先週に引き続き嶋村先生のインタビューをお届けします。引き延ばしているわけじゃない、絶対。
ちなみに嶋村先生はこんな感じの方です。娘さんかわいい!!
では、前の質問に関連して…ご専門である言語学の面白さは?
言語学といってもいろんな言語学があるんですけど、僕がやっているのは「理論言語学」というものです。皆さんがおそらく人文学の一部として思っているものよりは、どちらかというと理系っぽい…たとえば、いっぱい定式があって、データを収集して仮説をたてて検証していく…というようなステップを踏んでいますので、自然科学分野に近い手法を使ってやっています。
言語というのは、ヒトの脳の特性のひとつだろうと考えています。人間の体の成り立ちというのは自然の原理に従っているはずなので、人間の持っている言語も自然界にある原理に従っているだろうという考えでやっています。
そうなってくると、いろんな言語の共通点を探すということですか?
そうですね。「普遍文法」という仮説を立てて、それをより信頼性の高いものにしていこうという試みです。
特に関心があるのが、ヒトがいかにして言語を獲得するのか?という点です。子どもは、だいたい4~5歳で大人と同じくらいの文法能力を持っているといわれています。人間の言語は、語数(単語)は有限ですが、作り出す文っていうのは無限なんです。たとえば、今僕が話している文は、今はじめて作られた文で、70年生きたとしたら毎日文が作られてすごい量になります。
そういった無限の文を作り出すシステムは、習慣形成(刺激と反応)によって作り出すことができるのかどうかを考えたり…
??その場合の「刺激と反応」というのは、具体的には?
たとえば、子どもが文を発して、お母さん、お父さんに「よく出来ました」と言われてそれを習得する、怒られたらやめる、といったことですね。
言語に関しては、あまりそういうことってない気がしませんか?むしろ、「…でちゅよ~」という言葉を使ってあえて親が子どもに寄せて行くこともあります。これは母親語というのですが…つまり、親が子どもに対して与える言語の情報というのは不完全であるということです。
しかも、「こうじゃありません」という直接否定証拠は働かないんです。たとえば、ある子が“Nobody likes me.”を“Nobody doesn’t like me.”と間違えたとする。その時、親が何回なおそうとしても子どもはなおさない。子どもは、自分でなぜこの文が間違いなのかを理解できるまではなおさないんです。
そういうことを考えていくと、複雑な文を作る能力がいつの間にか備わっていることってとても不思議なことに思えてきます。これは、この能力が生得的なものなのか(それとも、経験を経て後天的に獲得したものなのか)という問題につながってきます。
人間は、ゼロから言語を習得するのではなくて、生まれながらに正しい言語を生成するための設計図のようなものを持っていて、それを基盤にして言語を習得しているんじゃないか…ということですね。
言語学を知ったらいい事があるかどうかは…分からないですけど(笑)、人間の知性に対する見方が変わるかなぁと思います。言語って当たり前じゃないですか?勉強ができる、できないってあると思うんですけど、日本語を話すことについてはみんな天才的な能力を持っていると思います。そんなすごいことを当たり前のように出来ているということが、人間の知性というものを考えるうえで、面白いなぁ…と思いますね。
なるほど~、言語学も面白いですね!
最後、英語の先生ということで英語が上達するためのアドバイスはありますか?
う~ん…文法をしっかり理解することですね。あとは発音ですが…発音にも文法がありますからね。日本語と英語の違いを理解しておくといいと思います。
たとえば、英語の場合、子音と子音がぶつかると次の子音が落ちます。But Iの場合「バット、アイ」ではなく「バタッイ(※表現できないですがめっちゃいい発音)」ってなりますよね。日本語は子音で終わることはないので、そういったことは起こりません。
今言ったように闇雲に読むのではなく、なぜそういう発音になるのかということを理解して真似してみるといいと思います。英語のルールを知っておいて練習するのと知らないで練習するのは違うはずです。
なるほど…
まぁ、あとは自分で話すことが大事ですね。英語が上手に話せるようになるとリスニングも上達すると思います。
道のりは遠いですが頑張ります…(いつの間にか自分の相談に)
英語が話せるようになると、楽しい事がいっぱいありますよ。
…というわけで、実は他にもお子さんのこととか色々と聞いたんですが、さらに長くなりそうなのでカットです。写真でご勘弁ください。30分くらい喋っていたんですが、文字にするのは10~15分くらいが限界ですね。
他領域の研究の話はやっぱり面白いです。特に言語学者はこれまで身近にいなかったのでとても興味深く話を聞くことができました。
というわけで、嶋村先生ありがとうございました!
お手製カレーをいただいたら、また報告します。
さぁ、次は誰に出てもらおうかな。
Hitomi