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2014.12.28

アメリカ便り (11): Fall semester

いよいよ年の瀬になりましたが、
皆様いかがお過ごしですか。

メリーランド州立大学 College Park 校では、
先日、fall semester が終了致しました。
Finals と呼ばれる学期末試験も終わりました。
学生達は写真に見られるように全力を出し切り、
今週からはクリスマス休暇に入り
学内はがらんとしています。



fall semester は、9/2 から始まりましたので、
日本よりも随分早くに15週間が修了しましたが、
非常に内容の濃い15週間でした。

受けている授業数であれば、日本の大学生も
週10コマとか受けているので、トータルの授業数であれば
こちらと余り変わらないと思うのですが、
以前このブログでも書きましたが、
こちらの授業は、同じ科目が90分週2回、
もしくは60分週3回が基本で、
4 ないし5科目を受講し、大量の課題をこなしますので、
日本よりも少ない科目をより深く学ぶことになります。

大学院の講義では、改訂途中の論文が紹介されたり、
大学院生が進行中の最新の研究状況について毎週発表し検討するなど、
日本にいては得ることの出来ない貴重な体験を積むことが出来ました。

1/5 からは Winter Semester が始まります。
言語学部でも、Winter Storm と言って、
学生が主体となって、様々な勉強会を実施する予定ですので、
積極的に参加して、刺激を受けたいと思います。

それでは、また。失礼いたします。
良いお年を。

<<街でよく見かける英語表現#11>>
クリスマスがありましたが、"Merry Xmas" と
書かれるよりは、"Happy Holidays!" という表現を
目にすることの方が多かったです。
これは様々な文化的背景を持つ人への配慮 (politically correct) から、
クリスマスというキリスト教徒重視の表現を避けたものです。
ちなみに、日本では Merry X'mas とアポストロフィー (') を
つけて堂々と書かれているのを目にしますが、
アポストロフィーは省略を意味し、この場合何も省略されていないので、
間違いですので注意しましょう。

2014.12.27

素晴らしい新年を…

クリスマスが終わり、各局のテレビ番組でも今年1年を振り返る特集などで画面が飾られています。
みなさん、今年はどのような1年だったでしょうか?

今年は、私にとって、立命館大学に赴任して5年目、そして教鞭生活20年目という節目の年でした。その1年に20年間、ずっと大切にしてきた教育者としての信念を1つあきらめました。時代も変わりますし、知識や学習内容だけでなく、学生との距離感なども毎年微妙に変化するため、指導スタイルもそれらの機微に適応せざるを得ません。

私の信念を貫くことよりも、学生の豊かな学びを形づくることが当然、第一義的なのですが、その学びのクオリティを向上させるために丁寧に教育に取り組もうと思えば思うほど、私の心の中に苛立ちや虚無感、さらにはジレンマが生じることの多い1年でした。


2年前に本学部の事務室に異動なさって、この度、第二の人生へと歩みを進めるために、長く勤められた立命館大学を退職された【出野さん】が、「人は学ぶことによって、(その道が)拓ける」というメッセージを教職員に残されました。
私は、教育者として一皮剥けるために、何を学び、どのような道を拓くべきなのか…
年末年始、じっくりと考えたいと思います。


“信念”は、1つあきらめましたが、希望に溢れる“新年”は迎えたいものです…
どうか、みなさん、素晴らしい新年をお迎え下さい。

Jin


2014.12.26

当事者研究

今日は、当事者研究についてお話したいと思います。
最近、私の研究領域では、「当事者研究」という研究スタイルが光を浴びてきています。
当事者研究とは、困難や課題を抱えた本人が自分自身を研究し、発信するというスタイルです。もともとは、北海道にある精神疾患の支援施設の当事者の方たちが始めたものです。それが、徐々に広がりはじめ、様々な障がいや疾患、あるいは心に深い傷を負った人たちが自身の内面を分析し、自身が、あるいは同じような人たちが尊厳を持ちながら前を向いて歩いて行くために役立ち始めています。

12月初旬、前任校である発達障がいの当事者が卒業論文でテーマとした「発達障がい当事者研究‐内にある数と感情の世界‐」を学会で発表しました。彼女とは、もう6年以上一緒に歩んでいます。大学に入学してから発達障がいと診断され、葛藤と苦悩の日々を送ってきました。「自分は何者か?」と問い続け、「発達障がいのある自分」を「自分らしく」生きていくことを選択し、今も共に探し続けています。言葉では表現できないほどの大変なつらい時期を幾人かの周辺者と共に壁にぶち当たっては乗り越え、またぶち当たるという生活を繰り返してきました。

さて、なぜ当事者研究が重要であるか。発達障がいを例にとって考えてみます。
発達障がいは、「コミュニケーションの障がい」「社会性の障がい」「想像性の障がい」などいくつかの代表的な特徴が挙げられます。しかし、このことについて多くの疑問を持ってきました。これらの特徴は、当事者でない第三者が、表出する事象のみを見て判断し、特徴として挙げたものです。決して、本人の内面で何が起こり、何が問題となり、そのように表出されるのかを検討はしていません。彼女と長く歩むにつれ、より一層このことに疑問を持つようになりました。その一つが発表した「数」と「感情」の関係です。

彼女の内面の言語世界は、「数」でできています。例えば、私たちが「しんどい」と感じる(これを一般的に私たちは感情と呼んでいるのですが、感情についても感情とは何かが問題になるのですが)ことが、彼女の内面は「4444」という数で埋め尽くされています。この「4444」は彼女の感情なのですが、これが私たちの感じる「しんどい」と同じかもしれないと、私たちの言語と彼女の言語を一致させる作業が必要になります。この作業に膨大な時間を費やすわけです。簡単に言うと、私たちが英単語の意味を全く知らない時点で、「しんどい」を表現するために、他者の数々の行為や状況を見ながら適した英単語を探す作業をするようなことになります。また、それが果たして一致するのかは分からず、今も彼女の「4444」と「しんどい」が一致しているのかは本人も私も定かではありません。このような作業をしている間に会話はどんどんと進んでいき、彼女は一瞬にして会話から置き去りにされます。完全に会話がストップしたり、必死で単語を探している態度が不愛想に見えたり、時には身体症状として発疹が出たりします。このような表出事象だけを見て、「コミュニケーション障がい」という特徴が一人歩きを始めているように感じてきました。

私や周辺者と何百時間も会話をし、時には文字に書き起こし、彼女の内面で起こっている「数」と「感情」の関係を彼女自身が論文にまとめました。この特徴は「共感覚」と呼ばれるものとも関係をしているのですが、共感覚についてはまた別の機会にお話ししたいと思います。

ここに書いたことはほんの一例でしかありませんが、発達障がいの特徴と呼ばれるものの中には、このように表出される現象のみを取り上げているものが多くあるような気がしています。表出される特徴は特徴として、しかし大切なことは内面で何が起こっているかを知ることであると私たちは考えており、当事者がその内面を分析し発信することを始めました。当事者は一般的には「当事者本人」を指していますが、私たちは彼女と深くかかわってきた周辺者を含み「当事者」と呼ぶことにしました。彼女は、彼女にとっては当たり前で人と異なるという認識はなく、まず何が人と異なっているかを周辺者と共に探し、その一つ一つを考えいます。私たちにはどう見えるのか、どう異なっているのかから出発し、彼女の中を掘り起こします。一つ一つのことに膨大な時間を要しますが、当事者本人が発信することの大切さを感じています。これからも彼女との歩みは続きますが、サポーターでもなく、支援者でもなく、「共歩」(私たちはこう呼ぶことにしました)しながら発信していきたいと思います。

2014.12.25

健康であるということ

先週末から急性胃腸炎にかかり、数日間寝込んでしまう生活が続きました。ここ最近、インフルエンザが流行していますが、急性胃腸炎も同様に患者数が増えているようです。手洗いは普段から心がけていたつもりですがダウンしてしまい悔しい思いはありますが、これが1週間前(学位論文の締切週)だったらと思うとぞっとします。

欠勤が続くと学生への研究指導も追いつかなくなり、未処理の仕事が日々蓄積されていきます。論文投稿を間近に控えた大学院生もいたのですが、指導者の体調不良により最後の詰めの指導を待ってもらうという大変申し訳ない事態になりました。その中でも、お見舞いのメッセージや嬉しい心遣いをしてくれる大学院生や学部生が多く救われています。本来は、1日も早く指導を受ける必要があるにも関わらず、ぐっとその気持ちを抑えてこちらの心情を察してくれる「大人の言動」には、逆に私が学ぶ点も多かったです。

「良い仕事をするためには健康でなければならない」、改めて感じました。トレーニング科学を専門にする研究者でありながらここ数年、自らのトレーニングは思うように出来ていませんので、2015年は心身ともに鍛え直さなければ!!と考えたりしています。

さて、本日は年内最後の授業日、明日から大学は年末年始の休暇に入ります(学内でみかける学生数が既に少ないように感じるのは気のせいでしょうか。。。)。

2014.12.24

ゼミナール大会 ファイナルステージ

おはようございます。ma34です。

今日は1、2時間目を使って、
一回生の基礎演習のゼミナール大会、ファイナルステージです。

会場の雰囲気はこちら。


ちなみに、写真のグループは我がAクラスのファイナリストです!

2限目が授業の関係で途中までしか見られなかったのが残念ですが、
どのグループも、実験やアンケートにおいては自分たちで出来る範囲ではあれども
面白いものが多かったと思います。

途中の講評で先生がたがお話されていたように、
5回目となる今年は、昨年度のレベルをさらに超えて、
どんどんと進化しているように感じました。

大きな舞台で発表する機会はそうそうありません。
1回生のときからこうした経験ができることは、今後の成長にとっても
大きな一歩となると思います。

さて。どのグループが優秀賞を手に入れるのでしょうか。
結果を楽しみに待ちたいと思います。

ma34.

2014.12.23

運動関連遺伝子?

Hassyです。

昨日は、教養科目「スポーツのサイエンス」で、招聘講師として本学部のMoto先生にご登壇いただき、ご講義頂きました。

Moto先生は循環器系の運動生理学分野のみならず、遺伝子解析をベースとしたスポーツ健康科学分野で大活躍されています。

周囲の人と比べて「太りやすい」「痩せにくい」「筋肉質である」「筋トレしてもなかなか筋肉がつかない」「小さいときから足が速かった」などなど自身の体質に関して色々と感じる人が多いのではないでしょうか?

2年前のロンドン五輪では、陸上長距離と短距離で、金メダル獲得者の人種差が顕著に出た五輪として有名だという紹介から始まり(長距離ではケニア・エチオピアのアフリカ勢、短距離ではジャマイカ・アメリカ)、金メダル遺伝子ってあるの?という、興味深い話をして頂きました。

運動において大切な骨格筋の特性や、肥満などの体組成に関連する遺伝子などは実際に存在し、その変異(遺伝子多型)が運動能力や運動による肥満解消効果などに少なからず影響しています。

じゃあ、全て遺伝によって決まっているの?というと、そうではなく、(そうだとするとハードな運動トレーニングなんて意味ないですし、我々の存在意義も・・・)やはり運動トレーニングや栄養、休養などの環境要因も重要で、身体特性を大きく変えてくれます。

ただ、その効果は、遺伝的な影響が少なからずあり、そうした自身の遺伝的特性を知ることによって、効果的なトレーニングメニューを組み立てる(オーダーメイド)ことが可能であるということです。

受講生も大変興味深く聴講しておりました。
Moto先生、ありがとうございました。

帰宅すると、息子の学期の成績が返ってきておりました。
注目の体力テストでは、嬉しいことにA判定を受けていました。
ただ、普段本人が力を入れている野球や陸上に関連したソフトボール投げや50m走とかではあまり得点が伸びず、他の上体起こしなどで得点を稼いでおりましたが・・・笑

夫婦揃って体組成や身体能力などの遺伝的背景は申し訳ない感じですので、息子にはやはり練習・トレーニングを頑張ってもらわないと!と感じました。

2014.12.22

出野さん ありがとうございました!

スポーツ健康科学部では、学部開設当初から、教授会のある火曜日の昼休みに、教職員による、最近の教学、研究のトピックスを話してもらい、情報共有しています。先週のラン智タイムセミナーが今年の最終回で、今回は特別編で、今週に退職される出野さんに20分間お話しいただきました。

 

そのタイトルは、「私と立命館」。これまでの立命館での職員人生28年と9ヶ月のキャリアを整理していただき、職員としての仕事、その想いを、この間の仕事の変遷も合わせながら、分かりやすくお話しいただきました。「大好きな立命館で、学生を育てる仕事ができたことに誇りを持ち、ともに支え合った皆さんに感謝します」という冒頭の挨拶から、あっという間の20分間でした。

 

最後のスライドの最後のメッセージが、『良心に基づいて行動し、あるべき世界に近づく』。学生の夢・目標を実現させるための学びを創造し、その営みのためには、権威や横やりやに負けず、「私心のない大きな心」で行動されてきた、というのが参加者の胸にズシンズシンと響きました。出野さんの想いを、後輩たちへ心の遺伝子として注入していただきました。

 

このブログで、伝えたいこと、伝えるべきこと、伝えなければならないことが沢山ありすぎて、書ききれないので、スポーツ健康科学部の職場について語っていただいたところを紹介します。スポーツ健康科学部が退職前の最後の職場となり、2年間お世話になりました。その間、出野さんが感じられた印象は、「本当に素晴らしい職場で、ここで『卒業』を迎えられることを神様に感謝したい!」とまで語っていただきました。職場としてのスポ健の魅力は、

 「よい環境がよい教育研究を産み出す」という環境と教職協働の文化がある。

 「それぞれの立場と役割を尊重しつつ、

教育を通して「世界をかえよう」とする仲間と夢を語り、

それを形にすること」ができる、前向きな教職員とその組織文化が根づいている。

 とありがたい言葉を頂きました。

 

最後に、教職員へのエールとメッセージとして、

『人は学ぶことで拓ける』

 とのことばで締めくくっていただきました。

 

会場(アカデミックラウンジ)には、スポ健の教職員以外の先生方、職員の方も参集していただき、万雷の拍手と感動の波動が会場を清涼で明るい空気で満たしてくれました。

 出野さん、本当にありがとうございました! 想いを受けついでさらによい学部、大学へと発展させていきます。

 

<<今週のちょっと、もっと、ほっとな話>>

卒論の提出が終わり、先生方もほっとされています。ただ、これから修論、公聴会などまだまだ年度末まで目白押しです。年末年始はゆっくり過ごされますように。

【忠】

 

2014.12.21

アメリカ便り (10): TED at UMD

日本でも寒い日が続いているようですが、
皆様いかがお過ごしですか。

先日の12/6 (土) に、メリーランド州立大学 College Park 校で、
TED のイベントが開催されました。
http://tedxumd.com/

TED とは、Technology Entertaiment Design の略で、
”Ideas worth spreading” を掲げ、
様々な人が講演やプレゼンを行うものです。
「スーパープレゼンテーション」というタイトルで、
日本のテレビ局で放送されていましたので、
ご覧になった方も多いと思います。

今回、その TED のイベントが、College Park で
開催されたので、覗きに行ってきました。
会場は、あいにく一杯でしたので、
サテライト教室からの中継を視聴しましたが、
朝の11時から夕方まで、様々なスピーカーが演台に立ち、
プレゼンテーションを行っていました。



元々こちらの学生はプレゼンテーションが上手な人が多いので、
聞いていて流石と思いながら聞いていましたが、
スポ健の学生のプロジェクト英語のプレゼンも
これぐらい上手に出来るようになると良いな〜と思いながら、
会場を後にしました。
いつか TED に出るような人間を
立命館スポーツ健康科学部から輩出したいですね!

それでは、また。失礼いたします。
良い休日を

<<街でよく見かける英語表現#10>>
メリーランド州立大学 College Park 校は、
"Fearless Ideas" (恐れを知らぬアイデア) を
モットーに掲げています。
学内にも、"Fearless idea Ignites Evolution" というような形で
学生に大胆な発想と行動を求める文が掲示されています。

2014.12.20

Leadership

“リーダーシップ(Leadership)”という言葉は、私たちの日常に満ちあふれています。この“リーダーシップ”は、スポーツ健康科学部が人材育成目標として掲げる大切な言葉の1つです。

そもそも“lead”という単語には、「先頭・首位」や、「導く、指揮する、指導する」といった意味があるように、私たちは、何となくリーダーシップに「グイグイと引っ張っていく」という印象を抱きがちですが、これまで、数多くのリーダーシップに関する研究が進められ、リーダーシップ像は多種多様です。例えば、リーダーと呼ばれるような立場の人が部下やメンバーを支えて、奉仕する、だからこそ、部下やメンバーたちはそのリーダーに寄り添いついていくという「サーバント・リーダーシップ」という考えもあります。

一般的に、「集団・組織の諸活動や諸関係を導き、形づくり、促進するように、ある人によって他の人々に対して意図的に影響力が行使される過程(からなっているという仮定)」というYukl(1998)の定義が用いられます。「影響力の一形態」というならば、「何もグイグイと引っ張っていく」ことがリーダーシップの全てではないことはおわかりのことでしょう。

スポーツ健康科学部の基盤科目に「リーダーシップ論」という科目があります。それを担当しているのは、このリーダーシップ論のスペシャリスト、ippo先生です。ippo先生は、特にリーダーとメンバーの関係性や壊れた組織の修復をテーマに研究されています。そのリーダーシップ論の授業で、「スポーツ健康科学部生が考える“LEADER”」というコンテストをされたようで、その投票結果が図に示したものです。



“LEADER”という言葉の頭文字を用い、6つの構成要素でリーダーに求められる資質を学生たちが考えたようです。もちろん、「育てる・教育する・引き出す」や「決断力・決定する」というこれまでリーダーに求められてきたような要素も含まれているのですが、「愛・愛情」、また「ワクワクさせる」や「勇気づける」といった要素も上げられています。

いつの時にも求められるリーダーシップの共通項や資質は、我々の中でぼんやりとはあるのかも知れませんが、「これをすれば…」というような普遍的なリーダーシップは基本的には存在しません。この授業を受講している学生のみならず、スポーツ健康科学部の全ての学生が、自らが身を置く集団や組織のみならず、「時代に求められる」リーダーシップを探究し、それを実社会で発揮してもらいたいと思います。

Jin


2014.12.19

自筆の文字

昨日、卒業論文の提出も終わり、提出予定の9人が無事提出しました。滑り込みもなく、ホッとしています。次は口頭試問に向けてしっかりと準備を進めてほしいと願います。
先日、両親の書斎を整理していたら、たくさんの段ボールの箱の中の2つから私の自筆のものがたくさん出てきました。その中に手書きの卒業論文が入っていました。原稿用紙一マスずつにぎっしりと文字が並びます。とても懐かしい思いで見入ってしまいました。そういえば、とても厳しい指導教員で、特に丁寧な文字を書くよう指導された記憶があります。清書の文字はボールペンでした。間違った箇所に修正液(あの当時は修正テープはありませんでした)を使用してはならず、一文字間違えたらまるまる一枚の書きなおしでした。緊張で手が震えたことをよく覚えています。

他には、段ボール一杯に近くの私から両親へ宛てた手紙がぎっしり。これもすべて手書き文字です。保育園の頃の「お父さん、お母さん、いつもありがとう」から始まり、つい2、3年前の「人は人として・・・」などという話しまで。一番多く書いているのは大学時代でした。いくつか読んでみましたが、ちょっと気恥ずかしくなるような内容も多くあり、また改めて読んでみようと思います。それにしても、たくさんの手紙を書いたものだと思います。

今は、レポートも時候の挨拶もほとんどがタイプ打ちになりました。年賀状も暑中見舞いもそのほとんどが印刷です。レポートは読みづらい字が解消された半面、誤字が多くなっています。また、文章に合わない言い回しも多くなっているように思います。30代半ばからは、それまで丁寧に文章も宛名も自筆書いていた年賀状も全て止めました。送られてくる葉書には私の知らない人の写真と印刷の文字。なんとなく寂しくなり、書くことをやめました。年に一度、年賀状でお互いの近況を知らせ合う友人や知人とはやり取りをしていますが、そういう状況でのやり取りは全て自筆の文字です。文字から伝わる近況にホッとし、葉書や手紙の意味を温かく感じることができます。

知り合いの障がいのある友人は、タイプ打ちの文字について、「タイプで変換される文字は、私の感情さえも一瞬に流してしまう。瞬時に変換された文字が出現した時点で、私の感情がどういう感情であったかさえ忘れさせる」と言います。独特な情緒的表現ですが、とてもよくわかる気もします。タイプや印刷の文字と自筆の文字、一長一短ですが、状況によっては使い分けたいものです。

段ボール箱から出てきたものの中にもう一つ、「筆正則心正」と毛筆の書が出てきました。縦長の大きな半紙がきちんと台紙に貼られ巻かれていました。小学校6年生の時に書いたものでした。なかなかしっかりした文字だなと自画自賛し、丁寧に巻きなおし、元の場所へ。

この他にも、多くのものが出てきました。こんなに大切に保管してくれていたのかと思うと感慨深いものがあります。

そういえば、中学校卒業までは、毎年、家族5人で1月2日に書き初めをしていました。両親の書斎から出てきた墨と硯、筆、文鎮、半紙。全て揃っているので、今年は懐かしい思いで書き初めをしてみようかと思います。文字はやはり思いでの「筆正則心正」かな。

皆さんも、すこ~し、自筆を楽しんでみませんか。