先週、私が担当している学部3回生対象の「運動生理学」の授業で、ゲストスピーカーとして、兵庫教育大学准教授の小田俊明先生をお招きして講演して頂きました。
身体運動は、生体組織における唯一の力発生源である筋肉によって引き起こされますので、スポーツ健康科学分野では、これまで筋を対象とした多くの研究がなされてきました。しかし、小田氏は、「身体運動における研究対象は筋だけでいいのか?」と疑問を投げかけ、巨大なアキレス腱をもつカンガルーが、速く走るほどエネルギー変換効率がよいことを事例に挙げ、身体運動における筋腱相互作用の重要性についてわかりやすく解説して頂きました。また、講義の後半では、ご自身が研究で携わっておられる、ケニア中長距離選手の着地動作と筋腱の特徴についてお話頂きました。
近年、マラソンなどの長距離種目において、ケニアなどのアフリカ勢は目を見張る活躍ぶりを示しています。そうした競技力に、着地動作と筋腱の相互作用が関与しているのではないかとの作業仮説に基づいて、実際にケニアに赴き、生理的・機能解剖的解析をしておられ、その様子や、実際のデータを示しながら解説して頂きました。
運動時の筋腱動態を詳細に解析していくことは、今後のスポーツ科学の発展に大きく繋がると感じました。