[ research ] の記事一覧

2018.12.21

「が」と「の」の話

こんにちは、嶋村です。今年もあと少しになりクリスマスが終わるとあっという間に正月になって、また一年が始まりますね。今年は僕にとってあまりいい年ではなかったので、来年は良くなって欲しいと思っています。


さて、先週は研究会で三重大学に行ってきました。三重大学は僕がアメリカから帰って来てから最初に勤めた大学で一年かしかいませんでしたが、若手の言語学者が多く今でも時々友達と研究会を開いて今お互いがやっている研究を話し合っています。


今回は僕が発表担当だったので、先週書いたように新幹線でスライドを作りながら名古屋経由で三重大学に行って来ました。ちなみにどんな話をしたかと言うと、多分みんな興味無いでしょうが(笑)、日本語の主格・属格交替という現象について話して来ました。「なんやねんそれっ」ていう声が聞こえてきそうですが、例えば、「(昨日太郎が買った)本」のような関係代名詞(丸括弧で囲った部分)の中の「が」(主格)が「の」(属格)に随意的に交替する現象を指します。なので「昨日太郎の買った本」とも言えるはずです。他にも交替できる環境はあるのですが。。。さてこのような文法現象は日本語に限ったものではなく、例えば、トルコ語、ウイグル語、サクハ語などのいわゆるチュルク諸語の言語だけでなく、南米で話されているケチュア語やグアムあたりで話されているチャモロ語にも似たような現象があります。「「が」が「の」に替わるのがなんなんだ」って言う声も聞こえてきてそうですが、この違いは言語学的に非常興味深いもので、これまでたくさんの研究者がこの現象を研究してきました。まずこの現象が面白いのは、上代日本語の痕跡が見られるところです。皆さんは古文で「係り結びの法則」という文法を習ったことがあるとおもいます。「か」などのある一定の助詞が名詞にくっ付けば、動詞の活用が已然形になったり連体形になったりするやつですね。現在日本語はそのような文法を持っていないとされていますが、上代日本語では係り結びが起こっていた関係代名詞のような構文の中にその名残を見ることができます。例えば、伊勢物語で、「男の、着たりける狩衣の裾を切りて、歌を書きてやる(男が、着ていた狩衣の裾を切って、歌を書いて送った)」という一節があります。上代日本語では、関係代名詞のような文の中で今の「が」に相当するものは「が」と「の」のどちらでも現れることができました。「が」や「の」がくっ付くの名詞の意味や特性などによってどちらにするか決まっていたということらしいですが、昔の日本語は「が」と「の」の区別ががなく主語マーカーとしても所有マーカーとしても両方が使えたようです。現代でもちょっと古い表現で「誰(た)がために(誰のために)」とか言ったりすることがありますよね。現在では「が」が主語マーカー、「の」が所有マーカーと完全に住み分けでができています。誰も「大幅にバスの遅れた」とは言いませんが、関係代名詞のような一部の環境では、「大幅にバスの遅れた理由」というように今でもそれが出来ます。ちなみに一部の九州方言は「大幅にバスの遅れた」みたいなのが言えるそうです。不思議ですね。ちなみに最近の若い人はどんどん主格・属格交替ができなくなってきているようです。言語は変化してきますからね。もしかしたらこのブログを読んでくれている人の中で「大幅にバスの遅れた理由」が受け入れられない人がいるかも知れません。


まあ、こんな感じで他にもたくさん不思議なことはあるのですが、今日はこの辺にしたいと思います。さて、主格・属格交替の論文を今書いているのですが、この論文から旧式の樹形図のパッケージを使っています。言語学では、言語の構造を表すために樹形図を書くという話は以前したと思いますが、LaTeXには樹形図専用のいろいろなパッケージ(アプリみたいなもの)があります。最近ずっと tikzqtree(か forest)というのを使っていたのですが、どうも形が気に入りませんでした。いろんなことができて非常に描写力の高いパッケージなんですが、形がダサいので今回から旧式の qtree に戻しました。今週の写真ですが、左が tikzqtree で右が qtree。皆さんはどちらが好きですか?(笑)できることは減ったのですが、シンプルでいいかなって思ってます。て、この話をしたのはブログに載せる適当な写真がなかったからです(笑)


ではではまた。

2018.12.19

第9回 スポーツ健康科学部ゼミナール大会 FINAL!!

こんにちは。

今日は、スポーツ健康科学部の1回生たちが、この秋学期を通して
取り組んできた基礎演習の集大成、
「スポーツ健康科学部ゼミナール大会FINAL」でした。

今年で9回目です。

「FINAL」では、先週の分科会で、
「スポーツ科学部門」「健康運動科学部門」「スポーツ教育学部門」
「スポーツマネジメント部門」そして「英語部門」のそれぞれから
選ばれたファイナリストたちがそのプレゼンテーションを競いました。

 (Apollo)20181219-01

内容は確かに粗削りではありますが、それは当然のことです。
大学に入って、初めてみんなでチャレンジした論文の作成なのですから。

しかし、テーマの設定や、目的を明らかにするための方法は、
とてもユニークで、「なるほど、面白い」と思わせるようなもの
がたくさん見られました。。

 (Apollo)20181219-02

研究は、どの分野の研究でも、自然科学でも人文社会科学でも、
どんな方法の研究でも、量的研究でも質的研究でも、社会に貢献するもの
でなければなりません。

そのためには、社会を知り、問題を見つけ、それを解決することが
必要です。

そうであってこそ、人々の幸せの実現に役立つことができます。

しかし、実は、これらの姿勢は、学生諸君が社会人になっても求められる
ことなのです。

多くの学生諸君は、いずれ、就職し働くことになりますが、社会に存在
するあらゆる組織は、それぞれの領域を通じて、社会に貢献する存在です。
言い換えると、社会に貢献する、すなわち、人々の抱える問題を解決し、
ニーズに応えることなくして、顧客を得ることはできません。
顧客を獲得できなければ、利益を上げられず、健全な財政運営は不可能で、
消滅するしかありません。

すなわち、社会人になるということは、社会の組織の一員として、
人々をハッピーにする一翼を担うということなのです。
また、誰もが「生き甲斐」「働き甲斐」を得たいと考えますが、それは、
自分の仕事が社会に貢献していてこそ感じられるものなのです。

いくら給料が高くても、それだけではむなしいものですよ。

そのためには、社会を知り、問題を見つけ、それを解決することが必要で、
ほら、これは論文を書く、研究するプロセスと全く同じです。

ですから、1回生のみなさんには、スポーツ健康科学部での勉強、研究を
通じて、単に知識を身に着ける、ましてや卒業に必要な単位を取るため
だなんて、近視眼的なことを考えずにでっかいスケールで日々の
学生生活を送ってほしいのです。

これは、スポーツ健康科学部のすべての教員の願いです。

今日書いたことは、ゼミナール大会の舞台裏で、ハッシーこと、橋本先生と
語り合っていたことを私の言葉で述べさせていただきました。
橋本先生、有意義な会話をありがとうございました。

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最後の写真は、私の担当するクラスから優秀賞に選ばれたグループのみんな
との記念写真です。
みんな、ええ顔してますね。
アカデミックアドバイザーの裕也君、栞奈さん、ありがとうございました!!

Apollo

2018.12.14

Beamer とゼミナール大会の話

こんにちは、嶋村です。今日はいつのより早めの更新です。なぜそうなったかと言いうと今日は今から出張で研究発表しに行くからです。そしてゆっくりそのことについて書きたいのですが、もう行かないといけないしまだスライドができてません。あはは。。。いつも学生には早め早めの準備をと言っているのですが。。。


しかし心配無用。今日のトークは今書いている論文の一部なんですが、僕は前にも言った通り LaTeX を使っていて、TeXShop でその論文のコードを別のファイルにコピーしてちょこちょこっといじるだけで「あら不思議」とスライドに変わってしまいます。LaTeX で作るプレゼン用のフォーマットは Beamer というんですが、文書クラスを \documentclass{article} から \documentclass{beamer}(\ と出ていますが、これはバックスラッシュです)として、あとは適当に消したり足したりしてフレーム分けするだけでそれなりのものが出来ます。僕ぐらいになると多少ギリギリでもそれなりのクオリティのものができるわけですね(笑)。というわけで新幹線の中でちょっとスライド作りしたいと思います。


ところで発表といえば、今週ゼミナール大会の分科会がありました。僕は英語部門の審査を担当しておりまして、参加してきました。まあ月並な言い方ですが、頑張っているところもあればイマイチなとこもあって、結局いろいろでした(笑)。けど頑張っているグループは本当に良かったと思います。僕は自分が1回生の時にこんな風に発表できたかというと疑問です。。。


ちなみに今日の写真はその様子です。来週はファイナルだそうで、分科会を勝ち上がったグループが発表するということで、それにも僕は参加します。。。朝早いけど。。。


あ、そろそろ行かないと。。。すみません、今日はこの辺で。


2018.12.09

贅沢な時間

前回のブログで紹介した通り、今週に入りオーストラリア・マードック大学のGirard先生が学内に滞在され、様々な活動をしています。来日後1週間が経過しましたが、ブログで紹介したいことがあまりに多すぎて困っています(笑)。

今回の招聘期間中、研究室でのミーティング(Lab meeting)を6回予定しているのですが、第1回目ではGirard先生とスポ健のMitsuo先生(前日にバイオメカニス関係の施設案内をお願いしました)に講演をして頂きました。当日は、研究室以外の教員や大学院生も参加し、活発な議論となりました。特に、Girard先生が紹介されたフランスの女性ラグビー選手に対する低酸素環境での高強度トレーニングの動画は衝撃的で、最先端の研究結果がトレーニングの現場に活用されていることに感銘を受けました。

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また、一昨日からは今回の招聘の目的の一つでもある大学院生の研究発表が始まっています。一人あたり30-40分程度の持ち時間で、英語でプレゼンテーションと質疑応答を行います。まず最初は博士課程3回生の大学院生が担当したのですが、博士論文の執筆などで忙しく準備期間が十分に取れない中でもしっかりとした発表+質疑応答でした。質疑応答において、Girard先生からの立て続けの質問に返答する様子は博士論文の口頭試問に近いものがありました。明日からはいよいよ博士課程前期課程の大学院生の発表に移行します。新たに、国内外から共同研究者も参加してくれますので、議論がより一層活発になることを期待しています。

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その他にも研究室で実施している実験に参加してもらい詳細を説明したり、予備実験を一緒に行いその方法論からデータまでディスカッションをしたり、研究者としてとても濃密な時間が流れています。大学院生との個別ミーティングはGirard先生、大学院生、私の3名で行うのですが、Girard先生と大学院生が対面で座り、私は側方から支援します。一人あたり1.5時間程度、これまでのデータや今後の研究内容を説明した上でディスカッションを行います。実験データの解釈に加え、本運動前に行うウォーミングアップにおけるプロトコールの根拠も説明も求められ、大学院生にとって最高の経験(トレーニング)になっています(そして同時に私の勉強になっています)。また嬉しいことに、教育的な配慮も随所に感じられ感謝をしています。明日以降もイベントを多数用意していますので、もうしばらくの間、この贅沢な時間を満喫できそうです。

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さて、金曜日にはライスボールセミナーが開催され、大学院博士課程3回生のChihiroさんが発表を行いました。ライスボールセミナーはスポ健以外の他研究科の教員や学部生、職員も参加が自由で、毎回1人が研究内容などを紹介しています。Chihiroさんは「運動と食欲」に関わる大学院で実施をしてきた研究の一部を紹介したのですが、上手なスライドの構成でした。たとえば、彼女の研究では主観的な空腹感や満腹感を視覚的評価スケール(VAS法)を用いて数値化します。この方法では紙に10cmの横線を引き、空腹感については左端が「お腹がまったく減っていない」右端が「お腹が減っている」と定義し、その時点でのお腹の減り具合に応じて縦線を引き、左端からの距離によって空腹感を数値化します。この分野では国際的に使用されるきわめて一般的な方法ですが、他分野の方にとっては「運動前後で主観的な空腹感を評価した」と言われてもよく理解できません。ChihiroさんはVAS法の手順を実際に使用する記録用紙を用いて説明した上で、データの一部を紹介してくれました。聞き手に応じて説明の方法を柔軟に変えるその姿をみて、「力をつけたなぁ」と感じました。

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明日からの1週間も楽しみです。

GOTO

2018.12.08

「みるスポーツ」から「するスポーツ」へ


東京国際フォーラムで開催された
ワールドマスターズゲームズ2021関西(WMG2021)の
シンポジウムに参加してきました。
WMG2021関西は、2019年から始まる
ゴールデンスポーツイヤーズの最終年に
関西開催される世界最大の生涯スポーツの国際競技大会です。

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シンポジウムは、まず、WMG2021関西の
木下博夫事務総長のご挨拶に始まり、
鈴木大地スポーツ庁長官による
「生涯スポーツ社会の実現について」のご講演、
Jen V. Holm国際マスターズゲームズ協会事務局長による
ワールドマスターズゲーズの紹介と続きました。
パネルディスカッションは、
上智大学の師岡教授がコーディネーターを務められ、
パネリストには、
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会から
伊藤学司財務局長、
元衆議院議員の杉村太蔵氏、
オリンピックメダリストの朝原宣治氏、
そして、百獣の王、武井壮氏が登壇されました。

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我が国では、メガスポーツイベントの開催により、
スポーツ実施率の向上が期待が寄せられています。
しかしながら、シンポジウでは、
大規模な国際的スポーツ大会を開催するだけでは
スポーツ実施率は上がらない、ということが繰り返し強調されていました。
これは、メガスポーツ大会は
「機会を創出するだけである」(Preuss, 2015)
という学術的な視点と一致するものです。

東京2020など「スポーツをみる」ことで得る「感動」を「感動」で終わらせず、
「みるスポーツ」から「するスポーツ」にするための施策が必要で、
シンポジウムにご登壇された皆さんは、概ね30歳以上であれば
「だれでも選手として参加できる」というWMG2021の特徴を活かし、
選手として積極的にWMG2021に参加される意欲をお持ちのようでした。

ご登壇された日ごろテレビに出演されている方々は
「みるスポーツ」から「するスポーツ」へつなげること、
WMG2021関西の認知度を上げるために
ご自身の役割をしっかり果たしていこうと、
大変熱心に語られていました。

写真はシンポジウムの様子
撮影:ゆ
写真の無断転載はご遠慮ください


#周囲にWMG2021の参加希望者が増えてきました
#講演内容は日経新聞に掲載されます
#WMG2021


2018.12.03

実証実験

先週の土曜日、BKCにて、遠隔操作による自動車の走行実験がありました。
この日は、補講日で、キャンパスには学生さんも大勢いましたので、注意喚起のコーンが並べられ、大勢のスタッフが安全管理のため配置されていました。

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運転席を覗いてみると誰も座っていません。助手席には、安全担保のため実験者が乗っていましたが、実際に車を運転しているのは、少し離れた建物の中にいる人。いわゆる画面を見ながら(周囲の状況を見ながら)、テレビゲームのような操作にて、遠隔操作で自動車を走らせています。

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もちろん、公道ではなく、キャンパス内の閉じたところでの実験ですが、将来的には、遠隔での自動車運転、完全自動運転の時代がやってくるのを目の当たりにしました。

テクノロジーは、サイエンスの裏付けが必要であるとともに、そのテクノロジーが社会に実装されたときに、社会全体、社会システムがどのような影響を受けるのかについてのデザイン思考が必要になっています。さらに加えれば、人の五感に迫るアートの発想も求められる時代であると感じます。

スマートフォンが誕生したのが、2003年頃。社会の仕組みが急激に変化したのを実感しています。車の自動運転、遠隔運転で、どのように変わっていくのか?興味とともに、その影響にも注意を払っていく必要があります。

<<今週のちょっと、もっと、ほっとな話>>
先日、MITメディアラボの石井教授のセミナーを聴くことができました。
クリエイティブな力として、「独創」「協創」「競創」がある、というところが印象的でした。

【忠】

2018.12.02

海外からの研究者の訪問

この度、日本学術振興会からの支援を得て、オーストラリアのマードック大学(Murdoch University)から研究者が約3週間滞在されることになりました。本日の便で来日され、明日からインテグレーションコア内での活動を開始します。

スポーツ科学(トレーニング科学)の領域においては、研究成果を英語論文として発表し、学会の場で英語により研究発表をすることが求められます。特に英語によるディスカッションを行う力は国際的な場で研究活動を進める上で重要となりますが、年に1回、国際学会に参加するのみで十分な力を養うことは難しいというのが実情です。また、学会への参加だけでなく、海外の研究者と一緒に実験を行ったり、じっくりと時間をかけデータディスカッションをすることで国際標準での研究力を大きく伸ばすことが可能となります。確かに「海外留学」は良い手ですが、大学院生全員の海外の研究機関への留学を確約することもできません。いろいろと思案した結果、海外から本学に外国人研究者を招聘したいと考え、幸いにも今回の機会に恵まれました。

今回の招聘の最大の目的は、大学院生の研究内容に対してアドバイスやコメントを頂くということです。来日されるGirard先生とも、この点に関して意見が一致しています。私の研究室では毎週金曜日の午後に勉強会(Lab meeting)を行っているのですが、先生の滞在期間中にはこれを週2日に増やし大学院生全員に1人30分程度の研究計画の発表の機会(Progress report)を設けます。当然すべて英語で実施することになり容易ではありませんが、大学院生にとって素晴らしい機会になるだろうと期待をしています。また、共同での実験や大学院生との個別のミーティングなど、滞在期間中の日々のスケジュールが次々と埋まっていきます。私も大学院生の頃にこういった経験をしてみたかった!今の学生を羨ましく思います(笑)。

ここ最近は、受け入れに向けての細かな準備に奔走する日々でした。滞在期間中の住居、オフィスの確保、学内の諸手続きなど事前に準備すべきことが多く、限られた時間ではありましたが博士研究員や大学院生に助けてもらいながら何とか準備をすることができました。また、明日から一時的に使用する6Fのオフィスも綺麗に掃除をし、受け入れの準備が整いました。これから3週間の大学院生の奮闘ぶり(成長)は、別の機会に改めて紹介できればと思います。
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2018.12.01

SMAANZ at the University of South Australia

11月20日から25日まで、
Sport Management Association of
Australia & New Zealand学会(SMAANZ)に参加のため
オーストラリアのアデレードに行ってきました。

到着前日までは30度以上あったアデレードですが
到着日と翌日は暴風雨で、非常に寒かったです。

今回のホスト大学は、University of South Australiaでした。
アデレードの街の中心部には複数の大学が隣接しながら
集まっていました。

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SMAANZは、規模こそ小さい学会ですが、
英語を母国語とする、あるいは英語が母国語の国で
博士号を取得している、研究をしている研究者が集います。
そのため、流暢な英語によるプレゼンテーションが続くというのが
特徴の一つです。

スポーツマネジメント系の学会は、
学会最終日にConference Dinnerが開催され、
開催地のランドマーク的なスポーツ施設が頻繁に利用されます。
学会の発表が終わり、ホッとしながら帰国前日に
その都市を代表すスタジアムを見学することができる、
とても楽しみな時間です。

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今回は、Adelaide Ovalという、
主としてクリケットと
オールトラリアンフットボールの試合が開催される
アデレードを代表するスタジアムがConcerence Dinnerの会場でした。


最近スタジアム経営は多角化されており、
試合がない日に以下にスタジアムを有効利用するのか、とうことは
スタジアム系運営における一つのガキです。
Adelaide Ovalもまた、スポーツ以外のことで収益を得られるように
レストランやバーが運営されていました。
芝の質も素晴らしかったですが、施設そのものも大変快適で
お料理やホスピタリティーも
大変素晴らしく、国内外の研究者たちと充実した時間を過ごせました。

写真はアデレードの街とAdelaide Oval
撮影:ゆ
写真の無断転載はご遠慮ください。


#帰国前には快晴に
#日本との時差は1時間30分
#来年の開催地はクライストチャーチ
#今年の学会発表はこれで終了

2018.11.30

Publish or Perish

またまた、金曜日ですね。みなさんお元気ですか。僕はあまり元気ではありません。なので今日はこれで失礼します。。。


といきたいところですが、まあこれも仕事なので頑張って書きます。しかし数人はいるであろうこのブログの読者のみなさんとシェアするべき話題は特にないので、今日は少し言語学のことを書きます。だからと言ってあんまりテクニカルな話をしても仕方ないので日々我々がどのように研究成果を発信しているかを書きたいと思います。大学の先生がいったいどういう生活をしているかの一部を知ってもらうことになるではないでしょうか。


大学の先生は、授業や授業に関する仕事(成績、授業の準備、宿題の添削など)に加えて会議を含めた様々な公務を日々していますが、やはり大学の先生は研究者なので、みんな自分の研究分野を日々勉強しています(たぶん)。僕は言語学者なので言語に関していろいろ勉強して論文を書いているのですが、その成果を発表する場の一つがジャーナル(論文雑誌)というわけです。言語学にはいろいろジャーナルがありまして、僕の専門では特に MIT が出版している Linguistic Inquiry やドイツの Springer Science+Business Media 社が出している Natural Language and Linguistic Theory が有名です。僕自身あともうちょっとで Linguistic Inquiry に載るぞというところまで言ったのですが、査読者の一人がどうしても僕のデータの文法性に納得できなかったらしくダメということになりました。言語学のデータは母語話者の内省によって判断されこのやり方は批判されることもあります。しかし、いろいろ詳細は割愛しますが方法論的に問題ないとされてきたし、データの判断が合わないからという理由だけで他のインパクトを無視して落とすというのはどうかと思いますけどね。とにかく1年くらい修正と再査読をしたのに、結局ダメになったのですごく腹が立ちましたが、まあちょっと統計を使ってデータの信ぴょう性を高めてもう一度出すことにしました。また長い道のりが待っていますが。。。


というわけで一流ジャーナルに通るっていうのはなかなか大変です。あと査読者に恵まれることも必要ですね。まあどの分野もそうかも知れませんが、大御所ってのはいるわけで、すご~く個人的な意見ですが「まあこの大御所の言ってることはたぶん間違ってるよね~」的な人でも一応気を遣って引用しながらやんわり論文の中で言及しないと落ちてしまうことが多い気がします。歳をとるって嫌なこともありますね、ははは。狭い業界ですからいくらブラインドレビューでも場合によっては査読のコメントを見れば「~やな!あの**野郎!(自粛 笑)」なんてことにもなりますし、僕自身も査読をしたことがありますが、誰が書いた論文かなんとなく見当がつくこともあり、これって結構バイアスがかかってしまうんじゃないかと思いますね。


こういうストレスだらけのジャーナルですが論文を出さないと研究者として終わってしまうし、業績がいろいろなところで響いてきます(就職とか)。Publish or perish とはよく言ったものです。一方で言語学には研究者同士が気軽に論文をシェアしあうことができるウェブサイトがあります。LingBuzz というサイトでノルウェーのトロムソ大学が管理しています。科学系の論文をシェアしあう arXiv というサイトがありますが、あれの言語学版ですね。つい先日僕も自分の博士論文をアップしましたが、まだちょっとしか経ってないので割とダウンロードされているようでびっくりしました。みなさんもダウンロードできるので良かったらどうぞ(笑)(今日の写真)。もちろん LingBuzz に載せても業績としては意味がありませんが、自分の研究を知ってもらうというのも重要ですので、このようなサイトがあるのは素晴らしいことだと思います。


それでは、でまた来週。 

2018.11.27

質的研究に対する誤解

卒業論文が佳境に入った11月のある日、まだテーマの決まらない学生のやり取り。

A:どうしよう~。まだテーマが決まらない。
B:え~、もう時間ないよ。卒業できないやん。
A:そうなんだよぉ。焦るばっかりで、泣きそうになる。
C:じゃあ、インタビューでもすればいいじゃん。
B:それ、いいんちゃう?パって、話聴いてまとめたらいいやん。
A:そうかなぁ…でも、そんなんで卒論になるんかな?
C:なるよ~。
B:なると思うよ~。
A:でも、習ってないし、やり方わからんよぉ。

どう思いますか?ここには、3つのおかしさがあります。

1つ目。
11月なのに、論文のテーマが決まっていない。
もちろん、ここからの追い込みも可能でしょうが、いくらなんでも提出1か月前に
論文のテーマが決まっていないのは、どうしたものかと頭を抱えてしまいます。

2つ目。
インタビューでもすればいい。
こんな風に考えている学生は、少なくありません。
この場面以外でも、このような発言を耳にすることが多くあります。
インタビューによる質的研究は、そんなに簡単なものではありません。

3つ目。
習ってないし、やり方わからない。
みなさん、質的(定性的)研究方法についても習っているはずです。
定量的研究方法ほどの深さではないかもしれませんが、習っています。
この場合、覚えていないという表現が正しいのですが、記憶に残っていないという
事実を私たち教える側も受け止めなければいけないのかもしれません。


インタビュー、あるいは、対話を用いた定性的研究では、アンケートの回答からは
引き出せないものを引き出すという魅力と意義があります。
そのためには、熟考した質問と対話の構成・流れを必要とします。
実施中には、対話のタイミング、対話の相手の諸言動への注視と流れの変更など、
状況の変化に応じて、対話者に緊張感を覚えさせず、しかし瞬時の判断を要します。
また、分析・考察段階では、膨大な対話の逐語録の作成、その中には、言葉が出る
までの空白の時間測定までもが含まれる場合もあります。そののち、何度も何度も
逐語録を読み直し、また録音した対話を聞き返し、相手が意味することを慎重に
ひも解いていきます。また、一人よがりの考察にならないように、第三者の検証、
擦り合わせ、修正などの過程が入ってきます。

「インタビューでも」という認識をもう少し修正したいと思った会話でした。