[ 2025年06月 ] の記事一覧

2012.05.28

もじゃコーチ

20120528.jpg先週の「スポーツ健康科学セミナーⅡ」では、京都サンガFC ホームタウンアカデミー コーチの加藤祐貴子さんにゲスト講師をお願いしました。本学のサービスインスの卒業生で、学生時代からサッカーに熱中し、膝の前十字靱帯断裂、そして大学のときにサンガでインターンシップを行ったことがきっかけで、現在の仕事に進まれました。

 現在の仕事は、サンガの普及(サッカーだけでなく、ファンの拡大、こどもの将来への関わり)です。そのための理念は、人々の夢と幸福を実現、スポーツ文化の創造・進行、地域社会の進歩・発展です。

 また、事業として行っているスクール事業は、まさにサッカー教室(こどもからおとな、女性まで)、サッカーキャラバン隊(巡回サッカー教室)、サンガつながり隊 ~こどもがまんなかプロジェクト~など、多方面にわたっており、元気でたくましく、たくさんのお友達とそとで遊んで欲しい、という願いとともに行われています。

 加藤さんが実際の指導の解きに気をつけていることは、次の通りです。

・声かけ(ほめる、楽しく、名前で呼ぶ)

・考える時間(自分たちで考えせせる)

・安全の確保

・給水

・無理矢理やらせない

 

 加藤さんのヘアースタイルは、独特のもじゃもじゃ頭です。「もじゃコーチ」との愛称で呼ばれているようで、こどもたちに印象づけるために、もじゃもじゃのヘアースタイルをしているとのこと。プロの指導者意識を感じました。

 講義の後半では、日本の女子サッカーの目指すものについても語っていただきました。「なでしこジャパン」と呼ばれているのは、皆さんご存じですね。その「なでしこらしさ」とは、①ひたむき、②芯が強い、③明るい、④礼儀正しい ということが込められています。なでしこジャパンの選手の清々しさの理由が分かります。

 もじゃコーチの加藤さんから、サッカー好きの少年少女がたくさん誕生し、その中から「なでしこジャパン」「サムライジャパン」が育っていくでしょう。

 

<<今週のちょっと、もっと、ほっとな話>>

トロントに来ています。ダウンタウンから北へ延びているヤング通り(yonge street) は全長約1900kmある世界最大の「通り」と認定されているようです。本州の全長が約1300kmですので、広大な土地を感じます。

【忠】

 

 

 

 

2012.05.27

サイクル・サッカー

 先週は久しぶりに、大阪府南部にあるM大学に行ってきました。関西学生サイクル・サッカー春期リーグ戦の第3ラウンドが開催されたからです。室内自転車競技(Indoor Cycling)の学生連盟の会長を務めています。
 あまりなじみのない、マイナーというよりもリトル・スポーツと言った方がふさわしいかもしれません。10年少し前は、京都地区でも立命、同志社、龍谷、京都産業、京都大に選手がおり、大学クラブ活動が継承されていました。今はどこも、休業か閉店という状況です。現在、関西・西日本で、桃山学院、大阪、関西、大阪経済、日本経済の5大学、関東で、東京工業、中央学院の2大学が、現役学生のクラブ活動を継続させています。なかでも、大阪大学、東京工業大学は部員数が多く(30数名)、レベルも上げてきています。様々な競技の経験者が、高校時代の帰宅部生も含めて、大学から始める人がほとんどです。少数ながら、考えてスポーツする人たちの集まりです。

 高校でこの競技に関したクラブをもっているところは皆無です。だから高校生やスポーつ健康科学部に入ってきた学生の皆さんでも知らないのは、まさに当然かもしれません。余程の引き込みがなければ、なかなか気軽には取り組めない「奇妙さ」をもっていますし、特殊な自転車とボール、ゴール、サーフェスを必要としますので手軽ともいえません。第一大学内で行っているところがほとんどなく、観る、聞く、触れる機会が圧倒的に少ないはずです。
 古くから行われているとはいえ、多くの人たちには「ニュー・スポーツ」なのかもしれません。

 室内自転車競技は、サイクル・サッカーとサイクル・フィギュアの2つの競技から構成されています。前者は自転車に乗り、2人対2人で、前輪および後輪でボールコントロールし、ゴールを奪いあう競技です。後者は自転車に乗り、一人もしくはペアやトリオで、ざまざまなバランス・ポーズや一輪走行、スピン等々の技のできばえを競う競技で、ちょうどフィギュア・スケートに似ているからそのように名づけられています。

 写真は、上がサイクル・サッカー(ワールドカップ戦の様子)、下がサイクル・フィギュア(日本の第1人者、芦田・堀井選手、草津市在住、のペア演技の様子)を紹介しています。雰囲気を想像してみてください。

soccer2.jpg
 サイクルサッカーに関して、この競技の発祥はヨーロッパ。1891年頃イギリスに於いてサイクル・ポロが考案され、競技として発展し、1918年頃ドイツ、フランスでフットボール(サッカー)用のボールを使用しての芝生サイクルサッカー競技へと発展。そして、より機敏な自転車操舵ができ、しかも天候に左右されない現在の屋内サイクルサッカーへと発展してきました。
 1927年に第1回ヨーロッパ選手権大会がドイツのケルンで開催され、さらに1930年には、国際自転車競技連合(UCI)の公式競技となり、同年第1回世界室内自転車競技選手権大会がドイツのライプチヒで開催され、第2次世界大戦による中断を経て1949年から再び世界選手権大会が開催されるようになり、現在に至っています。

figur4.jpg
 我が国ではおおよそ次のようであった、と日本室内自転車競技連盟は短文を掲載しています。
『1967年、海老沢清氏と野本誠一郎氏が中心となってサイクルサッカー開発研究委員会を日本自転車競技連盟内に正式に発足。競技様式が日本でもなじみのあるサッカーに似ていることから「サイクルサッカー」という日本独自の競技名を命名、サイクルサッカーの組織が固められました。普及に際し、日本競輪学校、日本学生自転車競技連盟、南関東自転車競技会の各団体に技術指導の役割を要請、1968年初の一般と学生の為の合同練習を実施、その成果は1969年、東西8大学の参加による日本初の全日本大学サイクルサッカー選手権大会として実を結びました。
 1972年には初めて世界選手権大会へ選手を派遣、Bグループ第3位の成績を残し、その後は毎年世界選手権大会へ選手団を派遣・・・』
http://www.jfic-japan.com/soccer.html
日本室内自転車競技連盟


 試合方法は次のようです。
 センターマーク上に置かれたボールを、主審の合図で先攻側の1人がボールをキックしてプレーが始まり。手はハンドル、足はペダルから離してプレーしてはいけません。但し、自陣のペナルティーエリア内に前後輪とも入っているときは、キーパーとして自由に手が使え、パンチングやキャッチもできます(但し、2人同時に入ると反則)。また、転倒または足がペダルから離れて床に着くと落車と見なされ、プレーを続けると反則となります。落車した選手は、自陣のエンドラインまで後退し、ライン外の床へ車輪を出すことで再びプレーに戻ることができます。その他のルールは普通のサッカーとほぼ同じです。
 反則となる行為は、特に難しいものはなく、相手を押す、押さえる、危険な行為、大声を出す、などです。サッカーと同じように、フリーキック、コーナーキック、ペナルティーキックが行われますが、コートがフェンスで囲まれているためボールを置く位置が若干異なります。
試合時間は、休憩2分を挟んだ7分ハーフ、ギア比が1対1でペダルは軽いが連続する立ち上がりでかなりハードです。

 私が関係しているから身びいきで、そう言うのではありません。この競技はボールゲームズの1つとしてはきわめて単純な構造の部類に入るものです。だが、運動学習や運動動作の教授学習研究の素材としても興味あるところを多くもっています。次回以降、機会があれば、またその一端をお知らせしたいと思います。


【善】



2012.05.26

+Rな人

先日、スポーツ健康科学部のある学部生と話をした際に、「スポ健の先生は親しみやすい」という話題になりました。確かに、学部生が教員の個人研究室を訪れ、質問や相談をしている光景は至るところで目にします。


私の研究室にも様々な学生が訪れます。
授業でわからなかった箇所を質問しに来る学生、スポ健での今後の学びや将来に関する相談に来る学生、勉強用の資料や本を借りにくる学生、ただ最近あったことを話して帰っていく学生、土足OKの部屋ですが、礼儀正しく毎回必ず靴を脱いで入室する学生。。。。本当に多様です。その他、「英語の論文を紹介して下さい」といったことを言ってくる積極的な学部生もいます。あと、個人的に嬉しいのは、自分が関わる部活動やサークルでの体力トレーニングのメニューを相談に来てくれる学生。学部での授業を通して、「授業で学んだことを部活や自分自身のトレーニングに導入しよう」という、積極的な姿勢が強く感じられます。こういう時は、どんなに忙しくても思わず仕事そっちのけで対応してしまいます。ちなみに、各教員は「オフィスアワー」という時間を設けていますので、この時間を有効利用することも1つの手です。


さて、話が変わって、「立命館学園通信」最新号の「+Rな人」として、私の研究室のM嶋くんの記事が掲載されています(スポーツ健康科学部HPのトップページからぜひご覧下さい)。

彼は関東のサッカーの強い大学を卒業し(彼はサッカー選手ではありません)、大学院生として私の研究室に入ってきました。実は彼を紹介して下さったのは大学院時代の私の恩師で、幾つかの偶然が重なり立命館を受験し、最初の大学院生になってくれました。今年度からはさらに高度な研究を行うべく、大学院博士課程に進学しています。彼の優れたところは、「真面目に地道に努力を続けること」です。そして、その努力の量に応じて、着実に成長しています。その姿は、後輩大学院生にとても良い影響を与えています。


来週からはアメリカスポーツ医学会(ACSM)が始まります。スポ健の多くの教員や学生が参加し、私も研究発表を行ってきます。次回のブログはサンフランシスコからアップしますので(時差の関係でアップを忘れるのが怖いですが・・・)楽しみにしていて下さい。

GOTO

2012.05.25

縦と横のつながり

 先日、今年度よりアイスホッケー部の部長を拝命?したのを機に、2012年度立命館スポーツフェロー懇親会に出席してみました。正直、それまではこのような組織の存在は知らなかったのですが、「立命館スポーツフェローは、立命館大学体育会に所属するOB・OGで構成され、その行動目的は、学校法人立命館の教学方針に則り、立命館大学当局と一体となって現役を支援し、立命館スポーツの振興を図り、母校の更なる発展に寄与するものである」といった立命館スポーツフェロー憲章を持ち、その前身を含めたら三十年以上の歴史を有するとのこと。目的は、「立命館大学の教学方針に則り、後輩の体育活動に協力し、もって母校の発展に寄与する」ことであるとの紹介の挨拶がありました。

講義の中で体育会クラブなどの組織力を語ったりするのですが、現役選手の活躍を願い、それを支えるOBOGの熱意を強調しています。材質(糸)にこだわらず、また見てくれの華やかさでなく、縦糸と横糸が隙間なくしっかりと結ばれた布のように、現役とOBOGとのこころのつながりを深める"出会い"が大切であり、そのきめ細かさと数の多さがしっかりとした丈夫で大きな布となるように、強固な組織となっていきます。

会の最後、応援歌を歌っている出席者の五体からはほとばしるような熱気と、ある種のすさまじさを感じました(老ブロガー・ハP1020111.JPGP1020083.JPGル)。













2012.05.24

太陽

 Hama です。
今週は日本中の話題となりました【金環日食】
の主役(月が主役かもしれませんが・・・)【太陽】です。

ここで質問!!
人間と太陽はどちらが輝いてる(エネルギーを多く出している)と思いますか?

「そんなの太陽に決まっている!」と答えるでしょうね。。。
でも、体重(重量)あたりでは、どうだと思いますか?

しばし、計算にお付き合い下さい。

2SUN.jpg













つまり、人間の安静時ですら、太陽の7000倍のエネルギーを出しているのです。
ましてや、人間が運動すると、安静の10倍以上のエネルギーを出しますので
太陽の70000倍となります。

つまり、人間の方が輝いているのです!!

先週、「次回は、無酸素運動のお話をしたいと思います。。。」と言いましたが
来週こそは、無酸素運動のお話をしたいと思います。。。

【Hama】






2012.05.23

MRI実習(基礎演習)

こんにちは。ma34です。

月曜日の金環日食はみなさんご覧になられたのでしょうか。
我が家も、長男(小2)に「太陽もみえる下敷き」という黒い下敷きを買いまして、
それを家族で争いながら譲り合いながら 世紀の天体ショーを味わいました。
(とっても、1限の授業があったので、金環になったと同時に家を出発したのですが)
長男はやっとこういう天体の仕組みについて理解してきたようで、
今回のイベントは彼の知的好奇心をうまくくすぐったようです。
私たち大人も、意外と知らないことがたくさんあります。
周りの事象に興味を持って過ごすと、毎日が楽しくなるのだなと感じた月曜日でした。

さて、今日は水曜日。
またですが、基礎演習の取り組み紹介です。
本日は、浜岡先生、栗原先生にお世話になりました。MRI実習です。


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クラスの半分ずつ、浜岡先生の講義を聴くグループと、実習グループで分かれました。
浜岡先生からは、MRIの仕組みについて、わかりやすく説明していただきました。
とくに文系の人は(私も)、難しいのだろうなと先に壁を作りがちですが、
プリズムや虹の話からラジオ波を説明してくださったりと、例がわかりやすく理解しやすかったと思います。
また、実際のMRIを代表者一人が体験しながら、機械や画像の説明を栗原先生よりお聞きしました。
大きな音にびっくりしながらも、研究用に学部が持っているので、みなさん活用しましょう!という説明を受けると、「おお、使ってみたい!」との声が上がっていました。

少しお疲れ気味の人もいたり、質問がなかなか出ず、栗原先生から「質問力をきたえなあかんな」とご指摘いただきましたが、
実際の高度な設備を体験することで、これからのみなさんの学びにとってよい刺激を得られたのではないかと思います。

お二人の先生に加えて繰り返しいいますが、こういう高度な設備がそろっているのは恵まれているんです!!
ぜひぜひこうした設備をうまく活用して、学びを深めていってくださいね!

2012.05.22

最近のこと

ゼミのOBの結婚式があって、この前の土曜日に岐阜まで結婚式に行ってきました。
無口なゼミ生だったけれど、いまだに無口なまま。
ちょっと遠かったけれど、楽しかったです。

さてさて、今日の話題は社会科学について。

社会科学って、どんなことを指すと思います?

これはあくまでも私自身の考え方ですが、
(いろんな人のいろんな意見があります)
社会科学は、社会について分析をして、その上で一般化をしていく、
ということになると思います。

ところで、「社会」とは何を指すのでしょうか。





この「社会」という言葉には、いろんなものがこめられています。
社会を構成するのは「人」ですし、
その「人」が集まれば「コミュニティ」になります。
そして「コミュニティ」としての大きな単位で「国家」もあって、
「国家」が集まれば「世界」になります。

このような社会の構造や現状、そして社会のあるべき姿、
というのが社会科学のテーマです。

そのため、人によって、またその人の描くユートピアによって、
その社会の在り方と言うのは多様なものになります。

例えば格差社会と言われていますが、
格差は良いことなのでしょうか、悪いことなのでしょうか。

人によっては、格差があるからこそ乗り越えるためにやる気が出る、という人もいれば、
格差は本来あってはならないものなので、格差は是正されるべき、という人もいます。

この違いがユートピアの違いです。
そのため、社会科学で捉えられる現実は一つの姿であったとしても、
それを見る人の視点としては、複数の形が存在します。
そのため、正解が一つではない、というのが社会科学の特徴です。

正解が一つでないと言っても、全てが間違いではなく、
それが違いである、というだけで、多様性の中の存在になります。

ちょっとややっこしいかな。。。

つまるところ、こんな曖昧な世界が社会科学の世界になります。

これ以上は、長くなるので、やがてどこかで。

ではでは。

PS:ゼミで飲み会に行くと、たまに恋愛話になります。
そんな時のメモが携帯に残っているのですが、意味不明のことが多く。。。
確か、誰だか当てるぞ!と言ってメモを残すのですが、要点以外はわからず。
この前も附属とか、英語は真ん中、とか残っていたのですが、なんのことやら。。。
という小さい字コーナーでした。

2012.05.21

「健康運動指導士」の仕事

先週のスポーツ健康科学セミナーⅡのゲスト講師に、医療法人 康生会クリニック 今井 優氏をお招きしました。今井さんは、体育系学部を卒業後された後に、医療関係の職場に着かれました。健康運動指導士ならびに心臓リハビリテーション指導士の資格をお持ちで、現在の所属先のクリニックで患者さんの運動療法に携わったり、後進の指導にあたったり、この分野の専門書を執筆したりされています。

20120521.JPG 健康運動指導士の養成は、1988年から始まり、現在まで24年経過しています。今井さんはその初期の頃に取得されました。ご存じのように、2006年に健康づくりのための運動基準2006、運動指針2006が出され(田畑学部長が深く関わっています)、「運動」というキーワードが国民の健康にかかせないものとして示されました。その後、「メタボ」という言葉が流行するように生活習慣病の概念が広まり、2008年から特定健診・保健指導が導入されるようになりました。

 このような中、健康運動指導士の役割と認識も高まりつつあります。ただし、今後、医療機関を含め、民間の運動指導施設などで、さらに需要を高めるためには、「健康運動指導士」の認知と期待を高める必要があり、そのためには従来以上の能力を持った若い人材が求められる、と今井さんは強調され、「健康運動指導士」養成認定校である本学部の学生に大いに期待を語ってもらいました。

また、今後の健康運動指導士への期待として、①コミュニケーション能力、②楽しませる、③地域の特性の配慮、④学術面でのスキルアップが求められる。スポーツ健康科学部の強みは、「運動」指導が適切にかつ楽しくさせられること、ということも質疑応答でお話し頂きました。今井さんありがとうございました。

本学部からこのような能力を備えて、社会、国民の健康に貢献する「健康運動指導士」が巣立つことを楽しみにしております。

 

<<今週のちょっと、もっと、ほっとな話>>      

今朝は「金環日食」が観られました!

 

20120521-1.jpg

 

【本日】真田先生NHKに生出演! 「Rの法則」 18:55~19:25

是非、ご覧下さい。

 

【忠】

 

 

 

 

 

 

 

 

2012.05.20

期分けを考える

 日常的に経験する色々なことがらからフーッと浮かび上がってくる、仕事としての思考に関して、ここ2回くらいは書いています。
私は家から百メートル位に田園が広がる所に住んでいます。先週前半から夜間の様相が急に変わってきました。玄関前の側溝には「シャーッ、ポチャッ、シャーッ」と、速くて不規則な水流の音が起こっています。田圃への水の引き入れと田植えとが始まったのです。それと同じ頃、「ゲロ、ケロ、ゲロ、ケロ」と蛙の鳴き声が一斉に響き渡ります。前の準備期間とは全く異なった田圃風景(昼間)と音声情況(夜間)にガラリと相が移行しました。

 

 運動の学習や練習と関連してすぐ頭に浮かんできたのが、「期分け」という言葉です。「鍛練期→移行期→準備期→第1試合期→移行期→第2試合期→・・・」あるいは「導入期→反復・固定化期→応用・洗練期→・・・」などと、前の段階がつぎの段階に移行、あるいは相を転換していくことです。
今の状態をもたらしている要因の相互の働きが落ち着いたままでは、次の段階には移行しません。いつ、どの様な要因を、いかに(既存のものにとって代わるのか、それとも既存のものと結びつくのか等々)働かせるかが主要な問題です。学習や練習をサポートしコントロールする「スポーツ教育」の分野にとって、これら1つひとつが重要な議論の対象ですし、それらを内包する「期分け」という語は、この分野の基本概念の1つと言えます。

 

 「期分け」という語や考え方に私が初めて触れたのは、45年ぐらい前の高校1~2年の頃、陸上競技マガジンという雑誌を通してでした(ずいぶん古い話で、恐縮です)。当時のソビエト連邦のN.G.オゾーリン(モスクワ体育大学教授)とA.O.ロマノフ(IOC委員)が編著者となって編纂された『スポーツマン教科書』(後に、岡本正巳訳、加藤橘夫・広田公一・平田久雄校閲、講談社、1966.5として刊行)が、同誌に分割翻訳で連載されました。当時クラブ活動で少し齧った程度ですが、自分達が行っていることを理論的に考えることができる参考書だ、という強い気持ちをもったことを覚えています。

SIMG_7683.jpg 1964年の東京以後、68年のメキシコ・オリンピックに向けてスポーツ科学研究が急激に胎動する状況で、本書は纏められました。編著者は、日本語版への序文で次のように言っています。「競技者諸君は自分が何を、何の目的で、なぜ行うのかを十分に知り、理解し、自分のトレーニング計画の作成、運用に積極的に参加する必要がある。」「今日ではコーチ、医師、学者と協力して、スポーツマンが自分自身や強化方式に意識的に、合理的に対処することがスポーツにおいて大成しうる唯一の道である。」
同書のなかでは自然科学の知識はもちろん、大小の組織に関わる行動指針などが教示・解説され、

要するに文理融合の具体的方策が多く議論されています。
 これと同じ趣旨で、上記教科書の執筆者として参加していた、マトヴェイエフが下記のテキストを刊行します。自然科学の研究者と同じぐらいの規模で社会学や心理学、教育学の研究者が参画して、より一層緻密に仕上がっていると言えます。
L.P.マトヴェイエフ著、江上修代訳、川村毅監修『ソビエトスポーツ・トレーニングの原理』白帝社、1985.

 

 さらに、「期分け」を正面にすえ、トレーニング科学の知見を総合的にまとめたテキストが、次に示すものです。
T.O.ボンパ著、尾縣貢・青山清英監訳『競技力向上のトレーニング戦略ーピリオダイゼーションの理論と実際』大修館書店、2006.
 これは、様々な競技、欧米のトレーニングに関する実験的知見をあてはめても、十分耐える議論の枠組みを理論的に提供していると言えます。

 

 大雑把に20年ごとに、「期分け」を内に含む、理論的テキストに出会ってきたと私は感じています。従って、システムの目的・目標とそれに加わる要因の働き方・働かせ方、システムの状態とその様相が転移していくプロセスの記述の仕方が、大きな共通の課題だと感じます。スポーツ教育は、様々なスポーツ健康科学の各論の成果や知見に支えられ、かつそれらを統合、総合する実践的理論を築いていく分野だと思います。スポーツ健康科学部の学生の皆さんやこれからこの分野に進出しようと考えている高校時代の皆さんには、機会があれば、現在では古典とも言うべき最初の2冊には、ざっと目を通して欲しいと願っています。

 

【善】

 

 

2012.05.19

研究プロジェクト

今日は研究の話をしたいと思います。

大学の教員は同時に研究者でもありますので、普段の授業以外の時間を使って、研究を行っています。私の研究室には現在大学院生が6名います。それぞれの大学院生がオリジナルの研究テーマを持ち、日々研究に取り組んでいます。また、私自身も複数の研究課題を持っていますので、研究室では年間を通して、常に複数の研究プロジェクトが進行していることになります。


研究の実施手順は分野によりさまざまでしょうが、私が専門とする「トレーニング科学」の領域では、まず研究テーマを大雑把に決め、その後はこれまでに実施されてきた研究内容を細かく調べ、「何がわかっていて、何がわかっていないのか?」を明確にします。次に、具体的な研究計画(実験計画)を立案し、まずは少人数で予備調査(予備実験)を行います。予備実験で想定したような結果が得られれば、そのまま本実験へと移行します。そして、本実験が終わればデータの分析・解析を行い、結果をまとめ、関連する学会で発表をし、論文としてまとめる・・・・といった流れになります。これらをスムーズに進めることができるようになるには、相当の訓練(修行)が必要です。


スポーツ健康科学部の1期生は今年3回生になり、各研究室に所属しています。私の研究室にも12名の学部生が所属しています。3回生にとって「研究」というはまだまだ不慣れなものですが、今、少しずつこの世界に足を踏み入れてもらっています。先ほど説明したプロセスで実際に研究を実施し、その成果を発表する・・・・小規模の研究プロジェクトですが、自分達で考えたオリジナルのプロジェクトをグループで推進してもらいます。ぜひ楽しみながら、研究の醍醐味を体感しながらプロジェクトを完結させ、その中で、「課題を解決する実践力」を身につけることを願っています。


ちなみに、これから、「食事を急いで食べるとお腹が減りやすくなるか?」ということを検証するプロジェクトがスタートします。例えば、アイスクリームを急いで飲み込むように一気に食べるのと、ゆっくり味わって食べるのではその後の満腹感の維持に差がみられるか?これを神経内分泌(ホルモンの分泌)の面から検討します。アイスクリーム好きにはたまらない実験ですね。詳細については、またこのブログで紹介できればと思います。


GOTO