先週に続いて、ジョンズ・ホプキンス大学 (Johns Hopkins University) を通して
研究大学 (Research University) について書きたいと思います。
ジョンズ・ホプキンス大学が、「研究大学」であることを先週お伝えしましたが、
実際にどんなふうに研究が重視されているかを、
認知科学学科に所属されている Akira 先生にお聞きしました。
Akira 先生は、学部時代に、マサチューセッツ州立大学 (UMASS) に
交換留学で1年間留学され、アメリカの大学院に進もうと決心されました。
メリーランド州立大学 の言語学科で博士号を取得され、
現在は、ジョンズ・ホプキンス大学で、Assistant Professor をされています。
Akira 先生のお話では、ジョンズ・ホプキンス大学は
アメリカの研究大学の中でも研究が最も重視されている大学の一つで、
最初のスタートアップの研究資金として、かなりの額が支給されたそうです。
そのおかげで、1台500万円ほどする eye-tracker を2台と、
研究アシスタントを2名雇用でき、順調に研究を立ち上げることが出来、
大変感謝しているとのことでした。
実験用の大きなスペースも与えられ、Akira 先生の Lab は、
アシスタント用の部屋(写真奥左手)、子供用の実験部屋(写真中央奥)、
大人用の実験部屋(写真奥右手)、おもちゃのある前室からなっています。
また研究室のデザインも自分で決めることが出来、
子供を対象にした実験ができやすいようにレイアウト出来たとのこと。
本当に至れり尽くせりで、聞いていて彼我の余りの違いに気が遠くなりました (苦笑)。
ただ大学からスタートアップでかなりの金額をもらえるのは、
大学自体が、研究を投資と考えていて、それを元に研究成果を出して、
NSF (National Science Foundation) や NIH (National Institute of Health) などから
大型の研究費を獲得することが目的との事です。
ジョンズ・ホプキンス大学では、獲得した研究費の 62%! は、
間接経費として大学に徴収され、この還元された研究費を用いて、
さらに大学全体で研究を進めて、さらに大きな研究費を獲得するという好循環が出来ています。
(ちなみに全米一間接経費が高いのは、Stanford 大学で、65% との事でした。)
先週、「研究大学」を定義するならば、
「教育よりも研究が中心で、学部よりも大学院が中心の大学」と書きましたが、
授業の負担は最低限で、各学期で、学部の授業が1コマ、大学院が1コマのみとの事でした。
これはメリーランド州立大学の言語学科も同じですが、
日本の大学でこういう環境を揃えるのはなかなか厳しいと思います。
ちなみに認知科学学科の院生は、毎年3名程度で、
これまでほぼ100%アカデミックキャリアについているそうで、
さすがジョンズ・ホプキンスと思いました。
ただ研究大学ならではの厳しさも相当あって、全米一位のメディカルスクールでは、
診療も授業も担当せず、医学研究に専念している先生が多数おられるのですが、
その先生は、大学から給与は一切!支給されず、
自分の給与は獲得した研究費から払っているそうです。
そのため研究費を取れなくなると、別の業界に行くか、
他大学に移籍するしかないという、
日本の大学では考えられない厳しさです。
いかにも競争の厳しいアメリカらしいと感じました。
日本の大学も、大きな変革の時を迎えています。
日本を外から見ることで、その方向性が正しいかのどうか
非常に参考になる訪問でした。
それでは、また。失礼いたします。
良い休日を
敦
<<街でよく見かける英語表現#42>>
初代学長のギルマンが就任演説で、ジョンズ・ホプキンス大学の目的について語った言葉です。
“The encouragement of research . . . and the advancement of individual
scholars, who by their excellence will advance the sciences
they pursue, and the society where they dwell.”
「(ジョンズ・ホプキンス大学の目的は) 研究の奨励およびその卓越性により科学を追求し、
彼らが生きる社会を前進させる個々の研究者の向上(である)」
( https://www.jhu.edu/about/ )
こういう言葉にアメリカ最初の研究大学の自負が感じられます。