顧客が何に価値を置き、何を必要とし、どのような満足を求めているかを知った上で、顧客が買いたくなる仕組みをつくるのがマーケティングです。
便益と価値をパッケージ化した“プロダクト(ものやサービスなど、形態的な違いを問わず…)”を顧客に届けるためには、概ね3つの方策が考えられます。
1つめは、「非差別化戦略」です。これは、1つの“パッケージ”を全ての「顕在顧客(既に取引をしている利用者・お客様)」と「潜在顧客(顧客になる可能性のある人々)」に提供しようとするものです。ものがあふれ、価値が多様化する現代社会では、顧客ニーズへの対応に課題が残ります。
2つめは、「差別化戦略」です。これは、潜在顧客を性別・年齢・職業といった人口動態特性や居住地域などの地理的特性、またライフスタイルなどの心理的特性や行動特性といった基準を用いて細分化し、そのセグメントのニーズや欲求にマッチしたパッケージを提供しようとするものです。顧客のニーズにマッチしたプロダクトを提供できる反面、限られた資源の運用やコストがかさむといった問題が残ります。
3つめは、「集中化戦略」です。これは、差別化戦略と同様の考え方と方策を用いるのですが、限られた資源を特定のセグメントに集中的に投じようとするものです。ターゲットを当てたセグメントにマッチしたパッケージを届けることができる反面、ターゲットを当てたセグメントにプロダクトが響かなければ、高い損失を負ったり、潜在顧客を獲得し損ねたりする可能性もあります。
前置きが長くなりましたが…(笑)
このような2つめと3つめの方策を用いているのが、「同窓会ビジネス」です。
参加者のニーズにマッチした同窓会を企画し、その運営を代行するようなビジネスは以前からありましたが、最近、テレビでも取り上げられている「笑屋株式会社」という企業の同窓会プロデュースは、ユニークです。
社長自身が、過去に幹事としてパーティや同窓会を企画し、赤字を出したという経験に基づき、楽しい企画を提案することはもちろん、その上、幹事が安心して、かつ参加者も「安く」会に参加できないものかと考えた仕組みが、「同窓会への企業協賛」、つまり、スポンサーシップです。
仕組みはシンプルです。
企業は、3万円から10万円程度の協賛金を支払うのですが、投じた協賛金に応じ、広告掲載だけ、広告掲載と商品サンプル提供ブースの設置、また10万円の協賛金を投じれば、広告掲載、サンプル提供ブースの設置に加えて、同窓会中に3分間のCMタイムが与えられるようです。もちろん、協賛金の大部分が同窓会の参加者にキックバックされるため、会費が少しでも安くなればと考える幹事や参加者には、ありがたい提案となります。
協賛する企業にとっては、「同窓会」ですから、参加者が同じような年齢層であるため、顧客の特性に応じたマーケティングが展開しやすくなります。例えば、ある化粧品会社では、同窓会の参加者の年齢に対応し、20歳代には、べとつきを押さえたサラサラ感を強調した商品PRとサンプル提供を、40歳代には、法令線のようなシワ、またシミを防ぐような商品PRとサンプルを提供する機会が得られます。
また40歳代の同窓会には、学習塾が協賛するようですが、学習塾は、子育てが落ち着いた主婦層に焦点を当て、塾講師の人材確保につなげるために協賛するようです。その学習塾のPRは、小遣い稼ぎや家計の支えに少しでも役立ちたいと考えている主婦の心をつかむことでしょう。
ちょっとした工夫、それが顧客の求める便益や価値にマッチし、顧客と企業の“Win-Win”を実現します。
インターンシップやビジネスコンペに参加しようとしている学生は、このような考え方やアイディアを参考してくれればと思います。
Jin