健で学んで下さい!」

Shunnnosuke 君の夢が実現することを
楽しみにしています!

それでは、また。失礼致します。
良い休日をお過ごし下さい。


2014.05.24

健康経営

平成24年度における我が国の国民医療費は、厚生労働省の発表によれば、概算で38.4兆円に達し、この額は、国民一人あたりに換算すれば、30.1万円に上ります。周知の通り、ガンを筆頭に、加齢にともない様々な疾病のリスクは上昇しますが、70歳未満の一人あたりの国民医療費が18.1万円に対し、70歳以上の一人あたりの国民医療費は、80.4万円に上ります。
高齢社会と人口減少時代が今後さらに進む我が国において、また現行の社会保障システムを勘案すれば、健康増進は、個人レベルの問題ではなく、もはや国家レベルで看過できない重要な問題となっています。

このような状況を鑑み、「経営者よ、社員の健康に投資せよ」という“健康経営”に関する講演を昨日聞きました。立命館大学で開催されたスポーツ・健康研究拠点シンポジウムの基調講演で、東京大学の古井先生は、地方自治体のみならず、民間企業も疾病の治療から疾病のリスクをより減少させるための取り組みが急務であることを主張されました。

例えば、人々の健康診断の受診率の低さもさることながら、その受診結果が個人の行動変容に十分機能していないことを指摘し、様々な検査結果を正常値の適用範囲のように絶対的な指標で提示するだけでなく、性別や年齢をはじめ、個々人の行動様式に合致するように検査結果を提示し、自分自身と同様のタイプの人に比べ、自分がどれほどのリスクを抱えているのかという気づきを与えるような相対的なリスクを伝えなければ、行動変容の意識づけに結びつかないと述べられました。

その他にも労働災害防止に積極的に取り組む企業を厚生労働省が表彰する制度や、従業員の健康増進を推進する企業に対して、税制優遇措置や保険料の軽減をする東京商工会議所の事例、また従業員の健康増進に取り組む企業を健康経営で格付けし、銀行がローンの金利優遇措置を施している事例などが紹介されました。




最近、ネットなどで盛んに「ブラック企業の見分け方」のようなサイトが横行していますが、むしろ、企業選びをする際には、給与だけでなく、社員の健康に投資するという視点を持つ“ホワイト企業”を見分けるような目を学生には持ってもらいたいものです。

Jin


2014.05.23

「教育者と指導者」

指導実習のクラスで検討した「よい指導者とは?」の続編です。

受講生があれこれ考え、よい指導者の資質、そのために必要なことを考えている途中。ある受講生がふと疑問を投げかけました。


「今、考えている指導者って部活のことを思い浮かべてるなあ。部活の指導者って先生で、先生が指導者ってこと?」


多くの場合、日中授業を教えている学校の先生はその間、「教育者」です。が、放課後部活の時間になると、同じ学校の「教育者」(先生)が討論した受講生の意識下では「指導者」になるのです。たぶん、現役の中学生、高校生も同じ感覚を持っているでしょう。同じ先生が教育者と指導者になる?生徒の意識にスイッチが入るのはなぜでしょうか。何の要因で先生が教育者から指導者に変わるのでしょうか。

ここで、少し用語の定義を引用してみます。ここでは、一つの辞書(大辞林)に限定したいと思います。


「教育」

◇ 他人に対して意図的な働きかけを行うことによって,その人を望ましい方向へ変化させること。広義には,人間形成に作用するすべての精神的影響をいう。その活動が行われる場により,家庭教育・学校教育・社会教育に大別される。


 「教育者」

◇  教育に携わる人(大辞林)。


 「指導」

 ある意図された方向に教え導くこと。

 柔道で,選手が禁止事項を犯したとき,審判員から受ける宣告の一。禁止事項のごく軽い犯し方をしたもの。

 

「指導者」

指導者に関する定義は、上記の辞書には載っていません。実用日本語表現辞典では以下のように説明されています。

教え導く者。指導する者。教育スポーツ芸道などの他に、政治経営宗教などについても用いられる。コーチ、あるいはリーダー(実用日本語表現辞典)。


 教育は、人を望ましい方向へ変化させる。これは導くと言い換えることができます。指導は、ある意図された方向に教え導く。この場合、決してマイナス、ネガティブの方向へ意図することはありません。従って、やはりプラスの方向へ導くと言えます。そうなると「教育と指導」「教育者と指導者」はどう違うのでしょうか。皆さんの定義はいかがですか?こういうことも念頭に置きつつ指導実習を進めています。指導者には「思考する力」が必要であることを受講生と共に検証していきたいと思います。【A】

2014.05.22

「頑張っている人」を増やしたい

5月下旬になりました。来週火曜日からはアメリカスポーツ医学会(ACSM)が始まり、スポーツ健康科学部からも多くの教員や大学院生が参加します。私も参加しますので、次週はアメリカからのブログ更新となります。

さて、日曜日担当「敦」先生による「スポ健な人」でも紹介があるように、スポーツ健康科学部・研究科では「頑張っている学生」がたくさんいます。頑張っている内容は学生それぞれですが、彼ら・彼女達の日々の生活は充実しており、話をしていてもエネルギーが伝わってきます。

「成功」の定義は人それぞれでしょうが、誰もが成功をしたいと願っています。その中で卓越した成果を残す人に共通していることは、「頑張っている」ということです。頑張ればすべて成果が得られるわけではありませんが、頑張らないと成果は残せません。したがって、「いかにして頑張るか」ということが重要なポイントになってくるように思います。それでは、「頑張るため」にどうすれば良いか? いろいろ方法はあるでしょうが、「同じように頑張っている人をみつける」というのが一つ手かもしれません。例えば、私は朝6時頃に出勤をすることも多いですが、既にグラウンドでは陸上競技部の長距離選手が練習を行っています。選手達の姿をみて、「頑張ろう」という私のやる気のスイッチがオンになります(あまりに単純ですが。。)。それでは「頑張っている人」を見つけるにはどうすれば良いか?これは簡単です。なぜなら、頑張っている人の近くには、頑張っている人が自ずと集まってくるからです。

学生に対して「影響力のある人になりなさい」と話をすることがあります。ここでいう「影響力」というのは、「自分の努力・頑張りによって周りの人の考え方、意識、最終的には行動も変えてしまう」強いインパクトをもった人間のことを私はイメージしています。1人でも多くの影響力をもった学生をここ「あいコア(スポーツ健康科学部の拠点:インテグレーションコアの愛称)」で育てることができるように、まずは「頑張っている」学生を増やすところから始めたいと考えています。