先週のスポーツ健康科学セミナーⅡのゲストスピーカーは,(株)ワコール 人間科学研究所の小山 真(おやま まこと)さんにお越し頂きました。
同社の会社理念,目標は,「世界中の女性に美しくなってもらう」です.ゆりかごからゆり椅子まで,いつの年齢でも美しい女性になるためのサポートです.ワコールは,戦後まだ和装中心の時代に,これからは「和装から洋装に変わる」との先見性から創業され今日に至っています.興味深いことは,同社の人間科学研究所の存在です.「より美しく,より快適に,より健康に」を目指して,『かたち(形態)』,『生理』,『心理』のアプローチからデータを集め,製品づくりに生かされるための研究に専心してます.これまで蓄積されてきたモニターのデータは,約4万人あり,そのうち1000名は縦断的な時系列が追えるモニターです.またフィッティングモニターは,現在,1000名いて,追跡調査可能な時系列モニターが250名います.このような膨大でかつ精度の高い計測データから,「女性の体型は大きく3つの年代で変化する」ことを明らかにしています.さらに,ヒップ,バストに関し,①全ての人が同じ順序で変化する,②変化が始まる年齢には個人差がある,③バストの下垂は20代から始まる,④いったん変化したらもどらない,という検証結果を得ています.
もちろん,体型を維持できたモニターもおられ,そのような人の特徴は,「日常的に歩き方,姿勢に気をつけている方」が多いことも分かっています.体力(筋肉,脂肪のコントロール),健康(運動,食事,適切な下着)が体型維持に不可欠です.
人間科学研究所のデータから研究開発の事例について,シャキットブラ,クロスウォーカー,CW-Xから紹介がありました.商品開発にあたっては,『ニーズ(○○したい,なりたい)』『アイデア(顧客満足)』『パフォーマンス(機能性追求)』の観点から,心理,生理,解剖,身体科学,物理,化学,統計学をベースにして,「洞察力」「創造力」「実証力」が求められることを解説してもらいました.
会社が求める人材像については,自律型人材(自ら考え行動する人材),研究所の専門職については,最終ゴールのイメージを明らかにして収集した基礎データを製品開発に役立てられる人,であること.また,会社は社員自身のキャリアに責任を持つものではなく,社員の自主的なキャリア形成を支援するというスタンスである(そのための積極的なジョブローテーション,自己申告制度,積極的な育成の「場」「チャンス」の提供).当然のことながら,社会人としての基礎(時間を守る,ほう(報告)・れん(連絡)・そう(相談)など)の無い人は,ワコールに限らず求められない人材であることも示してもらった.
今回の小山さんの講演会前に,少し時間をもらって卒業生の松野君(一時帰国中)を紹介させてもらいました.本学のサービスマネジメントを卒業して渡米し,6年間かかりましたが,米国の大学を卒業し,見事にATCを取得しました.彼が在学中に,ワコールからの受託研究の被験者にもなってもらい,そのときに小山さんとも面識がありました.人と人とのつながりの面白さを感じる場面でした(小山さんの写真の前に映っているのが松野君です).彼には,昨年,一期生の前でATCとは?について,日本語と英語で話をしてもらっていたので,ATC取得の報告に,2回生となった一期生からも大きな拍手をもらっていました.
<追加ニュース>
現在,ベルぎーのブリュッセルで,国際バイオメカニクス学会が開催されています.本学からは,【伸輔】助教,【光雄】助手,そして私の3名が参加しています.今日は,【伸輔】先生の口頭発表が夕方からあります.跳躍動作におけるシミュレーションの研究発表で国際的にも評価されている内容です.聴衆にインパクトを与える発表になるでしょう.詳しくは来週に.
【忠】