GWも後半にさしかかり、地震からほぼ2ヶ月になろうとしています。今年度、mm生先生のブログを読むたびに、被災地を思います。
地震2日後、仙台に住んでいる母校の研究室の後輩から実験室が崩壊だと報告をうけました。10日程たった頃、実験動物のほとんどが殺処分することになったと聞きました。医学の進歩を目指す実験のため、自然界に存在しない遺伝子操作された生物を人間がつくりだしたはずなのに、天災が原因で、人間の手で殺処分することになるなんて、動物実験を中心に研究している私には、何とも言えず悲しく複雑な気持ちになりました。
ある後輩からは3月の最終週、研究室恒例の送別会もないまま仙台を経ち、就職先の東京へ引越したと連絡をもらいました。昨年、立命館に来る際、研究室のみなさんから、送別していただいたことを思い出します。関西では揺れもほとんどなく、平和な日常を送っていますが、テレビやラジオで地震速報が流れるたびに緊張が走ります。
そんな中、大阪大学に勤めていらっしゃる大学院の先輩である藤田和樹先生から、母校の恩師、永富良一先生を代表として「UNDA(Undo(physical activity & exercise) Network for the Distressed Area(http://sendai-kci.icr-eq.co.jp/unda/))という団体を発足させたと連絡をいただきました。地震から3週間後に立ち上げたとのことでした。「被災地健康運動支援情報ネットワーク仙台みやぎ設立趣意書(syuisyo.pdf)」その判断力と行動力には、いつもながら、とても驚かされます。私は特にマイペースなので、余計にそう感じるのかもしれませんが。
藤田和樹先生は、運動疫学がご専門で、研究室内の疫学グループを取りまとめてくださっていました。ご自身も昔はアメリカンフットボールの選手で、引退後も様々なスポーツに挑戦し、本当にパワフルという言葉がぴったりの先生です。現在はノルディックウォークの指導者もされています。私が大学院生の頃、高齢者の方を対象とした運動教室や、福島県の西会津での体力測定、いろいろな経験をさせて頂きました。西会津の冬は、雪かきの最中に、屋根から落下して来た雪に埋もれて亡くなられる方もいらっしゃるほどの豪雪地帯になります。近年では高齢化が進み、雪かきも大変だそうです。冬場は特に外に出ることが少なくなるため、身体活動量の低下を防ぐ目的で運動指導のDVDを作成し、自宅でできる運動プログラムをつくり、西会津地区の高齢者の方に配布し、実際に訪問されて指導なさることもありました。年に数回の体力測定には、研究室メンバーおよそ30名が、測定者としてのトレーニングを積み、測定手伝いとして出動していました。
大阪体育大学で学んでいた頃は、トップアスリートや市民ランナー、活動的な方の測定経験しかなかったので、最初は血圧測定1つにしても、本当に戸惑いました。ジョギング教室にいらっしゃるランナーの方々とは全く異なり、重度の疾患をお持ちの虚弱高齢者の方を測定する時は移動や測定中の補助が必要であったり、改めて気づかされることばかりでした。
ほんのわずかな経験の積み重ねによって、いざと言う時の判断力や行動力が養われていくのかもしれません。
今年度、私の担当授業であるダンスとニュースポーツ、「授業が割り当てられている」という気持ちでしたが、藤田先生から連絡を頂いてから、自身の気持ちを切り変えました。
せっかく学生のみなさんと近い位置で授業ができるチャンスでもあるので、一緒に「チャレンジする授業」を心がけています。みなさんと接している中で、部活のことであったり、疑問に思っていることであったり、いろんな話を聞かせてくれます。授業だけに限らず、素晴らしい経験でなくても構わないから、新しいことにチャレンジし、まずは、たくさんの経験の引出しを作ってほしいと心から感じています。きっと、社会に出た時、その引出しに蓄えられた経験が生かされる日が来る、そんな風に思っています。香