[ international ] の記事一覧

2015.10.04

アメリカ便り (50): Epilogue

早いもので、夏季休暇も終わり、立命館大学では
後期授業が始まりました。
私も、先日、無事に日本に帰国し、後期授業を行っています。

この一年間の外留を振り返ってみると、最初の1ヶ月は
ビザの関係で、大学から ID カードももらえず、
ネットも使えず、家には机もなく、
段ボールを机にしながら、ご飯を食べたり、
課題をこなしたりと、かなり厳しい生活でした。

一ヶ月を過ぎると、メリーランド州立大学の様子も分かり、
大学での環境も整い、教授陣や周りの大学院生とも
関係を構築して、落ち着いて研究することが可能になりました。

この一年を振り返ってみると、本当にアメリカの研究大学が
日本の大学と比較して、人・資金・設備において、
圧倒的に恵まれた環境にあることを実感しました。
これからも益々アメリカの研究大学は、大規模に研究資金を獲得しながら、
恐ろしい勢いで、研究を推進していくと思います。

それに引き替え、日本の大学が、人・資金・設備において劣るのは否めません。
一方で、分野によっては、環境の差にも関わらず、
何とか研究の世界で海外と戦っていっている分野もあります。
スポーツ健康科学の分野も、海外と伍して戦っている分野の一つです。
海外から見ることで、スポ健の先生方の偉大さを、
これまで以上に認識することが出来ました。
これからの日本の研究は、これまでのように何でも行うのではなくて、
選択と集中をしながら、有望な分野を伸ばしていくという形に
ならざるをえないのかな感じながら、帰国致しました。
(私が研究している「言語学」の分野は、残念ながら厳しい状況です・・・)

正直経済的には苦しい生活でしたが、
本当に充実した一年を送ることが出来ました。
今回、私が、スポーツ健康科学部設置以来初めての外留、
しかも一年間も外留を行うことが出来たのは、
快く送り出して頂いたスポーツ健康科学部の教職員の皆様や、
温かく迎えて下さったメリーランド州立大学言語学科関係者、
様々な方のご協力のお陰だと感謝しております。
個々に伏して御礼申し上げます。

これからのスポ健生活では、向こうで体験してきた経験を、
授業の中で学生達に伝えていきたいと思います。
また留学に興味があるけど決心がつかないという学生の
背中をどんどん押して、留学してもらおうと思います。

次週からは、頑張っているスポ健生を紹介していきたいと思います。
それでは、また。失礼致します。
良い休日を


<<街でよく見かける英語表現#50>>
写真のコップは、Walden 「森の生活」の作者、
Henry David Thoreau の言葉が書かれているもので、
向こうで使用していました。重すぎて、
持って帰ってくることは断念せざるを得ませんでしたが、
いつもこのカップでお茶を飲みながら、勇気づけられていました。
"Go confidently in the direction of your dreams! 
Live the life you've imagined."
「夢の方向に向かって、自信を持って歩め。思い描いた人生を生きよ」


2015.10.02

幻の名著

バイオメカニクスの分野の「幻の名著」を紹介します。Winters と Woo 編著の "Multiple Muscle Systems" です。この本は当初 1990 年に出版されました。執筆陣には当時の第一線の研究者が名を連ねています。ほぼ全員がビッグネーム揃いの蒼々たるメンバーですが、一部の名前を抜き出しても、Alexander、Bobbert、 Crisco、 Ettema、 Feldman、Flash、Hasan、Hatze、Hinrichs、Huijing、van Ingen Schenau、Latash、Levine、Loeb、McMahon、Morgan、Mungiole、Pandy、van Soest、Winter、Yamaguchi、Zahalak、Zajac、といった名前が並びます。それぞれの分野を切り拓いて構築して来られた方々です。そしてその多くが今も現役で精力的に仕事を続けられています。

分野としては筋・腱・骨格系のバイオメカニクス、そしてモーターコントロールに関する書籍です。内容は非常に豊富で、私もこの本から多くを学んで来ました。また論文の中で引用されることも多いので、該当分野の論文の References をよく見ると結構な頻度でこの書籍が挙げられていると思います。正しくこの分野の「名著」だと思います。

では何故「幻」か?というと、この本は一度絶版されたのです。研究者の観点からは非常に非常に貴重な書籍ですが、当初マーケティング的に上手く行かなかったのかもしれません。いずれにしても、私が学生の頃には「非常に有名で良く引用されているけど現物が無い」という状態で、まさしく幻の名著、でした。私はどこかの図書館で借りて、コピーを取った物を大切に(無くさない様に、破らない様に)使っていました。

それが再び販売される様になったのが2011年です。何かの折に気付いて即注文しました。実際に本物を手に取った時は少し感激しました。現在からすると25年前の本ですが、内容は全く色褪せること無く、今現在の研究の為にも非常に有益な情報が山盛りになっています。開くと面白くてついつい読み進めてしまう一冊です。

それぞれの分野にこういう特別な書籍があるでしょう。そういった本は購入してじっくり読むと勉強にもなり、将来は宝物になるかもしれません。


2015.09.27

アメリカ便り (49): Colin

立命館では、いよいよ明日から、後期の授業が開始ですね。

今回も、私がメリーランド州立大学で
お世話になった先生を紹介したいと思います。
今回紹介させて頂く先生は、Colin です。
http://www.colinphillips.net/



Colin は、心理言語学 (psycholinguistics) および
神経言語学 (neurolinguistics) における、
世界的な権威の一人です。
彼の論文を読むと非常に緻密で、細かい人なのかなと思っていましたが、
個人的に接してみると、非常におおらかで、
聞けば何でも教えてくれる非常に親切な人です。

彼は、研究費をここ10年で、数十億円というレベルで獲得している
花形スターですので、大学院の授業を1コマしか担当しないのですが、
大学院生に対して、非常にフラットな立場で、同じ目線に立って、
熱心に意見を聞きながら授業を行っている姿には感銘を受けました。

私が学生時代と比べると随分少人数となりましたが、
やはり日本でも、さらに少人数のクラスにして、
お互いの顔の見える形にして、討論しながら
授業をしていくことが大切だなと改めて思いました。
(もちろんアメリカは、日本に比べて学費が高いので、
あのような手厚いケアが出来るので、
日本の大学でも、財政的なケアもしていく必要があると思います)


それでは、また。失礼致します。
良い休日を

<<街でよく見かける英語表現#49>>
Colin の授業では、学生がどんどん発言するのですが、
中には聞いていて、トンチンカンな発言や事実誤認の発言もあるのですが、
とにかくどんな発言にせよ "Go on..." と言って、
発言を続けさせるところは、いつも聞いていて、凄いなと思いました。
"Go on" がテンポ良く発せられた時は、Colin が興味のある時、
"Go on" の on の後に、少し間が空いた時は、
学生の発言が、少しトンチンカンな時と分かりました (笑)
そして合間合間に "So far, so good?" と言って、
学生が理解しているかを確かめながら、
授業を進めていくのが印象的でした。

2015.09.20

アメリカ便り (48): Ellen

世間ではシルバーウィークですね。
皆様いかがお過ごしですか。

このアメリカ便りも、そろそろ終わりに近づいてきました。
そこで今回と次回は、メリーランド州立大学で
お世話になった先生を紹介したいと思います。

今回、紹介したい先生は、この稿でも、何度か登場した Ellen です。
Ellen は、メリーランド州立大学言語学科の出身で、
現在、Assistant Professor をしています。



Ellen は、MEG (Magnetoencephalogram: 脳磁図) を用いた
言語処理研究の第一人者です。
写真の通り、いつもにこやかで、
Ellen の周りには、いつも温かい雰囲気が満ちていました。
また1歳の子どもの子育てをしながら、
論文をどんどん出版していて、本当にパワフルな先生です。

私は、彼女の Neuroscience of Cognition という授業を聴講していたのですが、
毎週のように、リーディングの課題をチェックするテストがあり、大変でした。
その上、教室に来て、学生が必死にテスト範囲を読み返していると、
黒板に、「今日のテストは、全員 5/5 (満点)よ」と
テストが無くなったことを、  笑いながら! 告げて、
我々は呆然!とするという、お茶目な一面も持ち合わせています (笑)

彼女を見ていると、本当に研究が好きな上に、
うまく研究と普段の生活のバランスを取って
生きているなと、いつも感心していました。
本当に理想的な暮らし方だと思います。
ああいう生き方が、日本の研究者にも広がることを願っています。

それでは、また。失礼致します。
良い休日を

<<街でよく見かける英語表現#48>>
彼女の授業では、質問することが求めらていましたが、
良い質問や鋭い質問に対しては、
"I love that question!" とよく言っていました。
私も、授業では、学生にどんどん質問を促していきたいと思います。

2015.09.14

ハイデルベルグ大学(ESMAC2015)


先週は、ハイデルベルグ(ドイツ)で開催された、ESMACthe European Society of Movement Analysis for Adults and Children)の学会ならびに、その学会前の臨床家をふくめたプレ学会にも参加してきました。【栗H】先生も同行でした。学会名の通り、動作解析(特に歩行解析)を中心とした研究が行われており、理学療法士、バイメカ研究者、補装具メーカーなどが参加していました。おそらく歴史的には、臨床の歩行研究からスタートしたようです。


 

プレ学会では、コンピュータシミュレーションを、研究、臨床にどのように活用するのか、そのメリット、デメリットは何か、現状の問題点・課題の整理などが行われていて、ゼミのような演習形式で進められ、参加者全体でディスカッションしながら進める形態でした。プレ学会は、ハイデルベルグ大学の大学病院内の施設を活用して行われました。待合いで患者が待っているところを通り抜け、コーヒーブレイクの場所を、患者を乗せたストレッチャーが行き交う雰囲気は、今までの学会とは違い、「現場」を意識させるものでした。

 

本学会は、市街にあるハイデルベルグ大学で行われました。このESMAC2015で、M1の「ToriP」君が、卒論でまとめた研究内容“Preferred foot strategy for sprint initiation in children”をポスター発表しました。ショートダッシュのときに、どのようなスタートをするか?ということに注目したテーマです。本格的に短距離を行っていない中学生を対象としています。何も指示せずに、スタンディングスタートをするとき、前側(もしくは後側)の足を持ち上げてからスタートする被験者の多くが、次に指示をして最初と逆足を前にするようにしても、同様に前側(もしくは後側)の足を持ち上げてスタートすることを明らかにしました。なぜ、このような前足をあげたスタートを選択するのかはまだ未解明です。人間の自然な動作かもしれません。面白い着眼点ですので、次の実験が楽しみです。詳しくは、卒論もしくは本人に聞いてください。


 

会場のハイデルベルグ大学は、1386年創立でドイツ最古の大学とのこと。ノーベル賞受賞者多数(総合ランキング20位以内)で、世界の大学ランキングでも60位となっており、ドイツを代表する大学です。歴史と伝統の風雪にさらされた落ち着いた雰囲気でした。この雰囲気は、現地にいないと体感できず、伝えづらいものですので、チャンスがあれば体験してみてください。

 

<<今週のちょっと、もっと、ほっとな話>>

ハイデルベルグ大学、ハイデルベルグ城は、ネッカー川沿いにありますが、その対岸の丘に、ゲーテも歩いたといわれる「哲学の道」があります。こちらは、京都の哲学の道と違って、急な登りが続きます。その分、対岸の眺めは素晴らしいです。急な坂を上って、対岸を眺めて思索したのでしょうか。その意味では、高強度間欠型の歩行によって、乳酸を出しながら認知機能を高めながらの思索であったのでは(このあたりはHassy先生に任せましょう)、と推察しています。

【忠】



2015.09.13

アメリカ便り (47): LGBT Friendly

大分涼しくなってきていますが、
皆様いかがお過ごしですか。

せっかくですので、今回は、日本ではなかなか見られない
学科を紹介したいと思います。
私が所属している言語学科は、Marie Mount Hall という
建物の1階にあるのですが、その2階に、
Department of LGBT (Lesbian, Gay, Bisexual, and Transgender) があります。
http://www.lgbts.umd.edu/

日本でも、LGBT という単語が聞かれるようになってきましたが、
大学レベルで、LGBT を学問として学べる所はないのではないかと思います。

また、メリーランド州立大学が、全米で LGBT Friendly な
キャンパス上位25大学に選ばれたというニュースもありました。
http://www.diamondbackonline.com/news/umd-ranked-among-top-friendliest-lgbtq-schools-for-the-third/article_e1679728-5286-11e5-a93e-d702740eb6c6.html

LGBT のシンボルである「虹」と大学のシンボルの Turtle を
組み合わせた以下のようなマークもあります。



(話がそれるのですが、「虹」の色を数えてみて下さい。
何色有りましたか?  六色ですよね・・・
「虹」なら、七色では?と不思議に思われた方もおられるのではないでしょうか。
実は、アメリカでは、日本では区別している、「青」と「藍」を区別せず、
虹は六色と考えている人も多く存在します。
この辺の事情に興味をもたれた方は、
鈴木孝夫 (著) 「日本語と英語」岩波新書、をご覧下さい)


メリーランド州立大学は、LGBT に止まらず、
人種問題も、"Black Matters" という形で積極的に取り組んでいます。

日本の大学でも、様々な人の個性に配慮した政策が
もっと広がっていくことを願ってやみません。

それでは、また。失礼致します。
良い休日を

<<街でよく見かける英語表現#47>>
以下は、Department of LGBT の HP に載っている言葉です。
"We envision the University of Maryland as a fully equitable community
that empowers innovators and agents of social justice."
「我々は、メリーランド州立大学を社会正義を革新する者と
それを司る者に力を与える真に公正な共同体として構想している。」
http://www.umd.edu/lgbt/

2015.09.11

深夜特急3

沢木耕太郎さんの「深夜特急3」を読みました。この巻の舞台はインドとネパールです。中でもカルカッタ(インド)、カトマンズ(ネパール)、ベナレス(インド)での出来事が描かれています。地図で見ると非常に広い範囲で、これを路線バスだけで移動したのか、と驚きました。ちなみにこの巻の最後のところで旅のそもそものスタート地点デリーに到着します。

私はインド・ネパールには行ったことがありませんが、この本を読みながら以前見た映画を思い出しました。

スラムドッグ$ミリオネア
2008年の映画です。第81回アカデミー賞で8部門で受賞をし、日本でも大きな話題になりました。インドのスラムで逞しく生きる少年の成長を描いた作品です。少年の生い立ちの描写と、1問正解する毎に賞金が増えていくクイズ番組の展開が絶妙にリンクされており、テンポ良く進んでいく映画でした。その中でスラムでの生活が描かれていましたが、深夜特急の中の描写はかなりそれと整合するものでした。

プライド~運命の瞬間~
東京裁判を描いた作品です。アメリカに留学していた際にレンタルビデオ店で借りて見ました。当時のフェニックスにはアジアの映画やテレビ番組をレンタルしている店がありました。現在とはインターネット環境も全く違いますので、今は違った形態になっているのではないかと思います。映画の中、被告全員の無罪を主張したのがインドのパール判事でした。そのシーンが非常に印象的で、今回インドの話を読んでいる時にも思い出しました。

セブン・イヤーズ・イン・チベット
ブラッド・ピット扮する登山家がチベットで過ごした7年間を描いた作品です。登山家はダライ・ラマの家庭教師を務め、その間に人間的に大きく成長していきます。この作品ですが撮影には多々の困難があり、多くの場面はアルゼンチンで、一部の場面はネパールで収録したそうです。私は大学院生の頃に観に行きました。学生さんにも是非お勧めしたい作品です。

インド・ネパールにもいつか行ってみたいと思っています。商社やメーカーに勤めている友人はインドに駐在するケースもちらほら見られ、学会等で訪れる機会も遠くはないのでは、と思います。

2015.09.06

アメリカ便り (46): Graduate students

ようやく9月ですね。
皆様いかがお過ごしですか。

メリーランド州立大学言語学科では、
9/1 に新大学院生を歓迎する "Meet and Greet" というイベントが行われました。
今年度も、6名の新しい大学院生が入学してきました。
(正確には、7名なのですが、1名は入学延期との事です)
http://ling.umd.edu/news/2015/aug/27/welcome-phds-2020/
そこで、今回は、アメリカの大学院の院試について紹介したいと思います。

日本の大学では、大学院に入学するためには、
学力試験や口頭試問を受験するのが普通ですが、
アメリカの大学では、いわゆる大学に来て受験するタイプの院試は存在していません。

それではどうやって入学者を決めるかというと、主に
(1) TOEFL (2) GRE (3) Statement of Purpose (4) Reference (5) Essay sample
で、決まります。
(1) の TOEFL は、英語を母国語としない人の英語力を測る試験
(2) の GRE は、大学卒業レベルの英語力や専門の知識を測る試験です。
これはアメリカ人学生も受ける必要があります。
(3) の Statement of Purpose は、自己紹介と何を学びたいのかなどの研究計画に当たります。
(4) の Reference は、推薦状
(5) の Essay sample は、大学時代に書いたペーパーです。

研究科長の Bill に話を聞くと、上の基準のなかでも (3) -(5) が重要とのことです。
TOEFL、GREは、大学が決めたスコアを満たしているかどうかを見ていて、
それ以上に、研究計画のエッセイで、これまでにどんなことを学んできて、
UMD で何をしたいか、どの先生に学びたいかをきちんと書いているかが重要とのことでした。
また推薦状も信用度の高い人、低い人を毎年見直しているので、
昔は OK だった人の推薦状が、今は駄目という事もあるそうです。
ペーパーも複数送って欲しいとの事でした。

また、昨年度は、約170人が応募して、そのうち7名が合格したとの事で、
競争倍率は約25倍程度。日本の感覚だとかなりの高倍率ですが、
アメリカの有名研究大学の大学院は、
このぐらいの競争率を勝ち抜かないと入学できないそうです。

まずは上記の(1)-(5) の基準を元に、20名ほどに絞って、
候補者 (prospective) を実際に大学に呼んで、
その中からさらに厳選するとの事です。
この候補者に入る学生はどこの大学院でもやっていけるだろうし、
博士号までたどり着くだろうという感じのようです。
最終的には、二人の先生が受け入れても良いと言わないと、
受け入れられないという方針です。

話を聞いていると本当に選びたい放題だなと思いましたが、
実際には、優秀な学生は大学間で取り合いになり、その競争も激しいようです。
そのためにどれだけ奨学金を支給できるかなどで、私立大学と競争になるので、
外部からの研究資金の獲得が重要になってきているとの話も聞けました。

やはり日本の大学もグローバルに競争するためには、
研究の中心となる大学院生に対して、手厚い支援を行う必要があると感じます。

それでは、また。失礼いたします。
良い休日を

<<街でよく見かける英語表現#46>>
新入生の呼び方ですが、日本では入学年度が基準となり、
「2015年度生」や「2016年度生」と呼びますが、
アメリカでは、卒業年度を基準に新入生を呼びます。
そのため、今年度入学した院生は、5年制のプログラムなので
"Class of 2020" と呼ばれます。

2015.08.30

アメリカ便り (45): Ineligibility

いよいよ八月も終わりですね。
皆様いかがお過ごしですか。

メリーランド州立大学カレッジパーク校では、
明日8/31から新学期が始まります。
新学期と言うことは、新入生が入学してくるので、
新入生に関するニュースを紹介したいと思います。
(http://www.diamondbackonline.com/news/article_ba6be7a4-bc50-11e4-b4ec-277ed207db3b.html)

アメリカでは、カレッジスポーツが非常に盛んで、莫大な金額が動いていることを
この項でも紹介しましたが、盛んすぎるが故の、弊害も生まれています。
その一つが、カレッジスポーツの学生が、活躍してプロになるために、
学業をおろそかにしてしまう場合があるという事です。

日本の大学でも、「文武両道」が謳われていますが、
なかなか実践するのは大変な事も多いと思います。
立命館大学は、取得単位の基準を下回ると、
試合に出られないというシステムを取っていますが、
このようなシステムが無く、学生がクラブ活動ばかりしている
大学もあるのではないでしょうか?

アメリカでも、この問題は非常に深刻になっており、
色々な対策が取られてきました。
メリーランド州立大学でも様々な対策が取られ、
Academic Support が一つのキーワードとなっています。
http://www.umterps.com/SportSelect.dbml?DB_OEM_ID=29700&SPID=120731&SPSID=716403&KEY=

アメリカの大学で、どのようなアカデミックサポートが
実践されているかを知るためには、以下の本がとても参考になります。
岩波ジュニア新書ですので、お近くの図書館に所蔵されていると思います。
「ライフスキル・フィットネス――自立のためのスポーツ教育」
吉田 良治 (著) 2013年  (岩波ジュニア新書) で書かれています。
ぜひスポーツ健康科学部で学びたいという学生やその保護者に読んでもらいたい一冊です。


(画像は、amazon.co.jp より引用)

今回提案された対策は、一番人気の高いアメフトとバスケットで、
新入生に学業を優先 (education first) させて、
一年生の間、試合の出場資格を停止 (ineligibility) 出来ないかという
アイデアが、Big Ten リーグで出ているというものです。

もしもこれが実現すると、新入生にとっては、学業優先にはなって
よりスムーズに学業に向かえると思いますが、
試合には出られませんので、モチベーションの低下が起こるかもしれません。
試合に出られないなら、Big Ten の大学には進学しないという学生も出てくるでしょうから、
その場合、他のリーグよりも、レベルが低くなるという可能性もあります。
それでもなおこのような対策が話し合われるという所に、アメリカの
カレッジスポーツの現状が垣間見える気がします。

現在、まだこの件は検討段階ですが、もしも実現した場合には、
当然上位団体の NCAA でも、実施されると思います。
この話がどうなるか注目したいと思います。

それでは、また。失礼いたします。
良い休日を

<<街でよく見かける英語表現#45>>
英語では、学業優先は、"education first" と言います。
GPA (grade-point average) で、3.7以上を達成した「文武両道」の学生は、
"Distinguished Scholar Award" を受賞することが出来ます。
今年度は、23名の学生が受賞しました。
(http://www.umterps.com/ViewArticle.dbml?SPSID=716403&SPID=120731&DB_LANG=C&DB_OEM_ID=29700&ATCLID=210187351)
日本の大学でも、競技成績を表彰するだけでなく、
「文武両道」に努めた学生を表彰していく必要があるのではと思います。

2015.08.23

アメリカ便り (44): Running Safe

日本ではお盆休みも終わり、通常モードに戻っていると思いますが、
皆様いかがお過ごしですか。

今回は、メリーランド州立大学カレッジパーク校の
Department of Kinesiology (運動生理学科)を紹介したいと思います。
http://sph.umd.edu/department/knes

本学科は非常に高い評価を受けており、
大学院プログラムは、全米で3位にランキングされています。

この学科には、非常に精力的に研究をされている
スポ健のMitsuo 先生 も、2011年度に在外研究に来られていました。
https://www.ritsumei.ac.jp/shs/news/article.html/?id=162
https://www.ritsumei.ac.jp/shs/news/article.html/?id=151
https://www.ritsumei.ac.jp/shs/news/article.html/?id=95

先日、この学科の大学院生と教授が中心となって、
大学構内でランニングする際に、どこが危険かというマップを作りました。


(http://sph.umd.edu/news-item/kinesiology-student-projects-help-runners-stay-safe-encourage-people-broaden-view-exercise)

こちらの構内は、緑も多くてとても気持ちよく、
ランニングする人が非常に多いのですが、
キャンパスが広大で、オープンなため、
時間帯によっては、安全性の低い場所があります。
そこで運動をする人が、心配なく運動できるように
マップが作られたというわけです。
ちなみに地図の赤い部分は、危険地域です。
私も立ち寄らないようにしています。

アメリカの大学は良いところも多いのですが、
治安という意味では、日本の大学の方が良いですね。

それでは、また。失礼いたします。
良い休日を

<<街でよく見かける英語表現#44>>
学科の HP に、本学科のミッションが書かれています。
スポ健と同じく、幅広い学際性が謳われています。
"At a time when the nation is witnessing an obesity epidemic,
enjoys watching sport more than playing sport,
and has an aging population at risk for falls,
Kinesiology brings together individuals with backgrounds
in physiology, psychology, sociology, communications,
history, engineering, education, and neuroscience
to work on these and many other important public health problems. "
「アメリカ国民が、肥満症候群に見舞われ、スポーツをするよりも
テレビ鑑賞を楽しみ、転倒の危険性のある高齢化の進む時代において、
これらの問題ならびに他の多くの重要な公衆衛生の問題に立ち向かうため、
運動生理学科は、生理学、心理学、社会学、コミュニケーション学、
歴史学、工学、教育学、神経科学のバックグラウンドを持つ人間を統合する。」
http://sph.umd.edu/department/knes/about-us