2014.06.28

“民間フィットネスクラブ”の仕事…

スポーツ健康科学部の卒業生の8割以上は、民間企業に就職します。以前にもブログで紹介したことがありますが、スポーツ健康科学部に限らず、ほとんどの学部において、同じような傾向にあります。
確かに、医学部は医者、6年制の薬学部は薬剤師など、一部の特殊な知識や能力を持った多くの学生がその分野の専門職に従事する場合もありますが、どの学部生も基本的には、多種多様な業界・業種から構成される民間企業に就職します。

スポーツ健康科学部を卒業した後、専門職に従事する場合、その職業は、概ね「教員」と「指導者、インストラクター、トレーナー」といえるでしょう。詳細には踏み込みませんが、広義に捉えれば、「スポーツ用品メーカー、スポーツ用品販売・小売店」や「スポーツ施設職員」、また「プロスポーツチームの職員」もスポーツ健康科学部が育てる専門職といえるかもしれません。ただ、他学部の学生が従事できない職業ではないという意味では、ちょっとややこしいですが、学部の専門性を反映した職業…ということになるでしょうか(まぁ、そんなことを言い出せば、保健体育教諭以外は、専門職ではないとなってしまいますが…)。

1期生の就職先や、他の体育系大学の就職先を見ても、“民間フィットネスクラブ”に就職する学生は、ほんのわずかです。それは、なぜでしょうか?

その理由として、いくつか考えられるのですが、まず、民間フィットネスクラブにおけるビジネス上の特性として、利益率が低いことが挙げられます。つまり、施設経営において人件費が圧迫されるため、「給与が比較的低い・安い」ということです。これは、職業的に弾圧を受けているとか、不利益を被っているというのではなく、社会における「需要と供給のバランス」に関係しています。

これほど、社会全般における健康志向が高まっているにもかかわらず、学校を中心に「教育として」スポーツと向き合い、スポーツというサービズ(無形財)を教育の一環として提供されてきた我々は、スポーツに対する投資的価値を低く見る傾向にあります。まぁ、簡単にいえば、「水と空気とスポーツはタダ…」という感じでしょうか。従って、この職業で生計を立てるには他の業界・業種と比較すると、少し厳しいという印象がもたれがちです。
ただ、最近、テレビのバラエティ番組やCMでも取り上げられているように、完全個室とマンツーマン指導によって2ヶ月でダイエットや体重減少を成功させるという謳い文句でならしているフィットネスクラブは、2ヶ月で30万円もの会費が要求されますが、消費者が求めるベネフィットを提供し、成果を出しているのでしょうが、ちゃんとビジネスとして成立しています。いまやその手のクラブは、入会待ちの消費者であふれかえっているのも事実です。

「給与が低い・安い」という印象だけでなく、“民間フィットネスクラブで働く…”ということに関する社会的認知が十分でない、または固定観念が抱かれていることも職業として選択されない理由の1つと考えられます。確かに、民間フィットネスクラブのスタッフとして働くということは、プログラムの指導をすることと同一視してしまいがちですが、プログラムの企画や開発、またその評価をすること、会員との関係性を築き、会員がそのクラブの一員であることを誇りに感じ、そのクラブでなければならないという気持ちにさせる上で、スタッフは重要な役割も担っています。
また民間フィットネスクラブの経営では、建設コストや初期投資を抑制するために、企業フィットネス(職場の従業員の健康管理)や地方自治体が主催する健康増進イベントの企画と運営、スポーツが苦手な子どもたちをサポートするスポーツ塾、介護予防、パーソナルトレーナーといった個人へのサポート、さらには、公共施設の指定管理といったマネジメント業務も民間フィットネスクラブの重要な仕事の一部となっています。

その企業が誰を対象としてビジネスを展開しているのか、またそれを踏まえて、組織がどのような成果を上げようとしているのかは、上辺や印象だけで判断できるものではありません。企業の可能性は、その組織に従事した人が創造的に生み出すものです。つまり、“○○で働く…”ということは、その組織の可能性と価値を創造することに他なりません。

そのような発想で、“働く”ということと向き合ってほしいと思います。

Jin



2014.06.27

障害者福祉センター

昨日の特殊講義の授業でゲストスピーカーをお招きしました。
大学のすぐご近所さんの障害者福祉センターの西河さんと土田さんです。

西河さんには、障害者福祉センターの沿革や活動内容についてお話しいただきました。また、実際に利用者の方が活動されている様子なども映像を用いてご説明いただきました。非常に多種にわたるスポーツ、レクレーション活動が展開されています。障がいの程度を問わず、様々な形で参加され楽しんでいる様子が伝わりました。

土田さんには、7月27日に開催されるビッグイベントである「夏祭り」の雰囲気を伝えていただきました。例年、約1000人もの方が来場され、様々な催しが企画されるようです。今年も、バンド演奏、模擬店、フリーマーケットなど盛りだくさんの企画です。

今日のお二人のお話しでは、センターでは慢性的な人手不足。利用者の方の安全性をより確保し、また共に楽しむ若い力が足りないとおっしゃっていました。今日の講義終了後には、ボランティア登録した受講生が8名いました。これはとても嬉しい。ぜひ、楽しんでほしいと思います。

夏祭りにご興味のある方は、ぜひ下記のHPをご覧ください。
http://www.shiga-fukushi-center.com/

2014.06.26

構想発表会まであと1ヶ月

6月下旬となり、大学院生の研究活動が活発になってきました。特に、M1(修士課程1年)は来月中旬に修士論文に関わる構想発表会を控えていることもあり、研究計画に頭を悩ませる毎日です。けれでも苦労するのは大学院生だけではありません。指導教員も一緒になり頭を悩ませています。大学院生の興味や特性を活かした上で、新規性が高く独創性に富んだ研究計画を立案することが求められます。「これだ!!」と思った研究内容が、論文検索をすると既に報告されている・・・こういったことはよくあることです。良い研究計画を考える上での秘訣は何か?この答えは私も知りたいぐらいですが、指導教員とたくさん話をし、頭に浮かんだアイデアを次々とアウトプットすることが重要です。残念ながら、それらのアイデアの多くは不採用になるのですが、アウトプットする中で不思議と方向性が定まり、最後には良いアイデアが浮かんでくるものです。

そのため、この時期は毎日、大学院生とのミーティングが続きます。特に私の研究室は大学院生が10名と大所帯であることに加え、卒業論文の実験を控えた学部4年生もいます。そのため、学生にとっては私とのミーティングの時間を確保することが必要となってきます。アポイントをしっかりと取らないと、研究計画の相談に来たにも関わらず他の学生への指導の先約のため対応できず・・・といったことが起きてしまいます。ちなみに、授業や会議、研究指導、出張などのスケジュールはGoogleカレンダーで公開していますので、それらを確認した上で学生はミーティングの連絡をしてきます。特に、ゼミ生のSくんはこのスキルに長けており、私以上に私のスケジュールを把握しているように感じます。このスキル、他の学生にもぜひ見習って欲しいところです。

構想発表会まであと1ヶ月、大学院生の奮闘に期待をしています!


2014.06.25

ディベート大会(1回生基礎演習)

こんにちは。Ma34です。

 

今日の基礎演習は、先週の準備を踏まえてのディベート大会でした。

私の担当した教室では、二つのテーマ

 ①土曜日授業の導入に賛成か、反対か

 ②小学校に携帯電話をもっていかせるべきか、否か

について、肯定派・否定派に分かれての対戦となりました。

 

今日、二つの対戦で一番面白かったのは、①、②の対戦の雰囲気の違いです。

①では、教育、学力といったキーワードが思いつきやすく、具体的な根拠としての情報が得やすいテーマだったこともあり、文部科学省のHPで得られる調査結果を駆使しながら、両チームとも非常に説得力の高い主張を行っていました。とてもレベルの高い対戦でしたが、勝利したチームは、土曜日授業を復活させようと滲ませている(肯定派に近い立場の!?)文部科学省のHPにおいても自分たちの否定派の意見を補強する調査結果や記述を見つけ出して説得的に主張していたことが決め手になったようです。聞いていてほんとうに面白い対戦でした。

 

②は、身近なテーマに思えますが、根拠を提示しながら論を進めていくという意味では、少し難しいテーマだったのかと思います。途中のやりとりでは、少し揚げ足取りのような意見も出てきていましたが、うまい例え話を入れたり、ダーウィンの進化論を引き合いに出して、社会も教育も変化していくべきなのだ!と携帯電話を持っていかせることに賛成する意見もありました。否定派からは、携帯電話を持たせたくない保護者目線に訴えかける具体的な商品も提示され、具体的な議論ができていました。

 

どのグループも、発言者が固まることなく、それぞれが役割を持って参加していたのが印象的でした。ゼミナール大会にむけて、資料を調べること、根拠を示して主張すること、そして堂々と発表することのよい練習になったのではないかと思います。

 

3回生、4回生のゼミでも、ディベートをやってみようかな・・・と新たなアイディアも。また実践した時には報告したいと思います。

 

Ma34.

2014.06.24

急性と慢性

Haasyです。

晴天の昨日は、アイコア内に小鳥が訪れておりました。
今日はいませんでした。
え?どうでもいい?
アイコア内に設置されているハイスピードカメラだったら造作もないでしょうが、
私のバカチョンで動きの速い鳥を激写するのは大変なんですよ!笑

さて、今月の後半はGOTO先生のブログにもあったように、私も高校訪問や大学進学説明会があり、行って参りました。
高校訪問では大阪茨木キャンパス(OIC)近くの高校にも訪問したので、時間を見つけてOICにも立ち寄りました。

来年4月開校ですので、まだ写真のような建設途中ですが、どのようになるのか、楽しみです。


大学進学説明会では、職員の2jiさんと一緒に大阪に行って参りました。
やはり高校生の皆さんはスポーツの関心が高く、部活の様子や、学業との両立などの面での質問が多くありました。
2jiさんが大活躍で、丁寧に説明されていました。

本日は朝からゼミで実験でした。


皆さんは「運動トレーニングの効果」と言った場合、「トレーニング」の時間(期間)をどのように感じますか?
また、「運動」に意識がいきますか?「トレーニング」に意識がいきますか?

例えば、単回の「運動」(1時間のランニングとしましょう)を行った場合、心拍数や換気量が上がり、発汗も増してくるでしょう。
筋収縮にはエネルギーも必要なので、糖や脂肪をどんどん燃焼して、エネルギーを作っていきます。
これは運動という刺激に対して、生体が急性に適応している状態だといえます。
この場合、「運動」は脂肪燃焼を高めているわけです。
でもこれは急性適応(反応)です。

一方、「トレーニング」というと、慢性的、継続的な時間感覚となります。
例えば、1日1時間のランニングを週3回、半年間継続する・・・といったように。
この場合、生体は継続的な運動トレーニングに対して慢性適応していきます。
エネルギー代謝に関して言えば、筋肉が「脂肪を燃やしやすい」状態に変化する、つまり筋の代謝特性(性質)が変化するわけです。

このように、私たちの身体は1回1回の運動に対して急性反応(適応)を示し、それが継続する(積み重なる)ことによって、慢性適応(身体の性質の変化)を示すのです。

今回は、上記のような概念のなかで、急性の刺激が生体にどの程度の急性反応を惹起することができるか、をみようとしたものです。
解析結果が楽しみです。

あっ、上述は「基礎理科」のテストにも関連しますよ。。。


2014.06.23

ラボミーティング

昨日は、朝9時半から夕方にかけて、研究室の院生、ポスドクの先生方に集まってもらいラボミーティング(研究室ミーティング)を行いました。毎週、修士、博士と分けて研究の進捗は確認していますが、研究室メンバー全員が顔あわせる機会が少ないため日曜日に全体のラボミーティングを開催して、研究室メンバーが行っている研究の相互理解を深めるとともに、研究計画、研究データのディスカッションを行いました。海外滞在中の【栗】先生にもスカイプで参加してもらいました。学部の4回生の【Yo香】さん、【純】君も積極的に参加して、ディスカッションにも加わっていました。

 全体としてみれば、メンバーの研究が順調に進捗しているのが確認でき、かつ学部生、前期課程の院生にとっては、議論の視点も学べたラボミーティングとなりました。

<<今週のちょっと、もっと、ほっとな話>>

高校インターハイの地区予選が行われる時期になっています。先日、西京極陸上競技場に、近畿地区予選を見にいってきました。その中で、試合を終えたチームが、円陣を組んで指導者からのコメント(訓辞)を受けているのみました。生徒たちは直立して、言葉を聞き逃すまいと指導者の方を直視していました。牽引型のスタイルを感じました。一方で、リラックスした雰囲気で生徒へアドバイスしている後押し型の指導者も数は少ないですが見かけました。指導スタイルと教育効果(短期、長期)について考えを巡らす機会となりました。

【忠】

 

 


2014.06.22

スポ健な人 (8)

本格的な梅雨に突入していますが、
皆様、いかがお過ごしですか?

今週も、スポ健で頑張っている学生を
紹介したいと思います。
今回、紹介する学生は、yuririn さんです。

yuririn さんは、愛媛県出身で
後藤ゼミ所属の現在三回生です。
マラソン大会に出場する一方で、
成績優秀者として西園寺奨学金も得ている
文武両道の学生です。

そんな yuririn さんにインタビューです。
Q: 「普段頑張っていることは何ですか?どんな大会に参加しましたか?」
A: 「今は特にフルマラソンに力を入れて、日々トレーニングに励んでいます。
  その過程で、学部で学んだスポーツ科学の知識を実践に活かせるように努めています。
  また、大会はロードレースを中心とした、市民マラソン大会によく参加します。」

Q: 「どんなことをスポ健で勉強していますか、特に興味がある分野は?」
A: 「競技力向上のためのトレーニングから健康増進のための運動など、
  幅広い分野を勉強しています。
  その中でも、自分が好きな陸上の長距離については、特に興味を持って勉強しています。」



Q: 「将来の目標・夢を教えて下さい」
A: 「自分が記録向上に努めるのはもちろん、ランニングの素晴らしさを
  より多くの人に伝え、実践してもらうのが夢です。
  現在は大学の同好会の活動のみならず、社会人の
  市民ランナーの方とも交流しています。このつながりを広げて、
  心も体も健康になってもらいたいと思います。」

Q: 「後輩・高校生へのメッセージを御願いします」
A: 「私は『長く楽しく幅広く』というのをモットーにしています。
  自分がやりたいこと、やってみたいこと、積極的にチャレンジしてください!」

yuririn さんには、怪我に気を付け、これからも
文武両道の学生生活を貫いてもらえることを願っています。

それでは、また。失礼致します。
良い休日を。


2014.06.21

市民社会における“行政”の役割…

キャリア形成科目「スポーツ健康科学セミナーⅡ」の授業において、本学のOBで、内閣官房企画官の高木秀人氏をお招きし、「市民社会を形成するための行政の役割」と題する特別講義をしていただきました。高木氏は、現在、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室で、大会を成功に導くための仕組みづくりをする仕事に携わっていらっしゃいます。


2013年9月7日に開催されたIOC総会で東京が開催都市に選ばれた後、1週間足らずで、下村文部科学大臣が東京オリンピック・パラリンピック担当大臣となりましたが、1964年の東京五輪、札幌で開催された冬季五輪の際にはいずれも担当大臣の発令が開催都市決定から2年後であったことを事例に取り上げ、2020年の東京大会開催に対する国の思い入れや期待の大きさについて説明されました。


ちなみに…

1998年に開催された長野五輪の際には、担当大臣は発令されなかったとのことです…。





























「東京でオリンピック・パラリンピックを開催する」ということの重みと、それにともなう国民の暮らしと国益を守るため、国が壮大な仕組みを築き上げなければならないと実感したのは、上図のスライドに示されるように(見にくいですが…)、競技力向上にかかわる文部科学省だけでなく、非常に多岐に渡る省庁の協力や連携が不可欠であるということです。


オリンピック・パラリンピックという華やかな舞台を演出するために、サイバーテロに対する防止対策、外国人選手や観光客を受け容れるための入国審査と受け入れ体制の整備、また日本文化の振興や観光事業との連動など、多岐に渡るだけでなく、非常に緻密な作業を、今後、国は整備する必要があります。安倍首相が「あと7年もあるではなく、あと7年しかない…という気持ちで大会開催に臨まなければならない」と述べられたようですが、首都東京で大会を開催することの重みがこの発言からも理解することができます。


高木氏が講演中に、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の開催に向けて、普及・啓発活動の一環として、教育プログラムを実施するとなれば、どのようなことを考えなければならないかを、学生に10の質問形式で問いかけられた内容を見ても、国や地方自治体といった行政が熟慮し、検討すべきことが幅広く、緻密であるかをうかがい知ることができます。


問1.普及・啓発の教育プログラムを実施する際に、公立小中学校で、通常の体育の授業とは別に、独自のスポーツ関連の授業を行うべきか?

問2.どのような教材を使用するのか?(教科書検定の問題)

問3.誰が教えるのか?(教員免許との関係、大学の教員養成課程、中学校の教科担任制など)

問4.教える教員の資質向上はどうするのか?(教員研修の問題)

問5.授業時数の確保はどのようにするのか?(土曜日、7時限目…)

問6.独自授業により、減らす教科の扱いはどうするのか?(学習指導要領との兼ね合い)

問7.教育プログラムにおける中学校や高等学校などの上級の学校への接続はどうするのか?

問8.生徒の転入・転出の扱いはどうするのか?

問9.保護者や住民にどのように説明するのか?(教育のアカウンタビリティ)

10.改めて…普及・啓発の教育プログラムを実施する際に、公立小中学校で、通常の体育の授業とは別に、独自のスポーツ関連の授業を行うべきか?


「仕組みを考える…」という行政の仕事が、いかに縦と横の連携なくしては成し遂げられないということを象徴するような問いかけだと痛感させられます。


ちなみに…

問9まで熟考して、「では、やならない…」という選択はナンセンスであるというのが高木氏の見解です。


行政の仕事は奥が深い


Jin


 

2014.06.20

抽象的⇔具体的

担当しているクラスの1つにスポーツ指導実習(水泳)があります。
受講生自身の泳力を向上させることよりも、他者の泳力を含む水中運動を向上させるための指導法を学びます。
どの指導実習でもそうですが、その種目に対する自身の能力と指導力は正比例するのか?が議論になります。
皆さんはどう思われますか?「競技力の高い人=指導能力の高い人」でしょうか?人それぞれ考え方は異なると思います。ただ、その種目が怖かったり嫌いだったり苦手だったりすると指導はできないと言えるのではないでしょうか。ですので、指導能力の向上に重きを当てている指導実習ですが、自身の泳力向上にも視点を置くことになります。どの程度というバランスが難しく、担当の教員は皆このバランスに苦労しているのではないかと思います。

さて、いろいろな種目の中でも、水泳に関してはこの「怖い」という意識を持っている人が多くいます。
それは、やはりこれまで受けてきた水泳の授業やスイミングスクールでの出来事がトラウマになっているのではないでしょうか。
実際の指導場面を想像してみてください。以下の言葉(指導)はどうでしょうか?

「Aさ~ん、怖くないですよ。怖がらなくていいですよ?」
「もっと力を抜いて~、力を抜いてくださ~い。」
「もうちょっと高い位置です。でもあまり高すぎないでください。」
「すごい、すごい、すごいですよ。」

このような言葉がけで、指導者が意図したことが伝わりAさんは上達するでしょうか。私なら、、、
怖くないなら苦労してないぃ。
力抜けるなら沈んでないわぁ。
高いってどの程度高くすればいいの。分からないわぁ。
すごいって何がすごいの。社交辞令?

これは、私がひねくれているわけではないと思います。多くの、特に泳げない・泳ぐことが怖い人は、このような感覚を持ちます。泣きそうになりながら、同じような言葉で訴えかけてくる人もいます。
では、どのような指導がAさんをの怖さを軽減し、力を抜かせ、明確な高い位置を決め、すごい個所をAさんの中に定着させるのでしょうか。そういう指導のあり方を授業で共に考えていくことを目指しています。

指導法の数には限りがあり、それはあくまで手段です。人が変われば、環境が変われば使えなくなるものもあります。それは一つの道具でしかありません。その道具をアレンジし、どんな人にもどんな環境にも適応させることができる、これが「指導能力」です。ぜひ、指導法を活用できる指導能力を培ってほしいと思います。





2014.06.19

高校生からの質問

先週のブログでは、高校生に対する模擬講義を話題に取りあげました。ブログ掲載の翌日、予定通り兵庫県内の高校に伺い1・2年生の生徒に対して60分間の模擬講義を行いました。高校の教室での講義は久々でしたが、皆とても熱心に話を聞いてくれました。講義の冒頭では「スポーツ健康科学」という学問領域について、具体例をあげながら説明をしました。また、「体育学部」「スポーツ科学部」「スポーツ健康科学部」の特徴や違いについても解説をしました。講義前は「スポーツ健康科学部=身体を動かす、保健体育の先生の養成」という限定的なイメージをもっていたようですが、講義を受け良い意味での驚きがあったようです。

高校訪問やオープンキャンパスなどにおいて、高校生や保護者の方々から「スポーツ健康科学部は理系学部ですか?」「スポーツ科学に興味はあるのですが、理系科目に不安があり学部での学びに対応できるか不安です」といった質問や意見を頂くことは少なくありません。確かにスポーツ健康科学部での学びの中には、「理系の要素」が多く含まれています。また、私は「スポーツ科学コース」に所属しており、その点では「理系」領域の教員です。ただし、スポーツ健康科学部の教員すべてが理系領域を得意にしているわけではありません。私自身、中~高を通して理系科目が苦手で苦労をしてきました。それでも「理系」領域の教員として大学で講義を行い、研究者としてもそれなりに頑張っています。このような自身の経験もふまえ、「スポーツ健康科学部での学びは文理融合であり、必ずしも理系科目の得意な学生のみが集まるわけではありません」という話をよくしています。それでも「やはり理系ですよね」と質問を受けた場合には(どうも理系学部という回答が欲しいようです。。)、「どちらとも言えませんね。強いて言うならば、体育系ですね」と半分冗談で応えています。

帰りの電車の中で、今回出会った生徒達のことを思い浮かべていました。「今回の模擬講義が進路選択に少しでもプラスになったのか?」「日々の勉強や部活動に積極的に取り組む上で良い刺激になったのか?」こればかりは本人達でないとわかりませんが、私にとってはとても有意義な時間でした。1年後あるいは2年後、私の愛する「スポーツ健康科学」の世界への進学を選択肢の一つに加えてもらえれば嬉しい限りです。