[ 2025年05月 ] の記事一覧

2013.03.24

中学生の運動生活は、いま

文部科学省は22日、2012年度の「全国体力調査」の結果を発表しました。中学2年生と小学5年生とが対象で、2年ぶり4回目、8種目の体力テストと運動習慣に関するアンケート調査を行っています。体力テストの合計点では、中2の男女・小5の男女とも横ばい状態でした。アンケート(複数回答可)では、体育授業を除いて運動やスポーツを「しない」または「ときたまする」と答えた子が、男子では小5(11%)・中29%)、女子では小5(22%)・中2(29%)でした。運動しない理由として、中2男子は「疲れる」(40%)、「文化部に所属」(38%)、中2女子では「文化部に所属」(70%)が突出していました。小5では男女ともに、「自信がない」(それぞれ32%、40%)というのが3番目位に大きな「しない理由」となっています。

今回調査の結果が、本調査や他のところで行われているものと比べて新奇な情報を提供しているわけではありません。けれども都道府県別の点数、順位一覧も公表されて、学校体育やスポーツ関係者の一部の人々にとっては、その結果の見かた・取り扱い方に関して思いは悲喜交々でしょう。でもどのような段階の関係者・識者も「身体を動かす楽しさを感じさせ、その大切さを分からせること」が重要との認識を共有されるだろう、と私は思います。

小学校の先生や父母、地域の人々による、多様な実践報告に接する機会は多くありますが、中学校の状況については学校差、地域差、競技種目差、等々が著しいと思われます。学校の状況(指導する先生や外部指導者の存在、顧問体制の整備、生徒の自治力量の継承、施設・設備条件、等々)によって、特別活動のクラブの部員数、活動の質(競技志向の度合い)が大きく異なります。22日付けの朝日新聞には、滋賀県長浜市の西中学の取り組みを紹介していました。同校(記事内容ではバレー部)は、体を動かす楽しさや大切さを分かってもらうために、競技力向上を目指す活動のみでない、趣味・チャレンジ感覚の子(平日のみの一緒の練習、公式戦には出ない)も受け入れるコースをつくっています。文化部でも、呼吸法の訓練や身体づくりトレーニング、あるいはバドミントン等のスポーツ・レクを取り入れているそうです。

 

高度・専門化した文化の側から子ども達をみれば、素質を早期に発見、好きになるように仕向け、早期に心身諸機能に刺激を加え、「強く、有名」にする「可能性を拡大」することです。このトラックに入る子どもの多くが何処かで、「あこがれのロール・モデル」に出合っていますし、そのことをインタビューで述べているのをしばしば耳にします。しかし一方では、ほとんどの親は、身体は丈夫で、心やさしく、他人と仲良く、責任感強く、「生きいきと楽しく」育って欲しいと願っています。子ども達も「好きでおもしろい」からそこに行くのでしょう。

運動をしない理由の調査結果「疲れる」(40%)の数値の背後にあるものとして、目的と練習・活動内容に1つの選択肢しかなく一方的適応を迫られる、それに逆らう自信も無いし、そのことで悩んでいる知りあいの話から「部活のイメージ」を否定的に形成してしまっている、等々の意識の混在した「何か運動したいけれどもしない」中学生像を私は想像します。

 

だいぶ以前ですが、中学に行ったら何かやりたい(生徒側)思いと、教科外の特別活動のもっている意義・意味を経験させたい(先生や父母側)願いとを交錯させる試み・工夫が、「クラブ全員入部制」方式として全国で叫ばれました。学校が十分な施設・設備を備えないし、顧問や指導者の準備体制を十分とれる学校はほとんどない状況でした。したがって、これらはやがて下火になっていきました。考えが生きているとしても、それは文化部の異常な膨れ上がりという結果になりました。スポーツが費用(学校の施設・設備、個人的負担)と主体的な努力(教える側、学び実践する側)を必要とする営みですから、これは当然のことであったと思われます。けれども新たな段階で中学生(あるいは中・高一貫教育校)にこのことが価値をもっていることを、先の長浜市西中学校の取り組みは教えていると思われます。

中学校で複数のスポーツを、再度手ほどきを受けて体験する子どもの数は、そう多くありません。日常の体育授業以外で平日、週末あるいは春季や夏季での機会をいかに増やすかの研究・工夫が求められていると思います。何かのクラブに入りたいという欲求で、施設の容量を超過した部員数を抱える文化部のところでも、体験・経験の中身を見直すいい機会だと考えられます。

あらゆる人間的活動の基底的部分は身体活動である、と私はよく言ってきました。音楽活動(声楽や器楽、指揮者さえも)をする人が身体を鍛えることは半ば常識です。演劇する人が発声や演技のために身体を鍛えることも、目には見えない芸術家の日常活動です。専門家による平易な紹介が一番素直に受け入れられるのは、何といっても中学生段階だと私は思います。運動やスポーツについても同様なことが言えます。

早期にかつ過度に身体訓練を施すことが、子どもを「疲れ」させています。新奇な技に取り組み、それを動作習慣化させるときに「反復」は意味をもちますが、意味を理解しないとすぐに飽きがきます。その時に叱責されても無視されても人々は、「賦活減退による疲れ」を感じます。

このようなことがら、すなわち中学生のもつ全ての「気まぐれ」に対応するのは論外ですが、授業以外の運動機会がクラブ活動にあり、そのクラブへの参加方式と内容が一律にならざるを得ない状況にこそ問題がありそうです。

 

【善】

 

 

2013.03.23

2つのアプローチ

スポーツ健康科学という学問領域はきわめて実践的・応用的ですので、研究から得られた知見の多くを運動やスポーツの指導現場に直接還元することができます。特に、私が関わるトレーニング科学の領域では、研究結果をトレーニング・運動指導の現場へ還元することが重要です。ちなみに、以下は研究を行う上での2つのアプローチです。

① 過去に行われた研究結果をもとに新しいトレーニング法を考え、その効果を検証する

② トレーニング現場で既に実施されていて効果が大きいと考えられるトレーニング法に着目し、なぜ効果が大きいかを検証する

①と②のアプローチでは何が異なるかわかりますか? ①はこれまでにわかったことを整理した上で、新たな仮説を設けそれを検証するという一般的な方法です。言い換えれば、「研究」が「現場」より一歩前に進み、新しいトレーニング法を見つけていこうという方法です。

②は全く逆で、トレーニング現場で「効果が大きいトレーニング」として既に取り入れられているが、「効果の大きい理由(効果の裏付けとなる科学的根拠)」がわかっていない場合に用います。この場合、「現場」が「研究」より一歩先に進んでおり、「現場」で感覚的・経験的に効果が認知されている方法の裏付けを「研究」で明確にすることになります。私の感覚では、過去に競技スポーツで選手として頑張ってきた学生、トップ選手のトレーニングを間近で見てきた経験のある学生は、②の方法で研究を行う優れた「センス」を持っています。

さて、明日は、学校体育の指導者の方々を対象に、「最新のトレーニング科学」というタイトルで講座を行います。研究で明らかになったことをスポーツ現場に伝える絶好の機会ですので、気合いを入れて頑張りたいと思います。

GOTO

2013.03.22

修了おめでとう!

 連日春の気配を感じられる日々が続いたのに、この栄えある修了式が挙行された20日は、まるでこれまでの2年間、研究に打ち込んできたM2の人達の健闘を祝すかのようにシャンパンの代わりに雨が讃えてくれました。お互いに競い合い切磋琢磨してきた友人、指導の情熱を燃やし続けた先生方、惜しみなく研究に協力してくれた後輩達、陰に陽に支え続けてくれた職員の方々、皆さんとの別れの時が来ました。

 これからの長い人生には、順調に事が進むこともあれば、自分の努力や意志に反して壁にぶつかったり、うまくいかないことがきっとあるかと思います。それは至極当然のことであり、この世の中が自分のためにあるのではないからです。そんな状況の時、"とりあえず"できることから行動してみることを勧めます。そして、過去の、昨日までの自分は昨日で終わり、今日が最初の日であるかのように新しい自分として行動してみること、すなわちいたずらに過去を追うこと無く、また、過去とのつながりとして未来の自分をとらえるのでは無く、それらと決別することを勧めます。このように"今一歩前へ"踏み出すことを忘れないでください。常に人生に対する前向きの姿勢を持ち続ければ、"私の時代はきっと来る"(G.メンデル)はずです。「社会の、斯界の担い手となって活躍」されることを期待しています。というよりもそれが本学で学んだ皆さんの責務でもあります。(老ブロガー・ハル)

2013.03.21

運動(身体活動)と健康についてのエビデンス(証拠)の最新版(総括)

Hamaです。

 私の担当するブログも残すところ、今回を含めてあと2回となりました。

 

 20127月に出版された、Lancetに身体不活動が、どのくらい人々の健康を害しているかについて、衝撃的なデータが出ました。

 

 今や、世界的に見て体を動かさないことは、死因の第4番目に挙げられることになりました。

 全世界の31%の人達は、最低限の身体活動量を満たしていないと考えられています。

また、17%の人達は完全な不活動であるとされています。

 

さらに、非感染性疾患(主に癌や心臓病などの生活習慣病)による死亡の6-10%は、身体不活動によるものだとされています。

もちろん、生活習慣病の予防には、体を動かすだけでは十分ではありません。でも、世界的に見てもこれだけの証拠がそろっているのですから、まずはとにかく、体を動かす工夫をして下さい!!暖かくなってきましたし。。。

 

【参考文献】

Kohl HW 3rd, Craig CL, Lambert EV, Inoue S, Alkandari JR, Leetongin G, Kahlmeier S; Lancet Physical Activity Series Working Group.The pandemic of physical inactivity: global action for public health.Lancet 2012; 380: 294-305

Hallal PC, Andersen LB, Bull FC, Guthold R, Haskell W, Ekelund U, for the Lanc
et Physical Activity Series Working Group.Global physical activity levels: surveillance progress, pitfalls, and prospects.Lancet 2012; 380: 247-257

2013.03.20

春分の日に修了式。

こんにちは。今日は春分の日ですね。
(そしてmoza先生のお誕生日ですね。おめでとうございます。
 ちなみに明日は私の誕生日です^^)

春分の日は、天文学上では「昼と夜の長さが同じ」日ということですが、
「自然をたたえ、生物をいつくしむ」という趣旨で国民の祝日として位置づいているそうです。

とりわけ私には、この日は特別な思いがあります。
(春分の日は20、21日あたりで動くので、自分の誕生日が春分の日となることも多いのです.)
3月の下旬、卒業式や新年度に向けて、別れや新たな出会いが沢山ある時期で、
いろいろな思い出が一緒に思い出されます。

みなさんも、年度の締めくくりの時期、
沢山の思い出が思い出されるのではないでしょうか。
あるいはお彼岸の中日ということで、
日本人一般に、春分の日には色々な思いがあるのかと思います。

スポ健でも、今日は大学院の修了式、大きな節目の日となりました。
みなさん、きっと色々な苦労や経験を重ねた大学院生活だったと思います。
でも、振り返ってみれば、充実したとてもよい時間だったのではないでしょうか。

春分の日は、「生物をいつくしむ」ことから発展して、「将来に向けて努力する日」という意味もあるのだそうです。

新たな未来に向けて、力強く旅立つみなさんの姿に刺激されて、
私も新年度に向けてがんばりたいと思います!

ma34.



2013.03.19

先週の金曜日には

大学で草津東高校の体育科の生徒さんによるプレゼンテーションが行われました。
なかなか元気で、表現力も豊かなものでした。
けっこう良い機会になったかなぁ、と見学しながら思いました。

さて、ここのところ、あちこちに出てばかりでしたが、
(しかも滞在時間にゆとりが全くない・・・)
ようやく落ち着きました。
これで研究ができるはず・・・と思ったら、開講まで2週間ぐらい。
余裕のない日々が続いています。

なんとなく、ぶつ切りで話が進みますが、
そろそろ内々定の話もちらほら聞くようになりました。
経団連という企業の集まった団体で、
新卒採用に関わる申し合わせをしていますが、
この団体に加入していないところでは、別スケジュールで動いていたり、
ということもあります。

就職で言うと、最近は手書きの書類が必要なところも増えてきつつあり、
なかなか大変でもあるのかなぁ、と。
昔は、ネットでエントリーではなく、手書き葉書でエントリーでしたので、
そんなことを思い出してみたり。




ふむ、書けるネタがない・・・ならば・・・

先日、ウンベルト・エーコの『完全言語の探求』を読みました。
世界を記述する試みと、現状がどうなっているのかを、
ヨーロッパの思想史を前提として述べられる、
というユニークなものでした。

それを見つつ、やはり宗教が大きな影響を与えていて、
その宗教的な背景がヨーロッパにおける科学も含んだ思想の大前提なんだなぁ、
と改めて考えさせられました。

神をあらわす「YHWH」、元は母音を抜いて記述されるヘブライ語でこのように表されるのですが、
この四文字が完全な存在である神を表します。
この言葉そのものが完全なものの一部として扱われて、
それと共に考え方の発展があったんだなぁ、と。

そうそう、現在の科学体系の元となった錬金術も、
元々は完全なるものを追求するものですし。
完全な金属としてのオリハルコンとか・・・

と、色々と思いつつ、疲れたのでこれぐらいで。

ではでは、また来週。

PS:指導していた院生が修了したり、やめたり、在学を延長したり、色々です。
みんな頑張って欲しいなぁ、と思いつつ、なかなかうまくいかない人も多いなぁ、と。
ちょっとしたぼやき、でした。。。

2013.03.18

BeActive研究会in東京

先週の金曜日に標記の研究会が、東京キャンパスで行われました。この研究会は、総合科学技術研究機構の中にある『スポーツ健康科学研究センター』を母体としており、この研究センターの研究員であるスポーツ健康科学部、理工学部、情報理工学部、生命科学部、薬学部の教員と大学院生そして、この分野に興味・関心の企業、団体、個人の方々が参加しています。今回は、BeActive研究会のプロモーションも兼ねて、一般にオープンして行いました。健康博覧会が同時期に開催中でしたが、20名ほどの参加がありました。今回の講師には、立命館大学大学院MOTmanagement of technology)を立ち上げられた阿部 惇先生に、「健康産業においてイノベーション(技術の融合・共創)により新事業・新商品・新サービスを創出するために!―産業界が果たすべき役割と教育界が果たすべき役割を視野に―」というテーマで2時間の講演をお願いしました。タイトルに示されているように、非常に幅広いテーマですが、阿部先生のこれまでの実績、経験、教育、研究の成果がふんだんに盛り込まれ、あっという間の2時間でした。この紙面では語り尽くせないので、『イノベーション』の考え方についてのみ核と、「イノベーションとは社会貢献することである」と結論を述べられ、①「こんなものが欲しかった」、②社会の課題(問題)を解決するもの、である。前者は、iPadのような製品であり、後者は環境改善の技術などが当てはまります。いずれにしても、産業界、教育界、そして地域、官が共同・共創して、新しいイノベーションを創出していくことが未来につながる、ことを改めて問いかけられた講演でした。

<<今週のちょっと、もっと、ほっとな話>>

いよいよ暖かい春になりそうです。梅も咲き、入学式の頃には桜も咲き始めるでしょう。自然とうきうきしてきます。授業も始まるので、こちらは春を待つように「ぼーっと」とはいかず、しっかり点検しながら準備を進めます。

【忠】

 

 

2013.03.17

追いコンと紙鉄砲

先週、体育会自転車競技部の追い出しコンパに出席しました。部長を引き受けてからもうかれこれ1415年が経ち、毎年同じような儀式の繰り返しのように思われます。けれども4回生にとってはもうこの先が無いところ、1年ごとに当たり前のように回生を積み重ねている下回生にとっても、これは単なるコンパとは異なる雰囲気を感じさせるものです。

 

P1020419Ssize.jpg

 今次の卒業生は4名です。個々の競技歴や競技成績は様々ですが、それぞれ4年間競技と勉強を共に行い、就活を通じて就職先を決定したり、大学院にパスしたりするのは、やはり骨の折れることがらでした。4年間の振り返りと後輩たちに残す言葉を語る際に、「やり切った」という自信と安堵、それに様ざまに感じる「仕残し感」とを、彼らは率直に表わしていました。

 

毎年新鮮な気持ちになり、褒めたり、逆に苦言を呈したりするなど決して思わず、私はむしろ通り過ぎる風のすがすがしさのみを感じます。この追いコンの時期にはいつも「紙鉄砲」を思い浮かべ、私は卒業生や現役学生にそのことを時々話します。

私たちの年代は、子どもの頃によく紙鉄砲を作ったものです。20cm余りの細い篠竹の片側穴先に湿った紙玉を詰めておき、他方の穴からもう一つの湿った紙玉を詰め、それを先端にパッキンのように布をしっかり巻きつけた棒で突いてやると、篠竹内部の空気が圧縮されて先端の紙玉が勢いよく「ポン!!」と音を発して飛び出す仕掛けです。

 

追いコンはまさにこの状況にそっくりだと私は感じます。4月からは、「勉強せよ」「練習せよ」とはだれも言ってはくれません。また大げさに感心したり褒めたりは、誰もしてくれません。そのことは、巣立っていく卒業生には、「言われなくてもわかっている」ことです。でも、2月、3月期は、色々なことを考え出来る、短いけれども素晴らしい時期です。頭の中の巡りと立ち居振る舞いはもう社会人ですが、気分感情はまだまだ学生の巣に籠っていたいという状態かも知れません。

それを、紙鉄砲よろしくお尻からポンと突いてやるのが追いコンだと、私はこれまで何回も感じてきました。これから大学主催で行われる卒業式、修了式などのセレモニーは全て、きっとそのような機能を果たしているのでしょう。でも、学生の部活・サークルでのそれは、3回生にとっても「良い巣立ち方」や「紙鉄砲の紙玉の突かれ方」を意識する、またとない機会だ、と私は思います。

 

【善】

 

 

2013.03.16

特別講義

私は普段、教員として授業を行う立場にありますので、「授業を受ける機会」は滅多にありません。

昨日は、大学院およびポスドクだった頃の指導教員であった高松先生にお越しいただきました。現在でも共同研究を行っており、その打ち合わせが主要な目的だったのですが、絶好の機会ですので研究室の大学院生や学部生に対して、「体力トレーニング論」に関する特別講義をお願いしました。そして私も、生徒として久々に先生の授業に参加させていただきました。

限られた時間ではありましたが、事前にご準備いただた配布資料をもとに、体力トレーニングの考え方や対象者・目的に応じたトレーニング計画の立案に関して丁寧にご説明いただきした。全51ページにまとめられた資料は、先生の長年の研究成果やハンドボール、バスケットボールなどのトトップレベルのレーニング現場に直接関わっていらっしゃったご経験が結集された内容でした。大学院在籍時にも同様の内容を聞いていたのですが、10年以上の時が流れ、私自身が教員となった今、当日とはまた違った感覚で勉強することができました。また、いつか将来、自分が指導をしている大学院生が大学教員になり、そこで声をかけていただき私自身が話をする機会も出てくると嬉しいな・・・などとも思いながら家路につきました。

GOTO

2013.03.15

千日の稽古を鍛とし

「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように、まだまだ寒い日もありますが、一日一日と暖かさを増し、やがてやって来るうららかな春のよい季節となり、"万物が新しい生長にいろいろな準備をしている時"がそこまでやってきていることを実感します。そして・・・・、またジョギングを再開しました。

 キャンパスでは、各運動部が合宿やら本格的な練習を始め、少しずつ活気を呈してきました。上手くなるには二つの要件があると思います。一つは今流でいうメタ認知でしょうか。来る日も来る日も単調とも言える練習を続けることの意義を考える中で、「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす」(宮本武蔵の兵法書"五輪書")のように、高度なレベルまでにある技術を習得するということは、長くかつ苦しい道のりであることを考えさせられました。

 二つ目は指導者です。上達するには有能な指導者の存在がいかに大切かを教えるものに、「伯楽ありて然る後に千里の馬あり」があります。これは、"千里を走るような名馬はいつでもいるが、多くの馬の中からその馬を見出し、選び出す伯楽(指導者)は、いつの世にもいるとは限らない。目の効く伯楽がいない限り、いかに千里の馬といえども、一生見出されることなく、駄馬並の扱いで酷使されたあげく、汚い馬小屋の中で、駄馬と首を並べて死んでしまうのが落ちである。千里の馬を飼うと一石の粟を食うかも知れないが、飼い主は知らずにそれ相応の扱いをしなければ、せっかく、千里の才を持っている馬も、十分その能力を発揮できないどころか、並以下の働きしかできないものとなってしまう(「中国・名言の知恵」から)"。個性(適性)を見抜き、その個性を活かすことは、教師の仕事にも通じるものがあるかと思います。(老ブロガー・ハル)