スポーツ健康科学部・大学院スポーツ科学研究科の教育研究棟であるインテグレーションコアと隣接している教室棟のラルカディアの設計・施工は、(株)竹中工務店によるものです。
先週のゲストスピーカーには、インテグレーションコア、ラルカディアのプロジェクトに関わったメンバー4名(設計・永井さん、施工・遠藤さん、営業・安田さん、人事・小谷さん)によるリレー式の講義でした。皆さん、自分たちが関わった建物で講義をすることに感激されながらお話し頂きました。
最初に、人事に小谷さんから会社概要から経営理念、ビジョン、ならびにプロジェクトの流れの説明があった。(株)竹中工務店の経営理念は、『最良の作品を世に遺して社会に貢献する』です。「最良の」という形容詞は、品質第一主義を貫くという決意を示しています。また、建築物を「作品」と表現しているのは、1つ1つの仕事に対する高い誇りと作品主義とまでいわれるこだわりを表している。これまでの作品群には、東京タワー、東京ドーム、梅田スカイビル、空港などなど都市のランドマークとなっているものばかりである。この経営理念をビジョンとして表現したのが、『想いをかたちにする』である。実際のプロジェクトは、①企画提案(設計・受注)、②着工・竣工・引き渡し、③アフターサービス、となっている。
営業の安田さんからは、建設業界の特徴、営業活動のプロセス、そして今回のインテグレーションコア・ラルカディアの事例、やりがいについてお話し頂いた。建設業界の特徴は、①完全受注産業(あらかじめ作り置く商売でなく見えないものを売る)、②一品生産(目的・状況が個別的)、③投資額の大きさ(ビッグプロジェクト)である。そのような業界での営業活動のプロセスは、①建設情報の入手、②顧客ニーズ・課題の把握、②顧客ニーズ・課題を解決する方法の提案、にまとめられる。特に必要なのは、ニーズをかなえられることを信用・信頼されること、信頼関係の構築が一番である。今回のインテグレーションコア・ラルカディアの場合、非常に短い工期であるが、①開学に間に合わせる、②多様な出会い・居場所の空間、③環境がニーズ・課題であった。この仕事(営業)のやりがいは、①自分の仕事が形に残る、②様々な業種、立場の人たちとつきあえる、③社会・経済の流れを肌で感じることができる、ことにある。
設計の永井さんからは、インテグレーションコア設計のコンセプトの説明が冒頭にあった。そのコンセプトは次の通り。
Symbol キャンパスのシンボルとして
Flexibility 自由度の高い施設
Interaction 交流(人・もの・情報)
Creativity 可能性を拡げる教育環境
Nature 風・水・光・緑を取り込む
このコンセプトを実現し、図面に落とし込む作業に許された期間はわずか5ヶ月(通常であれば1年は必要)。極めて短期間でありながら、見事にコンセプトを盛り込み、仕上げてくれました。おそらく極めて睡眠時間が短い状況が続いていたのは想像に難くない。永井さんは、「先生の想いをかたちに」ということで、打ち合わせの中で議論した内容、我々の想いを見事に表現してくれました。その想いは、
・愛着の持てる ・思い出となる ・卒業しても訪れたくなる ・できるだけオープンな ・学部のコンセプトが分かる ・講義しやすい教室 などなど。もちろん、「学生の想いをかたちに」もしっかり取り入れてくれました。設計段階から、竣工まで毎週のように打ち合わせしたのを思い出し、極めて厳しい条件の中で、数学者のように最適な解を出して頂きました。
施工の遠藤さんからは、さらに厳しい条件にさらされていたことを伺いました。与えられた工期は10ヶ月で、同程度の建物の標準工期の70%。単純に計算すると、毎日の労働時間を3時間多くするか、作業効率を40%上げるかしないと工事が完了できないくらい厳しい工事であった。作業所の業務には、品質管理、原価計算、工程管理、安全管理、環境対策、対外交渉がある。短期間の工事のため工程管理には一番神経を使った。作業には、協力会社66社、10ヶ月間で延べ37,746人の協力があった。この工事関係者・協力者の工程の割り振り、そのまえの関係づくり、コミュニケーションが何よりも工事をスムーズに進めるのに必要である。私は何度も建設中の現場にお邪魔してお話しさせてもらいました。遠藤さんの人柄が工事関係者のチームワークを良くしていたのを感じていた。そのおかげで、見事に工期通りに竣工してもらい、事故もケガもなく見事に、「想いをかたちに」して頂いた。
授業の最後に、求める人材像について、会社のHPやオフィシャルなものではなく、それぞれの言葉で人材像を語ってもらいました.
営業・事務については、「誠実」「熱意」「コミュニケーション」「グローバル」
設計の永井さんからは、「やりたいことがある」「ひとの想いを引き出せる」「自分の考えを表現できる」「仕事が好き」
施工の遠藤さんからは、「行動力」「リーダーシップ」「変化に対応(柔軟性)」「人が好き」「ものづくりが好き」
今回も聴講してくれた【仁】先生は、いたく感動して、「全ての教員に聴いて欲しかった!」とのコメントをもらいました。非常に厳しい条件でありながらも、我々の、関係者の「想いをかたちに」してもらったプロジェクトには多くのドラマが詰まっていました。
最後のコメントで、講師の皆さんへお礼としてお話ししたのは、「我々の想いを見事に実現した作品(建物)を頂きました。その作品の中で、我々が掲げた教学理念を体現する人材をしっかりと育てます。卒業の時には、是非お越し頂いて、理念通りの人材になっているかみて頂きたい。」
我 々の共通する想い(教学理念)を込めながら、学生・院生を「卒業生という素晴らしい作品」に仕上げたい、とさらに意識が強まる講義を頂きました。(株)竹中工務店の皆様、ありがとうございました。
(写真左:完成予想模型を大切に運んでくれてありがとう)
【忠】